HY、『HY SKY Fes 2014~僕らはいつも繋がっている~』開催!

HY | 2014.12.01

『HY SKY Fes 2014~僕らはいつも繋がっている~』
11月29日(土)うるま市与那城多目的球技場野外ステージ

 沖縄県うるま市にある地名“東屋慶名(ひがしやけな)”の英語の頭文字から「HY」と命名するほど故郷を愛するHYが、2011年12月に地元うるま市で初めて開催したフェスティバルが『HY SKY Fes 2011~僕らはいつも繋がっている~』だった。
「空はどこまでも繋がっている。どんなに離れても空を見上げれば僕たちはいつも繋がっているんだと思える。そんな空の下でひとつになれるフェスにしたいという想いで『SKY Fes』と名づけました」と、当時ヴォーカルの新里英之は話していた。
 2006年から行っている「HeartY活動」などを通して“次の世代の子供たちに何を残せるのか”を考えてきたHYがこのフェスに託した想いとは…沖縄の美しい自然をどう残していくのかということ、子供たちの夢をあと押ししてあげること、そして受け継がれてきた沖縄の伝統芸能の大切さを多くの人たちに伝えていくこと…。
 このテーマのもとで2回目となる『HY SKY Fes 2014~僕らはいつも繋がっている~』が、11月29日(土)、うるま市与那城多目的球技場野外ステージで開催された。

 開演前から集まっている人たちの笑顔からは、この日を楽しみに待っていたことがうかがえる。友達同士も、恋人たちも、家族連れも、幼子と手を繋いで会場に向かうおじいさんもいる。あらためて『HY SKY Fes』は地域密着参加型のフェスだと思った。
「WIND STAGE」では、今回のSKY Fesのオリジナルフラッグの制作が行われている。筆文字あーとの田場珠翠氏が書した「SKY Fes」の文字のまわりに、来場した人たちが思い思いにメッセージを書き記して完成するオリジナルフラッグだ。第1回目の時に、誰でも自由に言葉や絵を書いて作り上げたフラッグは、今もHYの宝物のひとつになっている。

 13時。芝生エリアを中心に扇状に広がる「SEA STAGE」。司会者の呼び込みで最初に登場したのは、HY。「お集りのみなさん、ハイサイ! 想いをこめてこの曲を歌います」と言ってアコースティックセッションで歌われたのが「宝物」だった。
〈君に会えてよかった…変わらぬ夢叶えようね 一緒に歩いていくんだ この先も〉
 一緒に夢を叶えていこう、という歌のメッセージがフェスのテーマにも重なるこの曲から『SKY Fes』は始まった。
「今日1日、みなさんにとって素敵な日にしていきましょうね」の言葉でステージを去った後、二百数十年前から受け継がれている伝統文化「天願獅子舞」が披露された。HYメンバー宮里悠平が、三線奏者として出演。獅子が玉をくわえて仁王立ちする獅子の姿に会場から歓声が湧きあがった。HYの他のメンバーもステージそでで興味深く見守っている。その姿を見て、「驚きがいっぱいあると思います。長く形を変えずに受け継がれている歴史ある文化や芸能は真剣に見入ってしまう力を持っていますから」とフェスの前に話してくれた新里の言葉を思いだした。
 演奏後、宮里は「獅子舞を実際観るのは初めてだったので感激しました。演奏に夢中でほとんど観れなかったけど(笑)」と話していた。

 続いて、仲宗根と名嘉(二人はいとこ同士)の母校「うるま市立川崎小学校」の6年生全員が参加して合唱を披露。仲宗根と名嘉が小学校に通い、一緒に練習する中で、「命をテーマにした2曲にしようと決まった」(名嘉)という。曲の間に、生徒たちが戦争の痛ましさや惨さを次々言葉にして会場に投げかける。
〈私たちは戦争をしらない でもおじいさんやおばあさんたちは知っている 忘れたいけど忘れられない すべてを奪い去った戦争を…今私たちにできること 沖縄戦の悲しさ 悲劇 虚しさを伝えていくこと おじいやおばあが守ってきた沖縄を守っていくこと 今世界のみんなができること それは自然を愛すること 命を大切にすること 命どぅ宝(ぬちどぅたから=沖縄方言で、命こそ宝、の意味) 命の手を繋ごう 私たちの未来へ!〉
 唯一地上戦を経験した沖縄だからこそ伝えていかなければいけない事実や想いを、祖父母から両親へ、そして子供たちへ受け継いでいこうという意識を、生徒たちの力強い言葉から感じた。
「次は先輩たちと歌いたいと思います」との言葉で名嘉らが登場し、HYの「時をこえ」が歌われる。
 歌に合わせて男子生徒5人がパーランクー(小太鼓)を打ち鳴らしてエイサーを踊る。エイサーも沖縄のお盆の時期に先祖の霊を送迎するために踊る伝統芸能。沖縄の小学校では、エイサー踊りの授業は恒例のことだ。

