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ユーモアたっぷりに届けられた全20曲。ツアーファイナルを徹底レポート!

SAKANAMON | 2019.12.17

 9月29日、東京・渋谷eggmanを皮切りにスタートした「ミニアルバムリリースTOUR 2019“SAKANAMON ver.11-12”」のファイナル公演の会場は、渋谷CLUB QUATTRO。ステージに現れた藤森元生(Vo/Gt)、森野光晴(Ba)、木村浩大(Dr)を、激しい拍手が出迎えた。そして、藤森が掻き鳴らしたエレキギター、歌声が先陣を切り、「並行世界のすゝめ」がスタート。森野と木村の演奏もすぐに合流して3人のアンサンブルが構築されると、生々しいサウンドが、我々がいるフロアへと一気に迫ってきた。その熱量と対照的に、藤森の歌声はどことなく素朴で、メロディは切なくてほろ苦い――というSAKANAMONの音楽ならではの魅力を、ストレートに体感したオープニングであった。

 「ジリキの迷宮」「ぱらぱらり」「東京フリーマーケット」と立て続けに披露されたが、観客の盛り上がり方がとにかくものすごい。掲げられた掌がフロアの全面で一斉に揺れたり、手拍子が大粒の雨のような音を立てたり、各曲の演奏が終わるごとに爆発的な拍手も起こる。しかし、終始“穏やか”と言ってもいいくらいのムードであったのが、とても印象的だった。盛り上がれば盛り上がるほど“熱気が高まっていく”というのが多くのロックバンドのライブだと思うが、“ほんわかとした空間が広がり続ける”というのがSAKANAMONならではの持ち味だ。サウンドはエネルギッシュだし、シャープなビートが躍動する場面の連続だが、完全にアグレッシブな方向に行き切らないのは、先述した藤森の歌声の独特なトーンのほかに、郷愁を誘う和的なメロディが随所できらめくのも理由のひとつではあるまいか? そんなことも改めて感じた。

 「ツアーファイナル、お越しの、みなさま! 12公演目、お越しの、みな、さま! ありがとう、ござ、います! なんか、緊張する、けど、楽しい、ですね」――ハキハキと喋っているようで、変なところで途切れて、たどたどしいという藤森ならではの語り口が、観客を和ませていた最初のMCを経て、さらに演奏は続いた。開放的な盛り上がりを生んだ「BAN BAN ALIEN」。エキセントリックな曲なのにキャッチーな「鬼」。スタイリッシュなサウンドと起伏に富んだ展開が楽しかった「UMA」――“珍しい生き物シリーズ”とでも言うべき3曲は、SAKANAMONの作風の多彩さを高密度で体感させてくれた。

 再び迎えた小休止。「リリースツアーということで、ミニアルバムに入ってる6曲を中心に演奏するんですけど、『それ以外の曲をどうしようか?』ってなった時に、新たなコンセプトを設けることになりました。各公演でメンバーの誰かひとりが、セットリストと曲順を決めるツアーを行っております。今日のセットリストを決めたのは、藤森くんです!」――森野の言葉を聞いて、観客は拍手。普段は8割くらいを森野、2割くらいを木村が決めているので、藤森によるセットリストは珍しいらしい。「自身にとって旬で、歌ってて気持ちいい」という基準で選んだという曲たちは、その後もSAKANAMONの魅力を、様々な形で示してくれたが、なかでもこのMCタイムの直後に披露された「YAMINABE」のインパクトはかなり大きかった。なにしろ、曲の途中で不良っぽいサングラスをかけた“MCフジモリ”が登場して、フリースタイルのラップがスタートしたのだから。「クアトロ トトロとトロトロの中トロ~」「大トロ 中トロ トトロ……ど、どうしよう……」。意味不明な言葉ばかりが飛び出して、観客は大爆笑。一応、コール&レスポンスを交えたりもしつつ、どうにかこうにかエンディングを迎えたが、「『どうしよう……』とか言っちゃダメだよ!」(森野)、「フリースタイルラップをツアーの全ヵ所でやったんですけど、大地獄ですよね(笑)」(木村)――ふたりから呆れられていた。

