THE BEAT GARDEN、メジャーデビュー発表! 満場の熱気溢れるONE MAN LIVE東京公演をレポート
THE BEAT GARDEN | 2016.03.28
誰にだって夢を見ることはできる。けれど本気で夢を追うということはけっして容易ではないはずだ。たゆまぬ努力と不屈の精神、決意も覚悟も生半可なものでは通用せず、たとえそれらを以て挑んだとしても、きっとそう簡単には夢に手は届かない。それを知っているからこそ我々は、それでもなおと遮二無二走り続ける人の姿に惹きつけられてやまないのだろう。そしてその姿はいつか観る者にとっての夢ともなるに違いない。たくさんの想いを一身に集め、この日、改めてスタートラインに立った彼らはまさしく夢を追う人であり、同時にここに集まった1200人の夢そのものだとも思えた。
その夢の名はTHE BEAT GARDEN。3ボーカル+1DJスタイルの要注目4人組だ。リーダーのUを筆頭にREI、MASATOの3人が大阪で前身となるグループを結成したのが2012年8月のこと。直後に上京し、自らがブッキングを行ってライブ中心の活動を精力的に展開、2014年に今のグループ名に改名したという。昨年12月にはサポートメンバーだったDJのSATORUも正式加入。そんな彼らがインディーズチャートで3位を記録した1stフルアルバム『WILL』から1年、この2月にリリースされたばかりのミニアルバム『Air』を携えて臨む“THE BEAT GARDEN ONE MAN LIVE―Live Air 2016―”、3月12日の赤坂BLITZだ。
THE BEAT GARDENにとって最大のキャパシティながら、満場の熱気溢れるフロアの様子が彼らへのただならぬ期待を伺わせる。まもなくの開演を告げるアナウンスからBGMのウォーク・ザ・ムーン「シャット・アップ・アンド・ダンス」に切り替わると待ちきれないとばかり、客席いっぱいに手拍子が響く。応えるように暗転する場内。大歓声の中、ゆっくりと開いた幕の向こうに4人が現われた。バックドロップに掲げられているのは巨大な六角形。グループのシンボルマークを背に放たれたのは1曲目「WELCOME TO THE NEW WORLD」だ。一気呵成に躍動するステージ、それはまさにタイトルそのまま新たな世界の始まりを堂々体現するものではなかったか。スケール感のあるエレクトロサウンド、そこに刻まれる小気味よい四つ打ちのリズムが会場一体の鼓動となってオーディエンスを揺らす。入れ替わり立ち替わり一瞬たりとも動きを止めず、歌をリレーするU、REI、MASATO。牽引力の強い声を持つU、低音がセクシーなREI、華やかさと真っ直ぐさを兼ね備えたMASATOと歌の個性も三者三様ならば、パフォーマンスも然り。システマティックにコントロールされた機能美重視のダンスとは一線を画した全身全霊な身のこなしから目が離せない。3人を後方から支えるDJ SATORUのクールな佇まいもまたアクセントとなってステージをいっそう立体的にするのだ。
キラキラとしたポップチューンから一転、続く「SLY」が熱狂をスリリングに加速させた。ひとつに束ねていた髪をおもむろに解いてみせるREI。匂い立つ色香、挑発的に跳ね躍る艶やかな黒髪は赤く染まったステージにもよく映えた。「ガンガン飛ばしていくぞ、赤坂!」、勢いよくUが叫んで突入した「B.E.T」はギターリフがトラックの前面に打ち出された、THE BEAT GARDENの本領発揮ともいうべきロック色の濃い1曲。さらには爽やかな広がりを感じさせる「Fly Me High」に、流暢なラップパートも印象的なダンサブルナンバー「FIRE」と音楽性は実に幅広い。聞けば自身も作詞、作曲、トラックメイキングを手がけるという。彼らに息づくオウンメイドな気概が無二のオリジナリティとなって、このグループの存在感を際立たせているのかもしれない。
「赤坂のみなさん、楽しんでますか! 盛り上がってますか! 今日は一緒に記憶に残る1日にしましょう。なんか緊張してる? それはオマエらだろ、って?」「間違いない!」