 続いてステージに登場したのは、石垣島出身の三線奏者・唄者の宜保和也。以前から、新里が「『琉花の種』はデージ(沖縄方言で、非常に、の意味)いい曲」と注目していたアーティストだ。
「沖縄の歌の花の種を世界中で蒔いて、それぞれの国に沖縄の歌の花を咲かせてほしいなという想いをこめました」宜保と話す「琉花の種」を含む3曲を歌う。伸びやかな歌声が雨雲に覆われた灰色の空を切り裂くように昇っていく。はじめはステージそでで聴いていた新里だが、「琉花の種」の時は会場中央まで歩いて行き、真剣に聴き入っている姿が印象に残った。

 次は、台湾とアメリカのハーフ、ヴォーカル&ギターのトーマスを中心にした沖縄出身の4人組「LiM」。今回のSKY Fesに出演するバンドなどを一般募集した中からHYが厳選したパワーポップバンドだ。バンド名の「LiM」は、「Life is Music」。音を楽しむこと、人生は音楽と共にあるという意志をこめて2011年4月に結成された。1曲目からパワー全開。ポップなメロディーとパワフルな演奏で観客は手をふり上げたりジャンプをしたり。最後にはステージと会場がコール&レスポンスでおおいに盛り上がった。ライブの前に新里が話してくれた「これからもっといいバンドになると思う」という意味がわかったライブだった。

 続いて、「浦添市立浦西中学校吹奏楽部」の演奏。同中学校の吹奏楽部に出演を依頼したのは、新里の中学時代に音楽の楽しさを教えてもらった恩師が、現在同校で吹奏楽部を指導しているから。新里と許田信介が何度も学校に足を運び、一緒に練習した「AM 11:00」を披露した。演奏終了後、許田が「ここにくるまでにすごくドラマがあったんです。だから終わった時に目頭が熱くなりました」と話したように、練習の途中で部員の脱退があったり、挫けそうになる瞬間が何度もある中でなんとかこの日を迎えることができた苦難のストーリーがあったのだという。 「音楽は心が繋がり合えると思います」と言って女子部員が涙を流した。ひとつの夢、目標に向かって一緒に進んでいくことの難しさと、成しとげた時の感動を受けた演奏だった。

 続いては、うるま市の中高生たちによって15年間受け継がれてきた現代版組踊「肝高の阿麻和利」。うるま市勝連にある世界遺産・勝連城の10代目城主「阿麻和利」の半生を描いた沖縄版ミュージカルで琉球の歴史がひもとかれる。

 続いて、仲宗根と名嘉が育ったうるま市栄野比で70年近く伝承されている「栄野比区町民ダンス」に会場が釘づけになった。沖縄県民もほとんど見るのは初めて、という町民ダンス。全身を黒く塗り、頭と腰にヤシの葉を巻いた南洋の原住民風の装いで独特のダンスを披露する。「みんな口を開けて見入ると思いますよ(笑)」(新里)の言葉通り、会場は大爆笑だ。先ほど出演した川崎小学校の男子生徒たちも会場で一緒になって踊っている。地区は違っていても、生徒たちの踊る姿を見ていると、伝統芸能は確実に受け継がれていると感じた。そして島民ダンスにはオチがあった。なんと島民の中に、全身黒の名嘉がいたのだ。

 場所を「SKY STAGE」に移して、宮里の地元「平敷屋エイサー」が舞いを見せる。
「毎年お盆が近づくと、自分はエイサー太鼓の音で気持ちがチムドンドン(沖縄用言で、わくわくする、の意味)するんですよ」という宮里。高齢の保存会メンバーによる平敷屋エイサーは、若者主体の他の迫力ある勇壮なエイサーにくらべて、厳かに霊を迎え送る、落ちついた力強さを感じる舞いだ。獅子舞や島民ダンスにしても、沖縄の伝統芸能を目の前で観ることができる貴重な体験だった。

 そしてこの後、いよいよ「SEA STAGE」でHYのライブの時間になった。ステージ後方には、みんなで作ったSKY Fesのフラッグが飾られている。HYにとって、ファンや地元市民にとって、この日一緒に時間を共有した人たちの想いが書き込まれた宝物がまたひとつ新たに加わった。
 HYのライブが始まる頃、それまで雲に覆われていた空が開けて星が瞬きだした。ステージ正面の空には半分欠けた月も輝いている。
「SKY Fes 2014、ここでたくさんの夢が生まれる場所を作ろうと思っていました。そして今日たくさんの夢が生まれています。素敵な想い出をみんなで残していこうね」(新里)の言葉の後、〈支えてくれたみんなの言葉が 心の中で勇気へと変わってゆく〉と歌われる「この物語」からライブは始まった。

