前へ

次へ

『LANDER』ワールド全開で届けられた有観客生配信ライブの模様を徹底レポート!

SAKANAMON | 2020.07.31

 新型コロナウイルスの状況を踏まえつつ検討を重ねて、「会場で観られるチケットを45枚販売+オンライン生配信を観られるチケットも販売」という形で開催された「SAKANAMON 全国“着陸”ワンマンツアー オンライン振替公演~君の家まで~」。会場となった渋谷eggmanのフロアは、観客同士の距離が十分に確保された形で椅子が置かれていて、ステージの前面には飛沫防止のためのシートが張られていた。

 開演時間を迎え、鳴り響いたSE。現れた藤森元生(Vo/Gt)、森野光晴(Ba)、木村浩大(Dr)を拍手が出迎える。そして、オープニングを飾ったのは「FINE MAN ART」。3人のサウンドが一丸となり、疾走する様が心地よい。ステージ上でメンバーたちを見守っている、マスコットキャラクター「サカなもん」もうれしそうな表情を浮かべているように感じられた。

 藤森が目の前にいる観客たちと生配信で向き合っている視聴者を煽りつつスタートした2曲目「マジックアワー」。手拍子を浴びたことによって、3人が奏でる音は一際熱量を帯びる。生配信を観ている人々も、自ずと手拍子をし始めていたのではないだろうか。続いて「ミュージックプランクトン」と「ONE WEEK」が届けられた頃には、従来とは少し異なる形によるライブであることを忘れてしまえるくらいの熱気が、画面を通しても伝わってきた。

「みなさん。本日は  ですね  全国  “着陸”  ワンマン ツアー……なんだっけ? オンライン  振替公演  ~君の  家まで~ に  起こし  くださいまして  まことに  ありがとう  ございます」。変な間がちょくちょく挟み込まれる藤森のMCが、なんだかとても懐かしい。極めてたどたどしい彼の様子を見て、「ブランクを感じさせないMCのグダグダさ……」と呆れていた森野。そして、久しぶりに観客の前で演奏できる喜びを語り合った3人は、すぐに演奏を再開。「2020年、オリンピックの年になる予定でした。たくさんの海外の方々がいらっしゃると思っていたのですが、そういうわけにはいかなくなってしまいましたけども、外国人はたくさんいらっしゃいますね。というわけで、外国人の曲をお聴きください」という藤森の言葉を経て、「DAVID」がスタートした。“DAVID”とは何者なのか最後までまったくわからず、突然隕石が降ってきて、人類滅亡5秒前を迎える……という摩訶不思議なこの曲だが、涼やかなサウンドが味わい深い。そして、この曲が醸し出したシュールなムードを、和楽器の音色で彩られた「鬼」がさらにエスカレートさせていく。ギターロックとしての正統派のかっこよさがありつつ、ユニークな風味にも満ちているSAKANAMONならではの2曲であった。

「鬼とは、西洋人を見たことがない昔の日本人の想像の産物」という旨を藤森が語ったものの、説明が要領を得ず、やっぱりグダグダとなったMCタイム。そして「今日は4ヵ月遅れのレコ発ライブ。アルバムの曲をたくさんやっていこうと思います。次の曲も『LANDER』から」という、森野の言葉とともに「夏の行方」がスタート。E-BOWを使ったギタープレイを交えたサウンドが、とても爽やかで気持ちいい。続いて穏やかな音色で彩られた「アフターイメージ」、アコースティックテイストの結婚祝福ソング「YOKYO」も披露されて、ますますリラックスしたムードが漂う。最新アルバム『LANDER』によって、SAKANAMONの音楽の多彩さが一気に広がったことを再確認させられた。

「結婚する同世代が増えた」「2ヵ月以上ぶりにメンバーが集まっても、いつもとあまり変わらなかった」「みんなが思っている以上に3人は仲がいい」「自粛期間中、木村は『ごくせん』を観ていた」「森野の家庭は厳しくて、暴力的なテレビ番組は観させてもらえなかったが『こち亀』はOKだった」……などなど、次々話題が切り替わっていったMCタイム。「髪色すごいね。今日集合したとき遠くから見て、ビジュアル系の兄ちゃんがいるって思った」(木村)→「一昨日美容院に行って、美容師さんに『おすすめの色にしてください』って言ったらコバルトブルーになった」(森野)――というやりとりを耳にした藤森が、咄嗟にTHE BACK HORN「コバルトブルー」の一節をギターで弾き始めたりもしていた。バンド練習前の彼らは、いつもこのような感じで1時間くらい、とりとめのない話をしているらしい。そんなひとときを経て披露された「少年Dの精神構造」は、思春期の鬱屈した心情を浮き彫りにしながら、アバンギャルドな展開を遂げていった。この曲は、今後のライブでもスリリングなサウンドを体感させてくれそうだ。

