21年目を迎えたフジロック、never young beachが初のメインステージに登場!ほか注目の5組をレポート!

FUJI ROCK FESTIVAL’17 | 2017.08.10

21年目を迎えたフジロック、never young beachが初のメインステージに登場!ほか注目の5組をレポート!


毎年、7月末に新潟県・苗場スキー場で行われるFUJIROCK FESTIVAL。昨年20周年のアニバーサリー・イヤーを無事に成功させ、21年目を迎えたその様子を今年もレポート!施設の話でいえば、20年共に歩んできたワールド・レストランが今年より廃止。新しく、ブルー・ギャラクシーというDJブース付き飲食エリアが生まれるなど、今年もわずかに変化している。アーティストとしては、97年の第1回に出演し、昨年は出演できなかったエイフェックス・ツインが登場。ほかにも小沢健二、コーネリアスなど、数え切れないほどの注目アーティストがいるが、今回はオススメの5組をピックアップしてレポートを掲載する。


●1日目(7/28)
THE BACK HORN


【撮影:ⒸYasuyuki Kasagi】



初日のホワイトステージで印象的だったのはTHE BACK HORN。彼らの開演少し前から雨が降り出し、ステージに登場した山田将司(vo)は「雨が…」嘆いている様子。しかしいざ演奏が始まると、雨を味方につけた演奏で観客を圧倒した。「ブラックホールバースデイ」から始まり、「戦う君よ」へ。山田の力強い歌声と苗場の自然、そして大粒の雨がお互いを引き立てるように演出し合っていた。「美しい名前」の頃には雨があがり、そのタイミングを待っていたかのように「コバルトブルー」「刃」「シンフォニア」と人気ナンバーを炸裂させ、会場のテンションが上がりっぱなしのままラストへ。来年の結成20周年に向けた“助走”にふさわしい、ドラマチックなステージだった。

●2日目(7/29)
Cocco


【撮影:ⒸMasanori Naruse】



今年デビュー20周年を迎え、ベスト・アルバムをリリースしたCoccoが、フジロックに初出場。小雨の降るグリーンステージに現れた彼女は、白いドレス姿で、小さな花束を持っていた。やがて「けもの道」が始まると、細い手足をダイナミックに使いながら、音楽と自身の歌声を通わせていく。さらに続くのは「強く儚い者たち」、「Raining」、「焼け野が原」など名曲揃い。彼女の20年を象徴するかのようなオールタイム的セットリストとなった。ステージ演出やMCは控えめだが、彼女の表情、動き、そして歌声のすべてが演出となり、多くの観客の心を揺さぶっていた。

never young beach


【撮影:ⒸMasanori Naruse】



初のメインステージ出演となったnever young beach。レッドマーキーのテントの外、ドラゴンドラの受付からブルー・ギャラクシーの間の通路ぐらいまでびっしりと人が集まり、入場規制と言えるレベルに達していた。まずは「愛しているよフジロック!」と安部勇磨(vo,gt)の挨拶から「明るい未来」へ。あの軽やかなイントロはたちまちフロアを涼ませ、みな体を揺らし始める。筆者が彼らを見たのは昨年の秋が最後だったが、話題性に比例して演奏力もぐっと上がっているのが印象的だった。ギターのふたり(松島皓、阿南智史)はより艶を増した音となったし、安部のボーカルも独特の渋みが効いている。その後も「どうでもいいけど」「fam fam」など12曲を披露。レッドマーキーは混雑しているものの、終始ハッピーな雰囲気だった。この時間の演奏に加え、最終日夜の苗場食堂でも「ヤシの木フラミンゴ」として登場するなど、サービス精神もいっぱいな彼ら。来年以降も引き続き、フジロッカーを楽しませてくれそうだ。

Temples


この日レッドマーキーのトリを務めたのはTemples。タイムテーブル上、小沢健二とかぶっている中でも、多くの観客が押し寄せていた。今年リリースした新作『Volcano』を中心に聴かせながらも、「Colours To Life」「Shelter Song」といった定番のナンバーも安定感をもって響かせていた。「I Wanna Be Your Mirror」のきらびやかなイントロは会場を神秘的に照らし、「A Question Isn’t Answered」は大合唱&クラップが会場の一体感を生んだ。進化への伸びしろを残しつつも、満足度の高いパフォーマンス。彼らの成長の経過を確認できるステージだった。

●3日目(7/30)
Bjork



最終日のヘッドライナーを務めたのはビョーク。フジロックは2013年以来の出演だが、その後は日本科学未来館でのライヴにVR展示、DJでの出演など、日本での活動も記憶に新しい。とくにVR展示??『Bj?rk Digital ―音楽のVR・18日間の実験』では、2015年のアルバム『Vulnicura』の楽曲をベースに、新しい音楽と映像のあり方を提案していた。今回のライヴもそのような演出が期待できるところだ。

ステージ両サイドにはオーケストラ(室屋光一郎ストリングス)を率いて、中央奥にアルカがスタンバイ、そして大歓声の中ビョークが登場する。フリルが際立つビビットなピンク色の衣装、頭には薄い膜のような仮面。前回の衣装と比べるとずいぶんとシンプルだ。「Stonemilker」がはじまると、ぽつりぽつりと独白するかのような歌い始めるビョーク。スクリーンには360°撮影された同曲のプロモーションビデオが流れる。その後の「lion song」、中盤の「Notget」などでも大画面に映されるビデオの映像技術と、生演奏がコラボレーション。VRではないものの、その迫力には圧倒される。また、アルカがアレンジを効かせたトラックもあり、息のあったコラボレーションを実感できた。

その後「Come To Me」「joga」と旧曲が続き、映像モニターはやがてステージのビョークを追うようになる。前回のフジでは演出が優先だったからか、全くビョークの姿が映らなかったが、今回は写しっぱなしかと思うくらいだ。なぜなら飲み物を飲む姿、靴に引っかかった衣装を直すところなど、ビョークの“素”を見せているかのような映し方なのだ。『Vulnicura』の内容が配偶者との別離という、パーソナルなものだっただけに、ここまで「ビョークという女性」に接近しているモニターのアプローチには、必然性を感じざるを得ない。

そして、なんといっても素晴らしかったのはラストの「Hyperballad」。ストリングス、アルカのアレンジ、ビョークの歌声が絶妙に絡み合う。空には花火、ステージには火花が交互に上がり、今まで見たことのないハイパー・バラッドが完成。大スケールで演奏される待望の1曲に、思わず涙ぐむ観客も。ほどよい余韻を残したまま、彼女のステージはフィナーレを迎えた。

今回のビョークは、メッセージ性の強い『Vulnicura』の楽曲を演出代わりに使用した、シンプルなステージだった。同時に、アーティストとしての彼女、ひとりの女性としての彼女の両面を見られる貴重な機会だったと思う。今回の「Hyperballad」がそうであったように、この先もきっと、見たこともない演奏や技術でまた観客を驚かせてくれるだろう。先日、新しいアルバムのリリースも発表されるなど、さらなる活躍が期待できる。


【取材・文:梶原 綾乃】






FUJI ROCK FESTIVAL ’17

2017年7月28日(金)29日(土)30日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com

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