 続いて、まるで海風にそよぐ木の葉のように会場の人たちの上げた両手が左右に揺れた「ホワイトビーチ」。
「想いを一緒にしてみんなで歌いましょう」と新里。会場のひとりひとりの歌声が重なりあい、ひとつになっていく。会場を埋めた大勢の人たちと同じ空間を共有した幸せな時間。
「Have a ice day」に続いて、「地元でフェスができること光栄です。今日は音楽を通して、喜び、楽しみを分かち合いながら素敵な夜にしていたらいいなと思っています」と話した新里。次は12月3日発売されるHY初のラブソング・アルバム『LOVER』に収録の曲だと告げる。曲名は「NIJIKAN TRIP」。沖縄テレビ『HYゴーゴーゴーヤー』の番組内で、今帰仁村(沖縄北部)を旅しながら出会う人の家に泊まるという企画がきっかけで名嘉が書き上げた曲だ。
「俊のおうちから今帰仁まで車で2時間かかるから“NIJIKAN TRIP(2時間トリップ)”という曲名にしたみたい。あとで“NIJIKAN”を反対から読んだら“NAKIJIN(今帰仁)”だと気づいたという、奇跡のような偶然もあった」と仲宗根が言っていた。会場との〈Love Love Love〉のかけ合いも楽しい曲だった。

 続いて、「久しぶりに歌うバラードで。叶わない切ない恋を歌った曲」(仲宗根)と前置きした後で歌われたのが「NAO」。通算4枚目のアルバム『Confidence』に収められていた珠玉のバラードだ。会場がゆっくりと静かに聴き入る空気になる。仲宗根の歌声が聴衆の心を引き寄せていく。
 そして、「人生の中でこの人がいたから今の自分はいる。そういう大切な人を想って聴いてください」(新里)と言って歌ったのが、『LOVER』に収録の新曲「あなたを想う風」。会場を囲むように立つ、今日の出演者が手書きで作った旗を海風が優しく揺れている。
「会いたい」の後は、「トゥータン」へ。「阿麻和利」の男女ダンサーとコラボしたスペシャルバージョンで披露された。

 次は、「ガジュマルビート」。「みなさんの夢を応援するからね。それぞれの夢に向かって頑張っていきましょう」と言った新里は、曲の途中で会場に下りて、場内を一周するハプニングもあった。
 そしてラストの曲が、「エール」。ラテンリズムに合わせて、たくさんのタオルが振られる。〈あなたと踏み出す一歩で きっと未来が繋がっていく〉と歌ってから、〈早くおいでよ HYのところへ〉と歌詞も変えて歌う。みんなで一緒なら、夢に向かって飛べると信じていこうじゃないか…。夢を持つこと、それを実現するために努力することがもっと大事なこと。自分たちを信じて沖縄・北谷のストリートでライブ活動を始めて、アリーナクラスでのワンマンライブを成功させてきたHYだからこそ、その言葉や歌に説得力がある。
 アンコールは「帰る場所」だった。
 今日参加した全員を、さらに琉球國祭り太鼓の面々を会場に呼び込み演奏が始まる。
「自分の生まれ育った故郷を思い浮かべて聴いてください」(新里)
 会場に集った人たちと参加メンバーによる歌とエイサー太鼓が会場に響きわたる。帰る場所があるのは幸せなことだ。家族の待つ家、大切な人が待つ街、そして生まれ育った故郷。HYは最後に、自分にとっての大切な場所について歌う。今日参加した子供たちにも、たくさんの夢を持って歩んでいってほしい。SKY Fesがそのきっかけになれば、というHYの願いもこめて…。

 すべてが終わった時、ステージの上から新里は最後にこう言った。
「今日、一生懸命輝いていた自分のことを忘れないでください!」
 それは参加者のみんなへ、会場に来た人たちへ、そしてHY自身へ向けた言葉のようでもあった。

【取材・文:伊藤博伸】
【撮影:大湾朝太郎】


リリース情報

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発売日: 2014年12月03日

価格: ¥ 3,600(本体)+税

レーベル: ユニバーサルミュージック

収録曲

1. あなたを想う風
2. パタパタ
3. Remember You
4. 木漏れ日かざるこの道を
5. NIJIKAN TRIP
6. Last Night
7. 結

グッズ:オリジナルペア手袋(スマートフォン対応)
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