 ライブバージョンが初披露となったNHK『みんなのうた』の曲「丘シカ地下イカ坂」のあとに再び迎えた小休止。3人は、新型コロナウイルスの影響で、予定されていた全国ツアーが延期となった頃のことを振り返った。そして「自粛期間に体重が8kg落ちたことによって、以前の木村がいかに外で酒を飲んでいたかが証明された」というようなトークによって、またしてもユルユルとしたムードになりかけたのだが、「自粛によってどう活動したらいいのかわからなくなったことによって、“我々が変わらなければいけないこと”と“変えてはいけないところ”を改めて見出す期間になったのかなと。確かな答えは見えはしないんですが、今ライブができること、少しずつ前進することが答えだと思ってます」という藤森の言葉は、とても真っ直ぐに迫ってきた。そして、彼のギターと歌とともに幕開けた「コウシン」。森野と木村の演奏もすぐに合流し、熱量に満ちたアンサンブルが構築された。

 骨太な爆音を響き渡らせた「CORE」、会場にいる観客が掲げた手を気持ち良さそうに揺らしていた「UTAGE」――盛り上がるフロアの様子を見て、「ライブハウスの感覚を取り戻してきました」とうれしそうに言った森野が「ここからラストスパート。みなさん立ちます? 配信観てる人も盛り上がっていきましょう!」と呼びかけて突入した「SECRET ROCK’N’ROLLER」は、終盤戦の絶好の起爆剤となった。続いて、「LIKES」も披露されたことによって、ますます熱気が渦巻いていたステージ。そして、「少人数ですけどライブという形をとれてうれしいです。自由にライブができる日を心待ちにして、またライブハウスでお会いしましょう!」という藤森の感謝の言葉とともに「HOME」がスタートして、ライブ本編は温かなサウンドで締め括られた。

 フロアにいた観客から起こった手拍子、配信を観ている視聴者がチャットに書き込んだコメントに応えて行われたアンコール。観客がいるライブハウスで演奏し、その模様を生配信することができた喜びを3人は改めて語り、「ツアーは中止ではなく延期であり、何らかの形でいつか開催する」ということを誓っていた。そして、「我々はライブバンドだと自負しております。みんなと楽しくライブができる日を夢見ておりますので。そんな想いを最後の1曲に込めて」という藤森の言葉を添えて、ラストに届けられた「ロックバンド」。<何処だって行こうか/何処まで行こうか>というフレーズが、困難を乗り越えて力強く前進しようとしている姿を感じさせてくれた。

 藤森がサカなもんのぬいぐるみを手にして振り回し、昇龍拳を下腹部に食わらせる……という、いつものパフォーマンスが炸裂するかと思いきや、拳はヒットさせない「ソーシャルディスタンス昇龍拳」とともに迎えた「ロックバンド」のエンディング。ステージをあとにした3人を拍手が見送った。生配信を観ていた人々も、余韻を噛み締めながら拍手を送っていたのではないだろうか。『LANDER』に収録された新しい曲も存分に披露されたこのライブの手応えは、今後のSAKANAMONを衝き動かす大きな力となるはずだ。

【取材:田中大】
【撮影:酒井ダイスケ】

tag一覧 配信ライブ 男性ボーカル SAKANAMON

関連記事

リリース情報

LANDER

LANDER

2020年02月26日

TALTO

01.FINE MAN ART
02.LIKES
03.ONE WEEK
04.HOME
05.アフターイメージ
06.YOKYO
07.WOULD YOU LIKE A HENJIN
08.夏の行方
09.少年Dの精神構造
10.矢文
11.CORE
12.コウシン

セットリスト

全国“着陸”ワンマンツアー
オンライン振替公演~君の家まで~
2014.08.19@日本武道館

  1. 01.FINE MAN ART
  2. 02.マジックアワー
  3. 03.ミュージックプランクトン
  4. 04.ONE WEEK
  5. 05.DAVID
  6. 06.鬼
  7. 07.夏の行方
  8. 08.アフターイメージ
  9. 09.YOKYO
  10. 10.少年Dの精神構造
  11. 11.丘シカ地下イカ坂
  12. 12.コウシン
  13. 13.CORE
  14. 14.UTAGE
  15. 15.SECRET ROCK’N’ROLLER
  16. 16.LIKES
  17. 17.HOME
【ENCORE】
  1. EN1.ロックバンド

トップに戻る