2013年12月7日、Zepp DiverCity TOKYOで行われたツアーファイナル。公演終了後の打ち上げ会場でメンバーたちに知らされた初の日本武道館ワンマンライブの決定。驚きつつも歓喜の声を上げるすぅ（吉田菫／Vo・G）、ひなんちゅ（梅村妃奈子／Dr）、あいにゃん（山内あいな／B）、ゆかるん（黒坂優香子／Key）の表情がスクリーンに映し出される。メンバー各々へのインタビュー、Silent Sirenの足跡を辿るVTRも流れた後、「武道館をピンク色に染めましょう！」というすぅの声が響き渡った。それに応え、会場全体で観客が一斉に掲げたピンク色のサイリウム。そして、ステージを覆っている沙幕にメンバーたちのシルエットが浮かび上がった。やがて幕は切って落とされ、華麗に鳴り響いた「Sweet Pop!」。待ちわびたファンたちが露わにする興奮の度合いが早くもすさまじい。ドラマチック極まりないスタートとなった。

　「ラッキーガール」と「LOVEのしるし」を演奏した後、最初のインターバル。「これは現実？　いろいろ話そうと思ってたけど、全部吹っ飛んじゃった（笑）。ピンクに染まった会場を見て感無量です。この場所を世界で一番楽しい空間にしましょう！」（すぅ）。「ほんと、眺めがヤバいです。初めてわたしたちのライブに来た人も、毎回来てくれる人も、今日来られなかった人の分まで盛り上がっていきましょう！」（ゆかるん）。2人のMCが観客を沸かせ、雪崩れ込んだ「stella☆」。さらには「ユメオイ」や「LOVE FIGHTER！」も披露され、会場内の熱い一体感はどんどん増していった。

　花道の先端部分にあるセンターステージに4人が集合し、恒例となっている『サイサイコーナー』がスタート。ツアー中、各地で様々な勝負を繰り広げ、勝敗を争ってきたメンバーたちだったが、今日のお題は「あっち向いてホイ」。罰ゲームはバンジージャンプ……スクリーンに流れた突然の発表を見て、動揺のあまり倒れ込んだメンバーたち。そして、広大な武道館であっち向いてホイをするというシュール極まりない展開となったのだが、結局、敗者となってしまったのはすぅ。悔しがる彼女に、観客は大きな声援を送っていた。

　「Limited」と「「Are you Ready?」」で盛り上げた後、会場内の空気をロマンチックなムードへと転じた「恋い雪」。そして、再びMCタイム。「なおきゃん（サウンドプロデューサー・クボ ナオキ。サイサイの初期メンバー）の曲に初めてすぅが詞を載せたのが「チラナイハナ」です。その曲は当時の等身大の自分たちを歌っていて。“散らない花のように生きていきたい”という歌。この武道館のタイミングで、その曲へのアンサーソングを作りました。1人じゃみんなに音楽を届けられないです。これからも自分自身に革命を起こして突き進んで行きたいです」、すぅが想いを語って届けられた「KAKUMEI」。続いて「LOST.W」。高鳴るサウンドに合わせて観客は掲げた腕を揺らす。力強くさらに前へと進もうとしている彼女たちの気持ちが伝わってくる2曲だった。

　「わたし、武道館でやりたいことがあって」、ひなんちゅの提案によって行われたウェイブ。そこから突入した後半戦の盛り上がりもすごかった。観客によるエネルギッシュな手拍子、踊るステップが会場を揺さぶった「DanceMusiQ」。ひなんちゅが叩いた銅鑼を合図にスタートし、激しいかけ声を誘った「チャイナキッス」。アリーナ席に投入された数個のバルーンが勢いよく跳ね上がった「BANG!BANG!BANG!」。大量のスモークが噴き上がる中、疾走感溢れるサウンドが鳴り響いた「爽快ロック」……アッパーチューンの連続となり、観客は歓喜の声を上げ通しであった。

　あいにゃんが今後の予定やツアーグッズなどを紹介した『サイサイスケジュール』を挟んで、いよいよ終盤戦。まずはメンバー全員がピンク色のハッピを着て「What show is it?」。祭囃子をイメージさせるサウンドが人々の「ワッショイ！　ワッショイ！」というかけ声と開放的なダンスを巻き起こす。そして、「All Right ~“今”を懸ける~」と「ぐるぐるワンダーランド」も披露され、ライブ本編は締め括られた。

　アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきた4人。彼女たちを出迎えたのは、アリーナ席の観客が描き上げた文字。掲げられたボードによって「サイサイ」を意味する数字「31」が浮かび上がっている。そんな心温まる場面の後、小さなスタジオで練習していた頃の思い出をすぅが語り、初期のサイサイと共にステージに立っていたナオキャンを招き入れた。「この人がサイサイのほとんどの曲を作ってます。今日は昔から夢見てたこの場所でのライブ。初心を忘れずに、初めて作った曲をこの5人で演奏したいと思います」と語り、披露したのは「チラナイハナ」。花道先端のセンターステージで身を寄せ合い、時折視線を交わし合いながら演奏していたメンバーたちの姿は、バンド黎明期に小さなスタジオで練習をしていた頃の様子を窺わせた。曲が終わった後、「最初の頃、わたしたちは楽器のセッティングもできなくて。わたしの高校時代のバンド仲間のナオキを呼んで、いろいろ教えてもらいました」、なおきゃんがサイサイに関わるようになったいきさつを説明したひなんちゅ。他のバンドの曲をコピーするレベルにも達していなかった彼女たちのために「正解のない曲を作るから」と言って彼が持ってきたのが「チラナイハナ」であったというエピソードも明かされた。

　次の全国ツアーのスケジュールの発表が観客を大喜びさせた後、すぅのMC。「ウチらが好きでやってたことをみんなが好きになってくれて。なんていい方々なんだと。だからもっともっと楽しめる音楽を作っていきたいと思います！」、力強い言葉を添えて「Starmine」。そして、ラストを飾ったのは「ビーサン」。観客の間から湧き起った大合唱と手拍子。そのエネルギーに包まれたメンバーたちは、心底嬉しそうに笑顔を輝かせていた。演奏が終了した後、4人は客席を背景に記念撮影。そして、何度もお辞儀をして手を振りつつ、各々がステージの左右に飾られていた旗を担いで集合した。マイクを通さない生声で「ありがとうございました！」と挨拶をすると、彼女たちへと届けられた大きな歓声。何とも言えず爽やかな余韻が広がるエンディングとなった。

【取材・文：田中 大】