日本全国のライブハウスを繋いだ日本最大級のオンラインサーキットフェス「NIPPON CALLING 2020」レポート第2弾!
NIPPON CALLING 2020 | 2020.10.10
「NIPPON CALLINGは全てのライブバンドのために、全てのライブハウスのために、全てのオーディエンスのために、そして全てのスタッフのために先へ進むための一歩を歩み出すことができればと思います。」胸を揺さぶるメッセージが公開されたのは、6月1日のことだった。あれから約3ヵ月後、NIPPON CALLINGは無事開催された。
ライブハウスは現地からオンラインに場所を移し、音楽の発信地も東京から日本全国へ。2016年にスタートしたTOKYO CALLINGは、思いをそのままに新しい世界へ踏み出した。
【カネヨリマサル】
大阪2nd LINEの先陣を切ったのは、カネヨリマサルだ。オープニングの「BOOK COVER」から全身全霊の演奏をし、一気に会場を熱くする。感情をそのまま吐き出すようなエモーショナルな歌い方で、リスナーの心を強く揺さぶった。続く「恋人」では、言葉をこぼすようにポツリポツリ。少しばかり重たく発せられる歌詞は、自分のなかの引っかかりを懸命に歌へ変えているようだった。
ドラムの音がスカッと抜ける「はしる、夜」、瑞々しい輝きを詰めこんだ「ガールズユースとディサポイントメント」、不器用な生々しさが香る「今を詰めこんで」と、息もつかせぬ演奏が展開させる。「すごく大切な人がいて作った曲」と告げ始まったのは、「もしも」だ。ちとせみな(Gt/Vo)は目の奥で誰かをスーッと見つめ、その人に投げかけるように歌う。「ラクダ」では熱いライブを繰り広げ、トップバッターの大役を見事に果たした。
【セックスマシーン!!】
セックスマシーン!! は、「NIPPON CALLING改め、WORLD CALLING!」と高らかに宣言。ライブハウスを飛び出し、姫路の太陽公園からガムシャラなパフォーマンスを届けた。「ウッドストック2019」で封切ると、張りのある声をガンガンに響かせていく。<1㎜も迷いもない太陽>というフレーズに違わぬ日光がサンサンと降り注ぎ、バンドメンバーを物理的にも焼き尽くしていく。彼らの熱さに触発されたのか、1曲目にも関わらずコメント欄は“おーおおおー”と大合唱。セックスマシーン!! が持つ求心力の強さを感じさせた。
「サルでもわかるラブソング」では無観客ライブとは思えぬ本気のコール&レスポンスをし、「明日月曜」では底抜けに元気な演奏でオーディエンスを圧倒。なかでも度肝を抜いたのは、「君を失ってWOW」中で行われた森田剛史(Vo/Key)の会場全力ダッシュだろう。公園内を走り回りながら声の限り歌う姿は、何を見せられているのかわからないが、とにかくエモい。単純なことに一生懸命になる姿は、どうしようもなく視聴者の心を揺さぶる。「春への扉」、「新世界へ」と最後までフルパワーで、想いを届け続けたのだった。
【アイビーカラー】
柔らかい歌声で会場を包みこんだのは、アイビーカラーだ。「春を忘れても」の歌い始めと共に広がっていく歌声は爽やかで、初秋の軽やかさを感じさせる。押しつけがましくない音楽が、まるで水のように体に染みわたっていった。
身軽なピアノが「short hair」をテンポよく駆け抜けたかと思えば、「L」ではバンド全体でひとつのドラマを描いていく。たった3曲の間に、彼らがいかに切り札をたくさん持っているのかということを、まじまじと見せつけた。
「最後に花火を打ち上げたいなって思います」と告げ導かれたのは、「夏の終わり」。大切な人に語りかけるように、言葉はひとつひとつ丁寧に落とされ、情景を彩り豊かに描いていく。男女で重なる歌声が恋心を鮮明に描き、恋愛の切なさをより強調していた。曇りないサウンドで「夏空」を奏で、希望の光を刺したのだった。
【ヤユヨ】
ガレージサウンドのクールなギター、対照的な透明感のあるボーカル。最初の一音一声をもって、ヤユヨはオーディエンスをくぎづけにした。淡々と進んでいく「kimi_no_egao」は、さっぱりしているのにしっかりと熱がこもっている。灼熱やホットではない人肌のような温かさは、安心感をまとい心地よかった。「メアリーちゃん」では、声を荒げたり、巻き舌をしたり、ドスをきかせたり。様々な歌いかたで、違った一面を魅せていく。さまざまなアプローチを繰り出す彼女たちを見ていると、“等身大”というのはひとつの自分でい続けることではなく、さまざまな感情を飼いならすことなのではないかと思わされた。
