THE PINBALLS完全復活! 活動再開を告げたワンマンライブ@新宿LOFTの模様を徹底レポート!
THE PINBALLS | 2019.11.08
それまで自分たちには無関係と思われていた、「歌えなくなるかもしれない」「活動が続けられなくなるかもしれない」という不安が現実になったからこそ得られた、これまで多くのアーティストたちがステージ上で心に秘めてきた「もう、これが最後のライブになってもかまわない!」という気概へのリアリティ。それを実感し、待っていてくれた人たちへの感謝やありがたみ、そしてその人たちの前で再び歌える歓びや尊さに改めて気づかされ、今後の活動への燃料がさらにくべられた一夜に立ち会えた気がしている。
THE PINBALLSが新宿LOFTにてワンマンライブを行った。本来、彼らは7月11日にこの新宿LOFTにて自主企画イベント「THE PINBALLS presents “WIZARD”」を行う予定であった。バンド名の由来にもなっている「Pinball Wizard」(彼らが敬愛するThe Whoの名曲)から取られたその企画名は、「自分たちにとって魔法使いのような素晴らしいバンドたちと一緒に魔法のような時間をを築き上げたい」、そんな気持ちを込めて付けられたものだろう。ところが古川貴之(Vo/Gt)の喉の不調により、これを含めたいくつかのライブ出演を断念。古川の治療期間、バンドはライブ活動の一時休止を余儀なくされた。そして、この8月に古川も復調。ライブは再開され、この度のワンマンライブ開催が急遽決定した次第だ。
今日のLOFTはすごい。めっちゃギッチギチ。立錐の余地もないとはこのことだ。あわせてものすごい期待感が場内に満ちている。
お馴染みのSEとともに、まずは石原天(Dr)、森下拓貴(Ba)、中屋智裕(Gt)がステージへ。少し間を置き、ひときわ高い歓声のなか古川も現れ、ステップに乗り両腕を広げ、「すべてを受け入れてやるぜ!」といったジェスチャーを見せる。間髪置かずに各々がフォーメーションにつき、復活を告げるかのようにガツンとしたデモンストレーションを場内いっぱいに放つ。そしてその残響音を上書きしていくかのように「片目のウィリー」で勢いよく開演。リスタートにはもってこいの出だしだ。「待ってました」代わりの無数の拳がステージに向けて送られる。うーん、このようなライブハウス然とした会場での彼らはやはり格別だ。
「準備はいいかおまえら!」と古川。さらにドライブ感を上げ、「ママに捧ぐ」に入る。いつもよりアグレッシブに響く同曲。中屋がギターソロをキメ、場内が起爆していく。石原の前のめりなドラミングから「DAWN」に入ると、手を伸ばして目を凝らして迷わないでと誘う同曲とともにライジングサン感と疾風が呼び込まれていく。
ライブはガンガン進んでいく。続く「劇場支配人のテーマ」では彼ら特有の幽霊的なホラー性も加わり、そこを抜けて現れた局面では会場もさらなる呼応を見せる。同曲では古川のロングシャウトも。喉の完調と自身の健在のアピールが窺えた。「今日は待たせた分だけ最高のロックンロールショウを見せてやるよ」(古川)と「CRACK」に入ると、森下もハーモニーや追いかけるコーラスを交え楽曲にふくよかさを添える。そしてここではメンバー紹介と各々のソロも披露され、森下が「待たせたな、ヴォーカル古川貴之!」と紹介した際には「待ってました!」とばかりにひと際大きな歓声が上がる。
「ただいま! 歌うのがめちゃめちゃうれしいし楽しい!」と古川。その顔は実に爽快そうだ。これまでのモヤモヤが一気に吹き飛んでいく。
「久しぶりなんでどうせならむちゃくちゃ久しぶりの曲をやる」と語り、続いたのはミディアムな「sugar sweet」。甘さと切なさが合わさり、中屋のギターもセンチメンタルなフレーズを響かせていく。「HORRORS OF THE NIGHT」でも再び彼らの激しさを味わわせてくれつつも、同曲が擁したセンチメンタルさが胸を締めつけていった。対して腰で躍らせた「Voo Doo」では、森下のソロから中屋のソロへのリレーションも印象深かった。また、雰囲気をシャープに一変するように「FREAKS’ SHOW」が場面を切り裂いていくと、ドライブ感に加え暴発性も炸裂。フロアもさらなる誘発を見せる。
ここで古川から夏の自主企画中止の悔しさが語られ、改めて歌えることの大切さや素晴らしさにも気づいたと明かされた。その気持ちを乗せたかのような、シューゲイズ性を帯びた楽曲「ワンダーソング」が、「もう一度歌を歌えるなら」と歌い、より尊く神々しく感じさせれば、「DUSK」を挟み、「久しぶりだから楽しく行こうぜ」と入ったカウパンクのノリの「重さのない虹」が場内に無数の笑顔の花を咲かせていく。そして「COME ON」からは、さらにライブへとぐいぐい惹き込まれ激化へと導かれていく。「アダムの肋骨」が抜き差しの効いたサウンドとロックンロールリバイバル、ラテンポップさで場内のバウンスを築けば、「carnival come」では中屋がフロアでお客さんにリフトされてギターソロをキメる恒例の場面も。また「七転八倒のブルース」では場内はさらなるルツボ化。会場ももうどうにでもなれと転がっていく。そして本編ラストには彼らの特有のホラー感と開放的なロックンロールの面目躍如な「蝙蝠と聖レオンハルト」が炸裂。場内もこれ以上ないぐらいの呼応と一体感を見せた。
