星野源のニューシングルは、現在絶賛放送中の資生堂アネッサ2012CMソング
星野 源 | 2012.07.03
アルバム、ツアーともに好調な星野源のサードシングル「夢の外へ」は、イメージをガラリと変えたウルトラポップ。これまでの、アコギに乗せてとつとつと語るように歌うスタイルから、キャッチ―なストリングスがかっこいいポップなサウンドに大胆にチェンジしたのだ。が、それは意外ではあっても、とても似合っていて、かっこいい。まだまだその音楽の全貌を見せない星野だが、新しい彼のポップは“完全夏向き野外仕様”で、魅力の幅がぐっと広がった。
話題の映画『ぱいかじ南海作戦』のために書き下ろした「パロディ」など4曲を収録。独特の語り口を持つリリックがさらに輝きを増したニューシングルと、夏に向けての心境を聞いてみた。
- EMTG:5月13日の日比谷野音は楽しいライブだったね。お客さんも、ほとんどの人がビール飲んでたりして、リラックスしていた。
- 星野:ツアー・ファイナルの中野サンプラザ(2月20日)は、ツアーでやってきたことをちゃんと出そうと思ってやって。でも野音はみんなと一緒に作ろうっていうつもりで臨んだので、緊張しないだろうなと思ってたら、ステージに出る直前に緊張してる自分に気付きましたね(笑)。で、実際やってみたら、お客さんたちの楽しもう!って雰囲気がすごくて。だからすごく楽しめましたよ。
- EMTG:“星野源ライブ”はけっこう暗い歌が多いのに、野音は意外と似合ってて驚いた (笑)。そしてニューシングル「夢の外へ」は、すごく外に向いたポップな曲だね。
- 星野:2ndアルバム『エピソード』は、自分と向き合う厳しい歌作りを目指して、結果ストイックなものが出来上がったんです。それをやり切れた感触があったので、次に出したシングル「フィルム」は単純に体が動く、明るい曲をと思って作ったんだけど、みんなはそう思わなかったみたいで、「あれ?」と思って(笑)。そのとき、無意識に“自分の上限”を作っているのかなと気付いたんです。だったら次のシングルは、それを壊すような、ワクワクするものを作ろうと思ったんですよ。
- EMTG:それで「夢の外へ」はハデハデなんだ。
- 星野:そう、派手さがテーマです。もともと小学生の頃、好きで聴いてたのは、サザン、ユニコーン、B‘zでした。パッと聴いて派手で、ポップで、かっこよくて、面白くて、体が動く。聴きすぎて、もう自分の中の“血”になってるんじゃないかと(笑)。いいメロディなんだけど、よく聴くとコード進行が狂ってる。王道なのに、おかしい。今、思うと“究極のオルタナティブ”だなと思うんです。J-POPをバカにする人は多いけど、面白くてかっこいい音楽を、分け隔てなくどんどん聴こうと思ってました。
- EMTG:今回の「夢の外へ」は、その “血”が全開なんだね。
- 星野:はい。作ってて楽しかったです。サウンドもテーマも120%達成できたと思うし。出来上がったときに、みんな、拍手してくれました。なんていうか、“音楽のマジック”を感じましたよ。
- EMTG:特にストリングスがポップで気持ちいい。
- 星野:最初は、ミュージカルのイメージだったんですけど、小難しくなるような展開は止めて、なるべくシンプルにしました。あと、狂ってます(笑)。
- EMTG:メロディも、普通に聴いてると気付かないけど、途中で3拍子になったり。確かにクレイジーなポップだ! そして歌詞は?
- 星野:日焼け止めのCMなので、まず“外に出る”っていう歌 にしたかったんですよ。
- EMTG:それで「夢の外へ」なんだ。
- 星野:「夢で逢えたら」っていう歌がありますけど、自分に置き換えたときに、本当に“夢で逢えた”だけで満足なのか? 自分だったら、どうにかして夢の中から現実にまで引っ張り出したいぞと思ったんです。あと、自分がモノ作りの人間だから、自分の想像や妄想を外に出すことを後押しするような歌にしたいっていう気持ちもあって。ただ、意味が入り過ぎると、説教臭くなるので、♪意味の外へ連れてって♪っていうのは、自分に向かって歌ってます。
- EMTG:それっていいね(笑)。カップリングは?
- 星野:2曲目の「パロディ」は、細野(晴臣)さんへのオマージュとして作ってます。ポップスが好きで、でも声の質がポップス畑に属さないときに、自分なりにどうやるかっていう知恵というか。細野さんは、そういうオリジナルな魅力を教えてくれました。だから自分も、自分の道を切り捨てる必要はないと思えたんです。
- EMTG:3曲目「彼方」と4曲目「電波塔」は、アコギ主体のシンプルな歌だね。
- 星野:そうならないように気をつけて作ってるけど、「夢の外へ」で「星野源、どうしちゃったの?」って不安なる人もいるかもしれないので、「ああ、大丈夫」って思ってもらえるような曲です(笑)。1曲目で今までのイメージをぶち壊せたと思ってるけど、例えばそこからカメラをグーっと引くと地に足が着いてるっていうことがしたくて。
- EMTG:自分で壊しといて、自分で フォローするところが面白い(笑)。 ひとつ聞くけど、井上陽水に「夢の中へ」っていう曲があるんだけど・・・。
- 星野:そうなんですよね(笑)。でも、実は陽水さんのパロディじゃなくて。「夢で逢えたら」の方ですから。「夢の外へ」ってタイトルは最後に付けたんですけど、付けた後に陽水さんの「夢の中へ」を思い出して。自分で は全然意識してなかったんで、そのままにしました。
- EMTG:そして今年も夏フェスが待ってる。
- 星野:FUJI ROCK FES.、JOIN ALIVE等に出ます。去年は弾き語りスタイルであちこちでやって、すごくためになったんですけど、今年はバンドセットで回ります。奥田民生さんや斉藤和義さんと一緒(“ENDLESS SUMMER BREEZE” 9月2日)だったり、弾き語りでスガシカオさんとで初めて共演(“Slow Music Slow LIVE in 池上本門寺” 8月24日)したり、初めての先輩方が多いので楽しみです。
- EMTG:ポップな星野源を見に行きます! ありがとうございました。
【取材・文:平山雄一】
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