 「漫画の中には、大抵イケメンの主人公と、かわいいか、美しいかのヒロインがいます。それを引き立てるための脇役もいます。でも、その世界、コマの中に入ることのない人も、本当はいるわけです。『そういう人たちも主人公やヒロインに恋をするんだぞ』という曲です」――藤森の言葉が添えられてスタートした「矢文」。アコースティックギター、アップライトベース、ドラムという編成で演奏して、アイリッシュフォーク的なエッセンスも交えながら届けられたサウンドが新鮮だった。

 「プロムナード」と「スティッキーフィンガー」の温かいメロディが観客をうっとりとさせたあと、「今年の夏からサウナにハマって、4キロくらい痩せた」という藤森の近況の話で盛り上がった小休止を挟んで、「AGEINST」がスタート。木村が「ア!」と叫んだのに対して観客が「ゲ!」と元気いっぱいに返す恒例のコール&レスポンスの楽しさは、やはり絶大なものがあった。その熱気のままなだれ込んだ「幼気な少女」は、激しい手拍子の嵐。続いて、美メロとアクの強い歌詞の融合が実に味わい深い「君の○○を××したい」。観客が明るく踊りまくった「UTAGE」……強力なナンバーが連発されたなか、異彩を放ったのが「SECRET ROCK‘N’ROLLER」であった。この曲は、“周りの誰にも知られていないロックバンドのライブの会場で、同じクラスの女の子の姿を見つける”という物語が、歌詞で描かれている。歌う前に藤森が「今日、ひとりで来た人?」と問いかけると、ものすごい数の手が挙がったが、この曲に格別の思い入れがある人々でもあったに違いない。「みんなが知ってるからとか、好きだからといって、それが正しいというわけじゃない。あなたしか知らない最高を大切にしてください」という言葉が添えられたこの曲は、力強い大合唱を巻き起こしていた。

 1年8ヵ月ぶりの新作として、8月にリリースされたミニアルバム『GUZMANIA』。バンド結成10周年という節目を経て完成された作品だが、本格的な制作に入る前は、迷いがあったのだという。しかし、年始の新曲配信、リクエスト結果を反映したワンマンツアーを通して感じた観客の反応によって乗り越えることができた――といういきさつを、藤森は語った。「いろんなみなさんの反応に触れた結果、自信しかつかなくて。『このまま自信を持ってやっていけばいいんだ』という結論です。『GUZMANIA』を作ってから、さらに自信を持って、みなさんに聴かせたい曲がたくさんできております。ともに音楽を楽しんでいきましょう!」という言葉とともに「PLAYER PRAYER」がスタートした。視線を交わし合いながら演奏を始めた藤森、森野、木村のシルエットが、逆光を浴びて浮かび上がり、サウンドが力強く広がっていくさまがドラマチック。疾走感に満ちたサウンドを聴きながら、現在のSAKANAMONに漲っている絶大なエネルギーを感じた観客が、たくさんいたに違いない。とても心地よい本編ラストの曲であった。

 「ア! ゲ!」という観客のコールに応えて、ステージに戻ってきた3人。オリジナルグッズの紹介、藤森が歌っているJR東日本「行くぜ、東北。SPECIAL 冬のごほうび」のCM曲が少し披露された場面を経て、「来年の2月26日にニューアルバム『LANDER』をリリース!」「ワンマンツアー決定!」という発表があった。そして、アンコールの1曲目に披露されたのは、牧歌的なムードが漂う新曲「HOME」。「今回のツアー、めちゃくちゃ楽しかったです。『こんなに卑屈な僕が、こんなに幸せでいいのか?』と思いながら、これからも生きていきます。またライブに来てください。感謝を込めて歌わせてください」と藤森が語ってから披露された「箱人間」は、音楽の好きな人間同士が空間を共有することの喜びが表現されていた。そして、ラストを締め括ったのは、「ミュージックプランクトン」。藤森がマスコットキャラクター「サカなもんくん」の人形を振り回し、昇龍拳をお見舞いする――というお馴染みのパフォーマンスとともにエンディングを迎えた時、感極まった観客は一斉に拍手。「これからもよろしくお願いします!」と言ってステージをあとにした藤森、森野、木村を大きな歓声が見送った。