アンコールに応えるべく再びステージに現れた4人。まずは本来7/12に発表する予定だったという、11月6日発売のニューシングル「WIZARD」のリリースが、ようやくここで発表される。そして、そのタイトル曲「WIZARD」が本邦初公開として誇らしげに高らかに鳴らされ、自身を推し進めるものを本気で信じさせてくれるように響いた。サビでの前のめりのビート、ここまで自分を突き動かしてきたものを振り返り、改めて考えさせられそうな同曲が、初披露ながらも早くも場内を踊らせにかかる。そして、正真正銘のこの日のラストは「銀河の風」が飾った。これまでも比較的彼らのライブを締める際に鳴らされた曲ではあったが、この日この時の気持ちをそのまま伝えているように、いつもと違った響き方をしたのだ。これからも引き連れていく感溢れる同曲が、その向こう側に何が待ってるかはわからないが、一緒に進んでいこうと歌われているように響いた。
終演後、スクリーンに映し出された映像では、2ndシングル「WIZARD」の11月6日の発売と、同作品とともに全国5ヵ所を回るリリース2マンツアー“Return to The Magic Kingdom Tour”の開催も改めて告知。バンドの健在ぶりと、これから巻き返してやんぜ感に場内は待ってましたと歓喜の声を上げた。
やはりここから改めて始めなくちゃいけなかったし、活動休止を経験したがゆえの尊さやありがたみを再度知れたのではないだろうか? そんな慈しみも混じっていたように終始響いたこの日。活動休止を経た彼らはより一層、これが最後になるかもしれない、なってもかまわないと、今後はより必死に、真剣に1本1本のライブを噛み締めながら、燃焼していくことだろう。
正直、もっとただいま/おかえり感に満ちた心温まるアットホームなライブを想像していた。しかし実際は、序盤そのような雰囲気はあれど、進みゆくうちにそんな空気などどこ吹く風。演者と観客との間でいつもどおりの彼ららしいライブが展開された。これからも俺たちはお前たちを引き連れていく――そんな姿勢や気概がほとばしっていた。
失った時間はあったが、その分、バンドをやれることが当たり前ではないことや、歌えること、やれること、そして待ってくれていた人たちの存在や温かさも改めて知れたであろう、今回の活動休止。それらを身を持って知り、実感した彼らは、今後ますます強靭となり、その走りは加速していくことだろう。そう、今後も一緒に並走していく心強き多くのファンとともに。
【撮影:白石達也】
リリース情報
WIZARD
2019年11月06日
日本コロムビア
02.統治せよ支配せよ
03.bad brain
04.ばらの蕾
セットリスト
ワンマンライブ
2019.9.29@新宿LOFT
- 01.片目のウィリー
- 02.ママに捧ぐ
- 03.DAWN
- 04.劇場支配人のテーマ
- 05.CRACK
- 06.sugar sweet
- 07.HORRORS OF THE NIGHT
- 08.Voo Doo
- 09.FREAKS’ SHOW
- 10.ワンダーソング
- 11.DUSK
- 12.重さのない虹
- 13.COME ON
- 14.アダムの肋骨
- 15.carnival come
- 16.七転八倒のブルース
- 17.蝙蝠と聖レオンハルト
- 01.WIZARD
- 02.銀河の風
お知らせ
Return to The Magic Kingdom Tour
12/04(水) [宮城]仙台MACANA
12/06(金) [大阪]梅田CLUB QUATTRO
12/13(金) [愛知]名古屋CLUB QUATTRO
12/15(日) [福岡]博多Livehouse CB
12/16(月) [大分]SPOT
12/20(金) [東京]渋谷CLUB QUATTRO
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w.o.d. presents スペース・インベーダーズIV
12/01(日) [茨城]水戸Club SONIC
w) w.o.d./The Cheserasera
AFOC x Shelter presents
ROCK’N’ROLL NEW SCHOOL
<’19-’20 Count Down Party!!! FINAL!>
12/31(火)[東京]下北沢SHELTER
w) a flood of circle/THE MANRAY/SAMURAIMANZ GROOVE/NITRODAY/突然少年/DJ:片平実
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。