“SAKANAMON史上、最も自己肯定感の強いアルバム”に見るバンドの未来像とは?

SAKANAMON | 2020.02.27

 最新作『LANDER』の印象を端的に言い表すならば、「『我々はこういうバンドなんです!』という主張が真っ直ぐに伝わってくるアルバム」という感じだろうか? 彼らの十八番であるエネルギッシュなギターロックを様々な形で鳴らしていると同時に、打ち込みサウンドなども含めた多彩な作風を発揮しているのだが、一貫して揺らぐことのない「SAKANAMONの本質」とでも言うべきものが自ずと伝わってくる。藤森元生(Vo/Gt)に、この作品について語ってもらった。

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EMTG:2019年は年始に3ヵ月連続配信をして、『GUZMANIA』のリリースもありましたが、そこに至るまでの日々の中で、結構悩んでいましたよね? 「10周年を経て、どう活動するか?」ということで迷っていたと記憶しています。
藤森:そうでしたね。悩んでいた時期を経て、『GUZMANIA』という作品が出来て、「よし! 調子が出てきた!」という状態のまま止まらずに「スポンッ!」と作れたのが今回のアルバムです。去年やったリクエストワンマンツアー(「SAKANAMON THE UPDATE TOUR ~BUDDY→Victor→TALTO~」)で自信を取り戻せたのが大きかったんですけど。
EMTG:「こういう曲もちゃんとお客さんに届いて、好きになってもらえてたんだ」というのを、あのツアーで確認できたんですよね?
藤森:はい。自信を取り戻せたのが去年の2月くらいだったのかな? そこから走り抜けたという感じなんですよね。
EMTG:今作のいろんな曲を聴いて、まず、僕がすごく感じたのは、「自分は自分のままで行くしかない」という気持ちなんですけど。
藤森:たしかに、自己肯定感が今まで以上に強いアルバムになってると思います。今までは卑屈なところが多かったんですけど(笑)。今回はもっと明るくなったというか、鬱屈した感じがあんまりないというか。やっぱり、自信を取り戻してから曲を書けたというのが大きいんだと思います。
EMTG:「SAKANAMONはSAKANAMONなんだから、ほかのものになりようがないじゃないか!」という腹の括りも感じます。
藤森:SAKANAMONも、もう12年目ですからね。いろんなことがあって、怒りや苦しみについてもたくさん歌わせてもらって、10周年が終わって「このままでいいのか?」という不安を抱え……っていうことを経て、開き直るようになったからこそ大人になったというか。「今さら悩んだところで」というのもあったりしますから。
EMTG:今作の1曲目「FINE MAN ART」にも、そういう姿が表れていますね。「自分の本質を曲げないで、必要としている人に作品を届けたい」という気持ちが伝わってきます。
藤森:これは、素材は前からあったんです。僕、ソロ活動はしてないんですけど、オープニングアクトとしてひとりで出たことがあって。それ用に作った曲なので、自分と音楽の本質的な部分を表したかったんですよね。それが、今回のアルバムにいい感じでハマりました。
EMTG:この曲、アルバム全体のテーマ的なものも集約されているように感じたんです。今作のタイトルは『LANDER』、“着陸船”という意味ですけど、たくさんの人の心に着陸して届けていたい、という気持ちはどんどん強くなってきています?
藤森:はい。昔と比べたら、そういう気持ちはすごくあると思います。今までは「こういうのは自分たちの抱くミュージシャン像ではないから」っていうようなことで、「売れてない」っていうのを言い訳にしてきたところがあったんですけど。
EMTG:SAKANAMONは、王道にかっこよくて美しい曲になりそうになると、変な要素を添加する性質があるというか。それによってリスナー層を絞ってきたところもある気がするんですけど、どう思います? 昔の曲から挙げるならば、「君の○○を××したい」も、《君のホクロ食べたいです》なんて歌わないほうが、幅広い層に聴いてもらいやすかったでしょうし。
藤森:ほんとはそうですよね(笑)。でもあの曲、元々はもっと素直に書いてたんですよ。きれいなラブソングにしてたんですけど、みんなから「もっと遊べ」って言われて、「へえー、そうなんだ?」って。
EMTG:意外でした?
藤森:はい。それまでは遊び過ぎて怒られることが多かったので(笑)。絶妙なバランスの意識が、森野さん(森野光晴/Ba)、キムさん(木村浩大/Dr)も含めたSAKANAMON全体にあるんだと思います。
EMTG:ファンは、そういうところも好きなんですけどね。
藤森:きれい過ぎるSAKANAMONは、求められていないというのは感じます。まあ、キラキラしようとしてもできないんですけど。
EMTG:一筋縄ではいかないSAKANAMONの音楽を「好き」と思うファンのみなさんの感性は、ぜひ大事にしてほしいですよね。「LIKES」を聴いて、そういうことも感じました。
藤森:「LIKES」は、「自己肯定感をみんなで磨いて、築いていってほしい」っていう後押しの曲ですからね。
EMTG:「WOULD YOU LIKE A HENJIN」も、多数派には属していない人を肯定している曲ですね。フル打ち込みサウンドというのも新鮮です。
藤森:「演奏しない」ということに挑戦してみました。曲を聴かせた時にキムさんが、「これ、俺が叩かなくていいんじゃない?」って言って、「そうか!」と。「そういう判断ができるバンドになったんだな」っていうのも感じました。森野さんも打ち込みの曲にすることを否定しなかったですし、それくらいSAKANAMONの自由度が上がってるのを感じて、すごくうれしかったです。まあ、「ライブどうすんの?」って話にはなってますが……。
