ロックンロールの魔法の連鎖――THE PINBALLS原点回帰の熱き一夜を徹底レポート!
THE PINBALLS | 2019.12.27
魔法は魔法。いつかはその魔力も解け、いつもの自身に戻ってしまう時が来る。その刹那や期限、元に戻る怖さ故、せっかく手に入れたそれをひと時も失わないように、人はがむしゃらに、無我夢中に、必死に抗うように、その「魔力の確立」へと向かう。そしてそれは結果、それまでとはまた違った何かを生み出すに至ることもある。魔法にかかる前と、魔法にかかり、それが解けたあととでは明らかに変わっている自分と出会えたりするものだ。ひと時ながら「熱狂」という魔法を得て、苦難を経たからこその、その後の日常へと持続できる「今まで以上の自分」「今までにはなかった自分」の類い。この日のライブを通し、THE PINBALLSは私にそんなことを体感させてくれた。
戻って来た際に自身が何を得て、どう大きくなったり変わったりしているのだろうか? その期待とワクワクを胸に自身にロックンロールという魔法をかけ、全国を対バン形式で回ってきたTHE PINBALLS。私には、その最終地点で広がっていた光景やリアクション、熱量や圧は、彼らにロックンロールが持つ魔力のさらなるすごさや偉大さ、不思議さを教示し、これからもさらにそれを狂信し進んでいこう!という決意に至らせた夜にも映っている。
ニューシングル「WIZARD」を携え回った「Return to The Magic Kingdom Tour」が、渋谷CLUB QUATTROにてファイナルを迎えた。仙台ではYellow Studs、大阪ではPOT、名古屋ではSuspended 4th、福岡では空きっ腹に酒と、あえて近似の音楽性ではないバンドたちとともに贈られた同ツアー。が故に各会場、これまでに見たことのなかった魔力が広がり、さらなる狂信者を増やしていったのだろう。そしてこの日の対バンはLAMP IN TERREN。男気溢れる骨太な音楽性が魅力のバンドだ。
バンドサインのネオン管のみの装飾のなか、SEなしで登場した彼ら。デモンストレーション音とともに、松本大(Vo/Gt)が「よろしく」とぶっきらぼうに一言。一音一音の存在感と力強さ、骨太なサウンド、しっかりとメロディに根づいた歌、そして歌声も魅力的なその音楽性の魔力を各曲を通して放っていく。
言葉荒げに歌う松本と大屋真太郎(Gt)、中原健仁(Ba)、川口大喜(Dr)による、重いうねりとストーナー性を擁したクルーヴが特徴的な「ほむらの果て」を皮切りに、心地よいファットな一体感と泳ぐようにたゆたう歌、まどろむようなギターソロが白昼夢へと誘った「Water Lily」、松本による鍵盤も手伝い歌と歌声を会場いっぱいに広げていった「花と詩人」が次々と放たれていく。中盤からは各々のプレイもさらに激化。なかでも「ホワイトライクミー」でのスリリングさと緊迫感、そこを抜けパーっとした場所への誘いには格別さがあった。
実はこの日がTHE PINBALLSと初対面で、対バンも初めてだったことを明かした彼ら。「一緒に一体感を作り出したくてここに来た。巻き添えにさせていたらごめん」の言葉を経て、その真摯さと実直さを知った場内とともに、会場の雄々しいコーラスと謳歌にて「オーバーフロー」を完成へと導けば、「お歌をうたったあとは体を動かす番です!」とアフロなビートが会場全体のバウンスを誘発した「地球儀」では、曲の中盤で松本もフロアに下り、観客共々一緒にバウンス。この上ない一体感を得ることができた。
最後は「先ほど買ったばかり」と語ったレスポールJr.に持ち替えた松本が、「今日捧げてくれた時間への見返りは、命を削った俺らの歌で」と言葉を残し「BABY STEP」へ。ストリングスの同期も交え、よりドラマティックさと感動を寄与した同曲。世界が変わっていく瞬間に立ち会えたような印象を場内にしっかりと刻み、彼らはステージを去った。
続いてはTHE PINBALLS。ツアーフラッグをバックドロップに、まずは中屋智裕(Gt)、森下拓貴(Ba)、石原天(Dr)がステージに。間を置き古川貴之(Vo/Gt)も場内を煽りながら登場してくる。ステップに上がった中屋が両腕を広げてウェルカムの仕草を。そんななか、バンド全体によるデモンストレーション音がフロアを襲撃してきた。シャウトとともにニューシングル「WIZARD」収録の激しいナンバー「統治せよ支配せよ」が放射されていく。「戻ってきたゼ東京!」と古川。全員を取りこぼさずロックンロールの魔法にかけるべく「ママに捧ぐ」に入ると、先行したバンドに皆もしっかりと食らいついていく。そしてライブがさらなる激化を見せた「劇場支配人のテーマ」では、彼らの魅力のひとつでもある緊迫感と緊張感が会場を引き締めていき、「神は天にいまし」では彼ら独特のホラー感覚が場内に広がっていく様を見た。
「今日がツアーファイナルとか関係ねえ! LAMP IN TERRENと俺たちとで最高の夜を作り出すだけ。忘れんなよ! ロックンロールに『初めまして』なんてねえんだ!!」と森下。テレンのファンでTHE PINBALLS初見のリスナーもくまなくロックンロールの魔法にかけてやるという誓いを場内に立てる。そして続いた「CRACK」も、上記の言葉を立証するかのようにこれまで以上に信憑性を帯びて放たれたのが印象的であった。
最初のMCでは、「東京、戻ってきました。ただいま! 旅に出て戻って来た実感がある。このThe Magic Kingdomという王国をより良い国にしたい。俺はかっこいいロックンロールスターになるんだ!!」と古川が場内に忠誠を煽る。そんななか、あえて夢を諦めた歌として「fall of the magic kingdom」が贈られた。弾んだビートながらズンズン進んでいくその音楽性に乗った《魔法使いが死んだ後の 世界に暮らしてる》のフレーズも印象的な同曲を経て、「だけど、このまま俺たちと進み続けようぜ!!」と言わんばかりに放たれた「蜂の巣のバラード」、そして「おまえらを笑わせにきました」(古川)と牧歌的でカウパンクのりの「重さのない虹」が場内に笑顔とバウンスの花を咲かせていった。またバックの神々しい白色ライトに照らされて歌われた、ミディアム調でウェッティな質感の「ばらの蕾」では、対照的に浸らせ聴かせ考えさせられる場面を育ませていった。
