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星野源、10周年を記念して開催された配信ライブ『Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”』

星野 源 | 2020.07.28

 本年ソロデビュー10周年を迎えた星野源。この10周年を記念し、配信ライブ『Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”』を行った。世界中に配信されたこのライブは、10万枚のチケットが販売されたそう。開演前から“#星野源10周年ライブ”が、Twitterトレンドの上位にランクイン。たくさんの歓喜の言葉がSNSを賑わせた。この配信ライブをいかにたくさんの人が待ち望んでいたかが、開演前からヒシヒシと伝わって来た。

 7月12日、日曜日。配信ライブの会場に選ばれたのは、東京・渋谷CLUB QUATTROだった。2010年6月にソロデビューした星野源が、初のワンマンライブを行ったのが、ちょうど10年前の同日、同場所。記念すべき場所で、記念すべきライブがスタートした。

 1曲目を飾ったのは「Pop Virus」。最初は星野の弾き語りだったが、途中からバンドサウンドが入って来る。♪刻む一拍の永遠を…… ♪ という歌詞に合わせて、カメラを指さす。ステージから、誰もいない客席に降りてくる。そこには、この日の星野の歌を支え、彩る、計7人のバンドメンバーが待っていた。全員が中央を向き、円を作っている。その円を最後に完成させたのは星野源だった。

 「こんばんは!星野源です。」と挨拶した後は、ジャズのアレンジが光るアップチューン「地獄でなぜ悪い」へ。星野は、独特のグルーヴに滑らかにライドオンして身体を揺らしながら歌う。会場が薄いブルーに染まり「湯気」。続く「ステップ」では、つま先で軽くステップを踏む星野の足元が打ちしだされた。ここで星野が、煽りのコールについて、バンドメンバーに“どうしようか?”と語り掛ける。東京公演なら、 “東京―!”とかだけど、今日はそうじゃない、なんて言えばいいの? みんなーとか? それは恥ずかしいなぁ……と、話は展開。バンドメンバーとのしばしのやりとりで煽り文句は“おのおの”でいくことに決定。

 「桜の森」へ。ピンクのライトが会場を包む。星野が叫んだ。「おのおのー!」ネット上では「イエーイ!」「おのおの、やったー!笑」と、観衆のレスポンスが溢れた。洗練されたポップサウンドに乗る文学的な言葉、哲学的な視点。それを極上のポップスとして響かせることが出来るのは、星野源というキャッチ―なアイコンがあるからに他ならない。
星野が綴った“桜の木”視点のおとぎ話は、最後のワンフレーズで見事にラブソングになった。

 6曲目「肌」。80年代、西海岸の影響を受けたアーバンポップスを彷彿させる爽やかなポップチューン。タイトなパーカッションのリズムも心地いい。続く「Ain’t Nobody Know」では、歌始まりからファルセットを披露。グルーヴィーな演奏が、星野流スウィートソウルをしっかりと支える。アンダーライトのみのライティングもエロかった。最新曲の「折り合い」では低音のビートを響かせる。6曲目~9曲目は、ボーカリスト星野源のスキルを見せるブロックだった。

 ここでMC。次に披露する楽曲を紹介していく。20代前半に書いた曲と前置きをした後「昔に作った曲をやると“こんなに長い間、音楽をやってきたんだな”と不思議な気持ちになります。」と心情を吐露したのは「老夫婦」という曲について語った時。続く「未来」については、東日本大震災が起こった2011年3月に書いた、あれから10年いろんなことがあった、あの頃は自分がこういう場所に立つとは思っていなかった---と当時を振り返った後、こう締め括った。
「いろいろ面白いなと思うけど、でも生きていくのは大変で。そんな中で、面白い瞬間とか楽しい瞬間とかをちゃんと自分で作って、ガシガシ生きていきたいなと思います。」
この後、弾き語りで「老夫婦」、バンドと一緒にバラード「未来」を歌った。

 星野が再びマイクをとる。「ありがとうございます。(皆さん)どんな環境で観てますか? 自宅? 仕事場? 移動中? いろんな観方があると思います。だからいろんな形で楽しんでいただきたい。」と、画面の向こうの観客たちに思いを馳せた後、この春、コロナ渦の自粛中に大きな話題となった「うちで踊ろう」について語り始めた。自身のインスタグラムにアップされた同曲は、ミュージシャンらはもちろん、世界中の様々な人達とコラボされ、SNSでどんどん広がっていった。星野が振り返る。
「日々、観ていて、僕が1番元気づけられたな、と。みんな本当にありがとうございました。今日はついに、初めて(バンドメンバーで)集合してやろうと思います。」と「うちで踊ろう」のバンドバージョンを世界初披露。途中で星野は「重なり合おう!」とメッセ―ジを送った。