EMTG:どうするんですか?
藤森:うーん、考え中です。「3人で踊る?」って話は、とりあえず却下されました(笑)。
EMTG:(笑)。編曲は、さらばルバートのイロハさんが参加しているんですね。
藤森:はい。彼とは前から仲良くさせてもらってて、こういうのが得意な人なので。僕、もともと中田ヤスタカさんが大好きで、作曲家としていちばん尊敬してるんですよ。こういう曲をやってみたいという気持ちがずっとあったんです。イロハくんに手助けしてもらって、ついに作ることができました。
EMTG:こういう曲が生まれるようになったのも、「自分は自分でいい」っていう自信が藤森さんの中で強まっているからなのかも。
藤森:なるほど。
EMTG:「CORE」でも、「何があっても変わらない自分の本質」みたいなことを歌っているじゃないですか。
藤森:そうですね。人間の適応能力ってすごいですけど、やっぱりありのままの姿がいちばんいいなと思うんです。ちょっと話が変わりますけど、最近のヒーローものは、いろんな形に変身したがるんですよ。
EMTG:いくつもの形態になるんですか?
藤森:そうなんです。『ウルトラマンティガ』は平成ウルトラマンの第1弾で、ウルトラマンの色が変わるんですよ。『ウルトラマンティガ』、好きなんですけど、「そうじゃねえだろ?」っていう思いもあり(笑)。「赤か青かはっきりしろ! やっぱり初代ウルトラマンの姿がいちばん洗練されててかっこいいな」と思った……っていう話です。
EMTG:「ひとつの姿しかない初代ウルトラマンのように、自分の本質にあるものを大事にしよう!」っていうことですね?
藤森:そういうことです。SAKANAMONもいろんな変化はしているつもりなんですけど、根本にある本質的なものはあると思うので、そこは曲げずにやっていきたいですね。
EMTG:「HOME」や「YOKYO」も、ある意味、「自分の本質を描いた曲」ということなのかも。故郷や、大事な友だちの結婚を祝う気持ちを描いた曲ですけど、自分の本質が題材とも言えるじゃないですか。
【2/26 ON SALE!!】SAKANAMON / HOME MV
藤森:そうですね。狙ったわけでもないんですけど。「YOKYO」は、友だちが結婚したから、たまたま作った曲なので。友だちの結婚が制作期間だったので、アルバムに入れる気満々で、友だちを泣かすつもりで書きました。
EMTG:「HOME」は、軽快なピアノが醸し出す穏やかなムードが新鮮でした。
藤森:こういうのも前からやってみたかったんです。「サツキとメイが車窓から顔を出して、景色を見てる」みたいなイメージです。『となりのトトロ』には、そんなシーンはないんですけど、なんとなく思い浮かべてました。
EMTG:アイリッシュっぽい「矢文」もそうですけど、サウンドの幅は広がっていますよね。
藤森:はい。バンドとして12年目だからこそ、「矢文」や「HOME」みたいな曲も、どんどんやってみたいモードになってます。
SAKANAMON / 矢文 MV
EMTG:作風が広がっても、メロディが醸し出すものは、どこか素朴で温かいというのは一貫していますよね。それがSAKANAMONの本質っていうことなのかも。「アフターイメージ」や「夏の行方」を聴いても、そういうことを強く感じます。
藤森:メロディは、やはり外せないところなんですよね。「そこさえブレなければ、どの方向に行っても大丈夫」っていう感じもしてるので。
EMTG:「SAKANAMONの軸はメロディである」という感覚はあるんですか?
藤森:そうですね。メロディが良くないと自分が納得できないというか。どこかしら、ちゃんと顔を作ってあげたいんですね。
SAKANAMON / アフターイメージ MV【3ヶ月連続配信Single】
EMTG:「メロディ=顔」っていう感覚?
藤森:はい。例えばメロディアスというよりも、ものすごく踊れる方向の曲もありだと思うんですけど、「顔を作ったり、目を入れてあげないと」みたいな感覚になるんです。「絶対にここが美味しい」っていうところを作ってあげないと、曲としての身体の部分も作ってあげられない感じがあるんです。例えば「夏の行方」は、森野さんがメロディで悩んでて、ちょっと僕の手を加えたんですけど。
EMTG:つまり、森野さんが作った曲に、顔をつけてあげたようなイメージ?
藤森:まさにそういうイメージがあります。元々のイントロのメロディが良かったので、そこを活かしつつ、僕がサビを作った形です。
EMTG:メロディという顔、幹となる部分があるからこそ、ユニークな切り口も安心して炸裂させられるんでしょうね。例えば「ONE WEEK」は、1週間の描き方が独特ですし、恋に落ちていく少年の精神構造を描いた「少年Dの精神構造」も、なんと申しましょうか……。
藤森:この曲は、遊ばせてもらいました。
EMTG:ちょっと、ミュージカルっぽいですよね。
藤森:展開が多いですからね。
EMTG:女の子の消しゴムのカスを集めて、丸めて、糊塗って、日付まで入れてコレクションする描写とか……「君の○○を××したい」に通ずるものを感じざるを得ません。
藤森:童貞感を出したくて(笑)。消しゴムのカスに関するところは、一瞬で出てきました。
EMTG:この曲、全国のイニシャルDの少年たちが、特に反応することでしょう。「俺は、こんなことはしない!」って。
藤森:そうか。申し訳ない(笑)。
EMTG:(笑)。今作を振り返って、どんなことを感じています?
藤森:健康的にアルバムを作れましたね。今、調子がいいです。今までは当たり前に生みの苦しみがあって、それはそれで幸せだったんですけど、こんなにスルスルと楽しく音楽を作れてるのが怖いくらいです。
EMTG:今後も、この感じでいきたいですか?
藤森:はい。まあ、僕は意識すると失敗するタイプなので、フラットな気持ちで、あまり考えずに、バカなふりして楽しく音楽を作っていけたらいいなと思ってます。