その後も「いい日になりそう」「ユー!」「さよなら前夜」と、今のヤユヨを包み隠せず届けていく。ラストを飾ったのは、イントロがロマンチックな「七月」。今まで抑えていた感情があふれ出たかのように、リードギターも豊かに歌う。最後は各々が楽器をかき鳴らし、エモーショナルな時間を作りあげた。
【THE BOYS&GIRLS】
ひたすら真っ直ぐに言葉を投げかけ続けたのは、THE BOYS&GIRLSだ。1曲目の「ロックンロール」から、ワタナベシンゴ(Vo)は勢い抜群のフルスロットル。直接でなくても目を見て心の話はできるのだと、疑わぬパワーを感じさせた。爽快に音楽が進んでいく「少年と少女」、グラスハープのイントロが印象的な「24」と、命を燃やす演奏が続く。彼らのライブを観ていると、画面越しではなく会場の最前列で訴えかけられているような感覚に陥った。
続く「一炊の夢」では、より轟音にヒートアップ。詰めこまれたリリックは、ひとつひとつが凄まじい威力を持ち、言葉の弾丸としてリスナーの心を射抜いていく。<状況は変わっていくけれど、ここにいるよ>という歌詞は、こんな事態だからこそ色濃く響いた。勢いやまぬまま、ラストスパートをかけるかのように「札幌」「陽炎」へ。締めの「風花が吹いたら」で生々しい歌声を鳴らし、正直な心を届けつくしたのだった。
【ビレッジマンズストア】
ビレッジマンズストアは名古屋プライドを見せつけ、名古屋RAD HALLのラストを飾った。初っ端からかき鳴らされるギターに、これでもかと叫ぶボーカル。身を焦がすほどのヒリヒリとした熱量が、直接以上の威力でバシバシに伝わってくる。「夢の中ではない」でライブを封切ると、色気たっぷりに「People Get Lady」を鳴らし、どんどんビレッジワールドへ引きこんでいった。全力なのに、ガムシャラなのに、勢いもあるのに、抜群の安定感。さすが活動歴15年を超えるバンド、本質的に“届ける”とはどういうことなのか理解しているのだろう。攻めのパフォーマンスなのに、一瞬たりともひやひやする感覚を味わせない。その後も「ビレッジマンズ」「すれちがいのワンダー」「アダルト」と、彼らの美学を鳴らし続ける。コメント欄のオーディエンスと共に「サーチライト」を作り上げると、「以上、世界代表。ビレッジマンズストアでした!」と締めくくった。
しかし、その後も歓声は鳴りやまず、ほどなくしてアンコールへ。「お前に会えるのが楽しみでしょうがないバンドがいることを覚えておいてほしい」胸中を告げ、最後の最後まで全力のパフォーマンス。「眠れぬ夜は自分のせい」「Don’t trust U20」とイケてるロックンロールをかき鳴らし、ステージを後にした。
思うようにライブへ行けなくなって、半年以上が経過した。正直なところ、ライブハウスやアーティスト、オーディエンスをめぐる状況が好転したかはわからない。それでもライブハウスで音楽はなり続けるのだと、希望の光はまだ消えていないのだ。強く実感できたNIPPON CALLING1日目となった。
【取材・文:坂井彩花】
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NIPPON CALLING 2020
セットリスト
NIPPON CALLING 2020
2020.09.21
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<カネヨリマサル>
- 01.BOOK COVER
- 02.恋人
- 03.はしる、夜
- 04.ガールズユースとディサポイントメント
- 05.今を詰めこんで
- 06.もしも
- 07.ラクダ <セックスマシーン!!>
- 01.ウッドストック2019
- 02.サルでもわかるラブソング
- 03.明日月曜
- 04.君を失ってWOW
- 05.春への扉
- 06.新世界へ <アイビーカラー>
- 01.春を忘れても
- 02.short hair
- 03.L
- 04.夏の終わり
- 05.夏空 <ヤユヨ>
- 01.kimi_no_egao
- 02.メアリーちゃん
- 03.いい日になりそう
- 04.ユー!
- 05.さよなら前夜
- 06.七月 <THE BOYS&GIRLS>
- 01.ロックンロール
- 02.少年と少女
- 03.24
- 04.一炊の夢
- 05.札幌
- 06.陽炎
- 07.風花が吹いたら <ビレッジマンズストア>
- 01.夢の中ではない
- 02People Get Lady
- 03.ビレッジマンズ
- 04.すれちがいのワンダー
- 05.アダルト
- 06.サーチライト 【ENCORE】
- EN1.眠れぬ夜は自分のせい
- EN2. Don’t trust U2