 次の曲。ノリのいいビートが駆け抜けていく。アップチューン「プリン」。終わると一瞬の暗転。ドラムのカウント。ダンサブルなピアノが躍り出る。リズムに合わせ明滅するたくさんのライト。エネルギッシュな「Crazy Crazy」だ。前後左右に躍動する星野源。声量限界、ギリギリまで自分の歌声をもっていき、ロングトーンを聴かせた。

 ライブは後半戦へ。「自分の人生のギアが変わった3曲。」と「SUN」「恋」「Same Thing」を続けて披露。フィリーソウルな「SUN」では、ソウルフルな歌い回しを見せる。「恋」では、随所に “恋ダンス”を軽く挟み込むパフォーマンス。鑑賞しながらSNSをサーチしてみれば、「一緒に踊ってます!」「久々だけどばっちり覚えてた!」など、観客が“おのおの”で楽しんでいる様子だった。ハートフルに「Same Thing」を聴かせた後、星野が再び話し始めた。
「観てくれてありがとうございます!」と、この日、何度目かの感謝の気持ちを述べた後、自分の音楽人生を振り返っていく。中学時代は人間関係がうまくいかなくて、吐き出す音楽ばかり作っていた。いろんな音楽をガソリンのように摂取して、音楽を作ってきた。ソロになり、人に自分の歌を聴かせること、自分自身を見られることがすごく怖かった。ソロデューから10年間、いろんなことがあって、いろんな人との出会いがあった。自分が闘ったり、悩んだりしていく日々の中、いろんな音楽が出来た。それをたくさんの皆さんが聴いてくれているから、今の自分がある……と、真面目な顔で話した後「こういうライブだと、皆さんに直接言える。本当にありがとうございます。」と、再び感謝の気持ちを述べた。そしてこう締め括った。
「いろんな人がいて。こうやって御礼が言える人もいるけど、言えない人もいて。そういう、何かを伝えたいけど伝えられない人に、音楽ってどうやったら伝わるんだろう……そういうことをこれからも考えていきたいと思います。そしてそういう中でも、音楽で繋がって、いろんな場所で重なり続けていけたら最高です。」

 「Hello Song」へ。途中「一緒に歌って!」と画面越しに声をかける星野。曲が終わり、バンドメンバーを送り出すと、ギターを手にし、思いを言葉にした。
「今まで残して来た、絶対に消えない足跡をどんどん積んでいって、自分しか行けない場所、面白い場所に行きたいと思います。」と言った後、「10周年イヤーは、続きますので、これからも応援よろしくお願いします。」と結んだ。

 最後は弾き語りで「私」。歌詞が剥き出しになる。美しい言葉と、辛辣な言葉が織りなす独特の心象風景。矛盾する日常の残酷さにこれからも向き合いながら、でも音楽で繋がることを信じて、星野は楽曲を作っていくのだろう。

 最後の曲が終わると、画面にはエンドロールが流れた。その最後に“支えてくれる皆様”“観てくれている皆様”というクレジットが刻まれていた。

 10月21日には、10周年を記念した初のシングルBOX『Gen Hoshino Singles Box “GRATITUDE”』が発売される。最後のMCで星野はこう言った。
「今回のライブのタイトルも、秋に出るシングルBOXのタイトルも“GRATTITUDE”。感謝という意味です。本当にありがたいです。本当にありがとうございます。」

【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:西槇太一】

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リリース情報

折り合い

折り合い

2020年06月19日

Speedstar

01.折り合い

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セットリスト

Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”
2020.07.12

  1. 01.Pop Virus
  2. 02.地獄でなぜ悪い
  3. 03.湯気
  4. 04.ステップ
  5. 05.桜の森
  6. 06.肌
  7. 07.Ain’t Nobody Know
  8. 08.折り合い
  9. 09.老夫婦(弾き語り)
  10. 10.未来
  11. 11.うちで踊ろう
  12. 12.プリン
  13. 13.Crazy Crazy
  14. 14.SUN
  15. 15.恋
  16. 16.Same Thing
  17. 17.Hello Song
  18. 18.私(弾き語り)

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