【取材・文:田中大】

【3ヶ月連続配信Single第一弾!】SAKANAMON「コウシン」ショートMV

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リリース情報

LANDER

LANDER

2020年02月26日

TALTO

1.FINE MAN ART
2.LIKES
3.ONE WEEK
4.HOME
5.アフターイメージ
6.YOKYO
7.WOULD YOU LIKE A HENJIN
8.夏の行方
9.少年Dの精神構造
10.矢文
11.CORE
12.コウシン

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

SAKANAMON 全国“着陸”ワンマンツアー~君の街まで~
03/28(土)神奈川 横浜B.B.STREET
03/29(日)静岡 浜松LIVEHOUSE MESCALIN DRIVE
04/03(金)宮城 仙台enn 2nd
04/05(日)北海道 札幌COLONY
04/25(土)愛知 名古屋APOLLO BASE
04/26(日)大阪 梅田Shangri-La
04/28(火)宮崎 floor R
05/10(日)新潟 GOLDEN PIGS BLACK
05/16(土)広島 BACK BEAT
05/17(日)福岡 INSA
05/22(金)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST

murffin night 2020 in NAGOYA
03/06(金)愛知 名古屋ダイアモンドホール
w/ Amelie / osage / the quiet room / sumika

見放題東京2020
03/07(土)東京 新宿ライブハウス14会場

えのすいフライデーナイト♪ Vol.12
えのすい×SAKANAMON
03/13(金)神奈川 江ノ島水族館
※バンド編成によるアコースティックセットでのライブ

HIROSHIMA MUSIC STADIUM-ハルバン’20-
03/21(土)、03/22(日)広島 広島市内9会場
※03/22(日)に出演

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
03/21(土)、03/22(日)香川 7会場
※03/22(日)に出演

hoshioto’20
05/30(土)岡山 井原市青野町 葡萄浪漫館

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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