 10周年のタイミングで『SAKANAMON THE MOVIE ~サカナモンは、なぜ売れないのか~』というタイトルのドキュメンタリー映画が製作されて、今年の春に劇場公開された。SAKANAMONは、いわゆる“売れているバンド”ではないかもしれない。このような状況が続いている理由はいろいろあるのだろうが、「モヤモヤした感情を抱いている人間の心に丁寧に寄り添う音楽をやっているからなんだろうなあ」というのは、ファンならばなんとなく感じているのでは? アッパーでストレートに盛り上がれる音楽を連発するバンドのほうが、たくさんのリスナーを巻き込む瞬発力は大きいと思う。しかし、“モヤモヤした感情”は、決してマイノリティー特有のものではない。大半の人は、何かしらの「報われなさ」「やるせなさ」「切なさ」を抱えながら、どうにかこうにか生きているものだ。そういう想いにまっすぐ向き合い、表現し続けてきたSAKANAMONの音楽は、ファンにとって本当にかけがえのないものとなっているし、一定の層の中で「狭く深く」愛されている。そういうこのバンドが、時間をかけながらリスナー層を少しずつ広げて、「広く深く」支持されるようになっていくのは、ごく自然な流れのように感じられる。そういう未来を信じさせてくれるものが、この日のSAKANAMONのライブにはたしかにあった。年始から様々な動きがある2020年が、大きな変化を迎える日々となったら、とてもうれしい。

【取材・文:田中大】
【撮影:中山優司】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル SAKANAMON

関連記事

リリース情報

LANDER

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2020年02月26日

TALTO

01.FINE MAN ART
02.LIKES
03.ONE WEEK
04.HOME
05.アフターイメージ
06.YOKYO
07.WOULD YOU LIKE A HENJIN
08.夏の行方
09.少年Dの精神構造
10.矢文
11.CORE
12.コウシン

リリース情報

GUZMANIA

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2019年08月07日

TALTO

01.並行世界のすゝめ
02.SECRET ROCK’N’ROLLER
03.箱人間
04.YAMINABE
05.BAN BAN ALIEN
06.矢文
07.反照(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
08.リーマンビートボックス(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
09.テヲフル(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)
10.ロックバンド(2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂)

セットリスト

ミニアルバムリリースTOUR 2019
“SAKANAMON ver.11-12”
2019.12.1@渋谷CLUB QUATTRO

  1. 01.並行世界のすゝめ
  2. 02.ジリキの迷宮
  3. 03.ぱらぱらり
  4. 04.東京フリーマーケット
  5. 05.BAN BAN ALIEN
  6. 06.鬼
  7. 07.UMA
  8. 08.YAMINABE
  9. 09.矢文
  10. 10.プロムナード
  11. 11.スティッキーフィンガー
  12. 12.AGEINST
  13. 13.幼気な少女
  14. 14.君の○○を××したい
  15. 15.UTAGE
  16. 16.SECRET ROCK‘N’ROLLER
  17. 17.PLAYER PRAYER
【ENCORE】
  1. 01.HOME(新曲)
  2. 02.箱人間
  3. 03.ミュージックプランクトン

お知らせ

■ライブ情報

SAKANAMON 全国“着陸”ワンマンツアー
~君の街まで~

2020/03/28(土) 神奈川 横浜B.B.STREET
2020/03/29(日) 静岡 浜松LIVEHOUSE MESCALIN DRIVE
2020/04/03(金) 宮城 仙台enn 2nd
2020/04/05(日) 北海道 札幌COLONY
2020/04/25(土) 愛知 名古屋APOLLO BASE
2020/04/26(日) 大阪 梅田Shangri-La
2020/04/28(火) 宮崎 floor R
2020/05/10(日) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK
2020/05/16(土) 広島 BACK BEAT
2020/05/17(日) 福岡 INSA
2020/05/22(金) 東京 渋谷TSUTAYA O-EAST

TALTOナイト2020 東阪福ツアー
w) 東京カランコロン/マカロニえんぴつ
2020/01/31(金) 東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
2020/02/07(金) 福岡 INSA
2020/02/09(日) 大阪 Music Club JANUS



FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL
RADIO CRAZY 2019

2019/12/27(金) 大阪 インテックス大阪
※TALTOオールスターズとしての出演

the quiet room“White” Encore Tour
2020/01/24(金) 香川 高松TOONICE
w) the quiet room/Charles(OA)
2020/01/25(土) 広島 CAVE-BE
w) the quiet room/osage(OA)

RAD CREATION presents
でらロックフェスティバル2020
powered by @FM

2020/02/02(日) 愛知 DIAMOND HALL/APOLLO BASE ほか名古屋栄・新栄・大須のライブハウス20会場以上

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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