「俺は本当のロックンロールスターになることを約束する。夢は消えたわけじゃねえから」と古川。「賢くなんてなるんじゃねえ! 難しい顔をせずに、まずは始めてみよう!! まずはそこからだ!!」と「bad brain」を放射すれば、炸裂した中屋による炎のギターソロとともに再度冒険へと引き連れるべく、「WIZARD」が会場を起爆させていく。また「carnival come」では場内にサバトを作り出し、中屋が会場のリフトの上でギターソロをキメる恒例とも言える場面も。対して、「七転八倒のブルース」のブルースロックが会場を腰で踊らせたりバウンスさせたりの波状攻撃。あわせて「蝙蝠と聖レオンハルト」では、目まぐるしいストロボライトのなか、彼らのスリリングな奇譚が歌と演奏により綴られる場面と遭遇した。そして本編最後は彼らお得意のライジングサン感溢れる「片目のウィリー」が駆け抜けるようにスパーク。しっかりとロックンロールの魔法を信じさせてくれるに至った。
アンコール。まずはロックンロールリバイバルな「アダムの肋骨」が会場にジャンプの嵐を巻き起こせば、「毒蛇のロックンロール」では白熱さと蛇のようなうねりと粘着性、ぬめりが会場に集まった一人ひとりにまとわりついていった。
彼らはこの日、このロックンロールの魔法が解け切れず、しかしこの呪縛に頼らず自身の力のみで歩いていく決意と、それを確信に変えるまで引っ込めないとばかりに、ダブルアンコールにも応えてくれた。最後は「汗だくになり一緒に騒げて歌える曲を」と、「真夏のシューメイカー」が場内を夏へと引き戻していった。
「魔法は幻想」。そんなことは彼らも重々承知だ。だからこそ、ひと時でもそれを信じ、得たものを次へと向かう糧にしていく。ひと時でも魔法にかけられた我々は、今やその魅力を知っている。そして、それにすがらずとも同等の効力を得る方法をも……。ロックンロールに限らず、「その場の熱狂」という魔法もいつかは解ける。しかしそこに込められた魔力は、そんじょそこらでは消えたりしない。そのことをTHE PINBALLSはこのツアーを通して教えてくれた。あれから数日……自分にかけられた魔法はもうとっくに効力を失っている。しかし彼らのかけた、「明日に向けての」の魔力は未だ自分の中で熱く強く残り、生き続けている! Long Live Rock & Roll!!
【撮影:白石達也】
リリース情報
WIZARD
2019年11月06日
日本コロムビア
02.統治せよ支配せよ
03.bad brain
04.ばらの蕾
セットリスト
Return to The Magic Kingdom Tour
2019.12.20@渋谷CLUB QUATTRO
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●LAMP IN TERREN
- 01.ほむらの果て
- 02.Water Lily
- 03.花と詩人
- 04.New Clothes
- 05.ホワイトライクミー
- 06.オーバーフロー
- 07.地球儀
- 08.BABY STEP
- 01.統治せよ支配せよ
- 02.ママに捧ぐ
- 03.劇場支配人のテーマ
- 04.神は天にいまし
- 05.CRACK
- 06.fall of the magic kingdom
- 07.蜂の巣のバラード
- 08.重さのない虹
- 09.ばらの蕾
- 10.bad brain
- 11.WIZARD
- 12.carnival come
- 13.七転八倒のブルース
- 14.蝙蝠と聖レオンハルト
- 15.片目のウィリー
- 01.アダムの肋骨
- 02.毒蛇のロックンロール
- 01.真夏のシューメイカー
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●THE PINBALLS
お知らせ
●THE PINBALLS
AFOC x Shelter presents
ROCK’N’ROLL NEW SCHOOL
<’19-’20 Count Down Party!!! FINAL!>
2019/12/31(火) 東京・下北沢SHELTER
w) a flood of circle/THE MANRAY/SAMURAIMANZ GROOVE/NITRODAY/突然少年/DJ:片平実
みそフェス2020
2020/01/11(土) 愛知 新栄エリア複数会場
GIANT LEAP THE LIVE WEST vol.4
2020/01/15(水) 大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
U.F.O. CLUB24周年記念 キィ presents
ザ50回転ズ VS THE PINBALLS
2020/02/01(土) 東京 東高円寺U.F.O. CLUB
Wienners presents
BACK TO THE ANIMALS TOUR 2020
2020/02/09(日) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
●LAMP IN TERREN
ワンマンライブ「Bloom」
2020/01/13(月・祝) 東京 マイナビBLITZ赤坂
定期公演ワンマン「SEARCH #021」
2020/01/26(日) 東京 渋谷Star lounge
定期公演ワンマン「SEARCH #022」
2020/02/26(水) 東京 渋谷Star lounge
定期公演ワンマン「SEARCH #023」
2020/03/26(木) 東京 渋谷Star lounge
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。