UVERworld 2015年12月25日(金)の日本武道館をレポート
UVERworld | 2016.01.14
開演15分前に会場に入ると、既にほとんどの座席が埋め尽くされていた。ステージは会場の真ん中に組まれ、観客はそのまわりをぐるりと囲むクリスマスライブ仕様。時刻を示すスクリーンには「MERRY CHRISTMAS」の文字が映され、スタッフや警備員もサンタの格好。準備は万全だ。
12月25日、UVERworldが日本武道館で恒例のクリスマスライブを開催した。彼らがクリスマスに武道館でライブを行うのは今年で8年連続。しかも今年は9月から行っているライブツアー「UVERworld "15&10" Anniversary Tour」とも重なっている。バンド結成15周年、デビュー10周年の軌跡を辿る構成、そして、クリスマスのスペシャル感がひとつになったこの日は、UVERworldの歴史のなかでも特別なライブとなった。
18時30分ちょうどにライブがスタートし、ヘビィロックとエレクトロを融合させた「THE ONE」、真太郎の強烈なドラムソロによって、観客のテンションはいきなり頂点に達する。「2015年のクリスマスライブ、歴史を辿る最高の1日。一発目から、のっけからぶっ飛ばそうぜ!」というTAKUYA∞のシャウト、誠果のサックスから始まったオープニングナンバーは「ナノ・セカンド」。「それが幻想のままで終わって行って/良いわけないだろう」という大合唱が沸き起こり、ステージを囲むオーディエンスは激しく体を揺らしまくる。
「俺たちは今年でデビュー10年、結成して15年。このツアーはUVERworldの歴史を振り返ろうと思って、過去の曲をいっぱいやってるんだ。今日は素敵なUVERworldの名曲と、素敵な俺たちの歴史を一緒に辿りましょう!」(TAKUYA∞)というMC通り、このバンドのキャリアを象徴するナンバー、レアな楽曲が次々と披露される。ヘビィロックにダンスミュージック的なグルーヴを持ち込んだ――言うまでもなく、それはUVERworldが編み出した大きな武器だ――「GROOVY GROOVY GROOVY」、「あの日の悲しみは今日の幸せのためにあったんだ!」という声に導かれた「EMPTY96」、ステージの前に立ち上る炎とともに重厚なヘビィネスサウンドが放たれた「DISCORD」、そして、空の上にいる仲間のために捧げられた「ハルジオン」。濃密なエモーション、独創性に満ちたバンドサウンドがダイレクトに伝わるパフォーマンスによって、ステージと観客の距離はさらに縮まる。圧倒的なダイナミズムと緻密なフレーズを融合させた克哉、彰のツインギター、骨太のグルーヴを描き出す信人のベースも最高。今回のアニバーサリーツアーのなかで、UVERwolrdの音楽はさらに強度を上げたようだ。
ライブ中盤で特に印象的だったのは「すげえ小さいステージで、よくこの曲を歌ってた。いつか輝けますようにって」(TAKUYA∞)というミディアムチューン「SHINE」、そして、メジャーデビューのきっかけとなったという「CHANCE!04」だった。いずれもインディーズ時代の楽曲だが(「CHANCE!04」はメジャー2ndシングル「CHANCE!」の原型になった曲)、この2曲から実感できるのは、結成当初から彼らは自らの進むべき道、追求するべき音楽性をしっかりと掴んでいたという事実だ。ヘビィロック、ヒップホップ、ダンスミュージックなどを自在に融合させたバンドサウンド、自分自身の力を信じ、夢を実現させるために突き進むんだというメッセージ性を備えたリリック。アレンジの精度、演奏のクオリティは現在の方が遥かに上だが、それよりも重要なのは、彼らが結成当初から“UVERworldでやるべきこと”を明確に持っていたということだろう。