UとMASATOの微笑ましい掛け合いから始まったMC。初ステージの赤坂BLITZながら、MASATOによれば実は彼ら、以前にもここを訪れたことがあるらしい。それは上京してまだ間もない頃、とにかく手当たり次第に会場を調べていたら、とあるライヴが目に留まり、オープニングアクトに出してほしいとBLITZのスタッフに直談判しに来たそうだ。「そのときは“今日はダメですけど、いつかここに立てるときにはぜひ声を掛けさせてください”って言っていただいて。そして今日、ここに立っております!」とMASATO。楽屋では見事、再会も果たせたという。まさに念願叶ってのステージではないか。「みなさんのおかげです。実力で立てたなんて微塵も思ってません。日頃の感謝と、これからもまだまだ一緒に歩いていってくださいという気持ちを込めて、次の曲を歌います」、MASATOはそう言葉を続けた。そうして届けられた「Re;story」が説得力を伴って胸に染み込む。
ストリートライブからスタートし、着実に成長を遂げてきた彼らだが、それでもこのステージはおそらくこのうえなく大きな挑戦であり、賭けでもあっただろう。実際、今日を迎えるまでは不安で不安で仕方なかったとUは言った。でも、みんなの顔を見て、一緒に歌っていたら、そんな恐怖はどこかに吹き飛んでいった、とも。「楽しくて、嬉しくて、幸せ。挑戦して本当によかった。去年の今頃も僕らはワンマンライヴをしていて、そのときのキャパが200人。今日はその約6倍以上です。僕たちを見つけてくれて本当に本当にありがとうございます」と感謝を口にする彼と、彼らに惜しみない拍手が注ぐ。「もちろんこれがゴールだとは思わない。まだまだこの先にある未開のステージにいつの日か必ず一緒に立ちたいと思います。みなさん、その日までついてきてくれますか?」。1200人が声を揃えた「SOMEDAY」がその問いの答えだろう。絶妙なタイミングでSATORUが流す美しいピアノのトラックに3人が声を重ねた「未来」の、そのふくよかな厚みにも圧倒される。
後半戦では再び静から動へとスイッチング、振り切れたパフォーマンスを展開してオーディエンスを天井知らずの昂揚に導く。衝突スレスレでもお構いなしに激しく動き回るフロント陣。図らずも同じ方向に動いてしまったMASATOがおどけたポーズでUを指差しながら歌うという場面もあったが、まさにぶつかる寸前のアドリブだったのだろう。そんなMASATOに視線を投げ、ニヤッと笑ったUの表情がなんともニクい。また、歌の最中にUがREIの肩を抱く、なんて光景も。本編ラストは「Sky Drive」、ステージも客席も綯い交ぜになって狂騒はクライマックスを迎えたが、さらなる興奮がこのあとに控えていた。それはアンコール1曲目の「JUNGLE GAME」を終えた直後のこと。
「今日はここに集まってくれた大切なみんなに、いちばん最初に伝えたい報告があります。今年7月、僕たちTHE BEAT GARDENはメジャーデビューが決定しました!」
Uからの突然の重大発表に凄まじい歓声が沸き起こった。あちこちで「おめでとう!」の言葉が飛び交う。
「REIとMASATOと3人であてもなく東京に出てきて、今の事務所に出会って、SATORUがDJとして仲間に加わってくれて。そして何よりみんなに出会えた。みんなと一緒に掴んだメジャーデビュー、やっとスタート地点に立つことができました」
歓喜に満ちた空間、万感の想いが一言一言に宿る。記念すべきステージを「BAD THE NIGHT」で締めくくり、最後にUははっきりと誓った。「まだまだ歩みは止めないし、全員を日本武道館、東京ドームに連れて行くから」。満面の笑みをたたえて、颯爽とステージをあとにする4人。新しいスタートを切った背中越しに洋々と未来が広がる。そうだ、これは船出なのだと思った。託された大勢の夢を乗せて、今、THE BEAT GARDENという舟は大海に漕ぎ出したのだ。まだちっぽけな小舟かもしれない。どんな荒波が待つかもわからない。だが次なるステージという港にたどり着くたびにひと回りもふた回りも大きくなっていくのだろう。ここから始まる彼らの大航海をともに追いかけようではないか。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:笹原清明】
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