美しき非日常の世界を見せてくれた、THE NOVEMBERSのツアーファイナル
THE NOVEMBERS | 2014.12.11
THE NOVEMBERSの活動は、このところ急激に活性化している。昨年10月に自主レーベル“MERZ”を設立し、11月にアルバム『zeitgeist』を発表。CHARAと のコラボを行ない、今年5月にはシングル「今日も生きたね」をリリース。FUJI ROCKなどの夏フェス出演をはさんで、早くも10月には5thアルバム『Rhapsody in beauty』をドロップした。
そうした現象面でのエネルギッシュな活動はもとより、彼らの本当の活性化は、クリエイティヴの内面にある。演奏力のアップに裏付けされて、発するメッセージの方向性が鋭くチェンジしているのだ。
デビュー以来、独自の美学を追求してきたTHE NOVEMBERSは、ノイズまみれになりながら、常識やありきたりな感性の破壊を繰り返し、やがて複雑な“生の様相”を捉え始める。その結果、人間の矛盾を乗り越えて、 「今日も生きたね」で“生への讃歌”へとたどり着いた。
しかし、そこに甘んじることなく、『Rhapsody in beauty』で再びノイズの海へと出航した。ただ、“再び”とは言っても、彼らのアプローチは初期のそれとは大きく異なっていて、非常に美しいノイズを奏で始めたのである。ノイズというと、顔をしかめるリスナーがいるかもしれない。だが、美しい爆音があるように、美しいノイズというものが存在する。それはTHE NOVEMBERSの今の音楽スタイルを聴いてみればわかる。正確に言えば、個々の音はノイジーだが、それらの音が織りなすアンサンブルが美しいのだ。それは、個々の人間の生き様は残酷でも、集合体としての生き方が美しいことがあるのと似ている。たとえば北方に棲むイヌイットは、氷上でアザラシなどを殺して食べて暮らしている。そのことを嫌う人がいるかもしれないが、集団で助け合い、自然に感謝しながら生きている彼らの在り方は、美しい。感謝を忘れてバラバラに暮らす都会の人間よりも、よほど美しい。この“集合体”という言葉を、バンドに置き換えてみればいい。THE NOVEMBERSは、そんなバンドなのだ。
そうして、その“美学”を大会場で問いたいと、彼らはずっと思ってきた。新木場スタジオコーストは、願ってもない舞台だ。現われたTHE NOVEMBERSは、ボーカル&ギターの小林祐介の髪が金色以外、メンバーのコスチュームも髪も、すべて黒。バンドの登場を待っていたオーディエンスたちは、いつものように静かに歓迎の熱気を放つ。オープニングはニューアルバム1曲目の「救世なき巣」 だ。のっけからゴリゴリのノイズが炸裂する。『Rhapsody in beauty』は、この最もノイジーなナンバーから始まって、曲を追うごとに視界が開けていく構成になっている。
驚かされたのは、2曲目だった。なんと1stアルバムのタイトル曲「picnic」。 続いて、小林のギター・カッティングにケンゴマツモトのギターが絡んで始まったのは、2ndアルバムのタイトル曲「Misstopia」だった。THE NOVEMBERSは、この場所で自らの歴史をひも解いてみせる。次の3rdEPからの「Harem」で 小林が、♪踊りましょう 踊りましょう♪と歌っても、微動だにしない観客が実にTHE NOVEMBERSらしい。彼らは、“聴き入る”タイプなのだ。それでも曲が進むごとにオーディエンスの体温が上昇していくのが分かる。特にこの「Harem」のグルーヴは素晴らしかった。
中盤の「Rhapsody in beauty」から、ニューアルバムの世界に入っていく。骨太な8ビートを刻む吉木諒祐のドラムが、バンドを牽引する。「dnim」など、新作以外の曲をはさみながら、新しい作品群を効果的に伝えていく。よく練られたセットリストに、オーディエンスはストレスなくTHE NOVEMBERSの世界に導かれていった。特にニューアルバムの最後に収められている「僕らはなんだったんだろう」は、歌詞がはっきりと伝わって♪うまく変われないわたしを愛して♪というこのバンド独特のメッセージが、サウンドとともに心になだれこんでくる。
そのメッセージが終わるやいなや、前作『zeitgeist』の「鉄の夢」でノイズの洪水に飛び込んでいく。ケンゴマツモトがひざまずいてギター・ソロを取る後ろで、スクリーンに刺激的な映像が流される。小林のシャウトも見事だ。それは『Rhapsody in beauty』 と、そこに至るTHE NOVEMBERSのキャリアが凝縮された一瞬だった。
本編ラストは、ツアータイトルになっているニューアルバム の曲「Romancé」。ケンゴマツモトがキーボードを弾く、ミディアム・バラッドだ。高松浩史の弾くベースラインが、イマジネーションに富んでいて、ノイズを浴びた後の不思議な恍惚感を呼ぶ。メンバーが一人、また一人とステージを去って、ライブは終わった。
「アンコール、どうもありがとう。スタジオ・コーストは大きいですね。好きなアーティストのライブを何度も観に来た場所でやれて、嬉しいです。僕らみたいなバンドが、なぜかお茶の間に出て、“徹子の部屋”とかで『ご苦労なさったんですって』とか言われる、そんな日が来たら面白いので、応援してください(笑)。これからもきれいなこと、素敵なことを楽しんで生きていけたらなと思ってます。次は、そんな曲です」と小林は言って、ひとつ大きく息を吸うと、ギターでアルペジオを弾き始めた。
やさしく歌い出した「バースデイ」は、やがて激しいロックに変わっていく。そのとき僕の中で「今日はここに何しに来たんだっけ?」という疑問が、唐突に浮かんだ。このノイズの洗礼と、人間の美醜を超えるメッセージが、僕の中で溶け始める。最後の「今日も生きたね」を演奏する 4人のメンバーが、どこか遠い星から来た人々に感じられる。そんな非日常を提供してくれるバンドは、THE NOVEMBERSをおいて、他にない。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:タイコウクニヨシ】
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リリース情報
お知らせ
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2014/12/15(月) 恵比寿LIQUIDOROOM
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