「俺が想像していた15年後よりもずいぶん幸せすぎて、怖いくらいだ」「二十歳まで貧乏ばかりで、つらいこともたくさんあったよ。でも、思うよ。生まれの貧しさとか、10代、20代の悲しみだったりとか、そんなものはあんたがたの人生は決めない。大切なのは、そこからだからさ。20代中盤から始まった俺たちの人生、まだまだ終わる気しないよ」というTAKUYA∞の心にこもったMC、そして、“様々な出会いに恵まれてきて 道を辿る 君の事探すため”という誠実な愛情表現に心を動かされるラブソング「心とココロ」の後は、このバンドが持つ豊かな音楽性(そして、音楽を楽しみ尽くそうとするスタンス)を体感できるシーンが続く。まずは“このコードでこんな曲を歌えますよ大会”。彰が同じコード進行を弾き、それに合わせてTAKUYA∞が様々な楽曲を歌ってみせる。「ハナミズキ」「千の風になって」「クリスマス・イヴ」そして「ヘビーローテーション」。同じコード進行でも、メロディと歌詞によってまったく違う世界が作れる。この“遊び”を通して、彼らは音楽の無限の可能性を伝えようとしたのだと思う。さらにアコースティックなスタイルで「7日目の決意」を披露、続いてポップで開放的な雰囲気が一気に広がった「LIFEsize」へ。楽曲によって会場のムードとテンションが大きく変わり、それがライブ全体のストーリー性へとつながっていく。本当に幅広い音楽性を持ったバンドだなと改めて思う。
メンバー個々の高いプレイヤビリティが炸裂するインストナンバー「Massive」によってライブは後半へ。「歴史も最高、名曲も最高。しかし、いまのUVERworldが見たいだろ?」(TAKUYA∞)という煽りから「I LOVE THE WORLD」が放たれると観客の興奮は一瞬でピークに向かって突き進む。凄まじい高揚感のなかで「PRAYING RUN」「IMPACT」「Ø choir」という現在のUVERworldを象徴するアッパーチューンが披露され、ライブ本編は終了した。
アンコールを求めるコールが起こるなか、映像にファンからのメッセージが映される。その女性は1年前に火事で家を失い、亡くなった母親との思い出もすべて消えてしまった。そんななか、奇跡的にUVERworldのチケットが見つかり、無事にライブに参加。その楽曲に力をもらったという。そして今年のツアーでぜひ、「哀しみはきっと」と「在るべき形」を歌ってほしい、と――。彼女のメッセージに応えるようにメンバーは再びステージに登場し、その2曲を全身全霊で表現してみせた。そのあまりにも誠実で真摯な姿勢は、オーディエンスひとりひとりの胸に強く刻まれたはずだ。
ライブ終盤で「また来年もこのステージに立つにふさわしいバンドでいらえるように、音楽を楽しんでいくよ」「俺たちはやっと俺たちの正しい使い方がわかったんだよ!」と叫んだTAKUYA∞。バンドの歴史を辿る今回のツアーは、メンバーにとっても大きなターニングポイントとなったはず。2016年、UVERworldはその表現をさらに強め、我々に未知の興奮を与えてくれるだろう。
【取材・文:森朋之】
【撮影:鳥居洋介】
リリース情報
I LOVE THE WORLD(初回生産限定盤)[CD+DVD]
2015年08月26日
Sony Music Records
1. I LOVE THE WORLD
2. PRAYING RUN
-Memorial track-
3. CHANCE!04
[DVD]
from KING’S PARADE at Yokohama Arena Live Special Multi Angle
7th Trigger
Wizard CLUB
UVERworld KING’S PARADE at Yokohama Arena Trailer
セットリスト
“15&10”Anniversary Tour
2015.12.25@日本武道館
- THE ONE
- ナノ・セカンド
- Colors of the Heart
- Roots
- 浮世CROSSING
- ハイ!問題作
- 君の好きなうた
- 99/100騙しの哲
- GROOVY GROOVY GROOVY
- EMPTY96
- DISCORD
- ハルジオン
- SHINE
- CHANCE!04
- 心とココロ
- ハナミズキ(一青窈)
- 千の風になって(秋川雅史)
- クリスマスイブ(山下達郎)
- ヘビーローテーション(AKB48)
- 7日目の決意
- LIFEsize
- Massive
- WANNA be BRILLIANT
- I LOVE THE WORLD
- Collide
- PRAYING RUN
- 零HERE ~SE~
- IMPACT
- Ø choir
- 哀しみはきっと
- 在るべき形