レビュー
セカイイチ | 2011.01.20
今まで以上に、未来に向けて永劫に鳴り響くべき楽曲が揃ったセカイイチのニューアルバム『folklore』は、これまでを糧に、今をキチンと把握し、これからやこの先が力強く鳴らされ、歌われている作品となった。
凄く彼ららしさとポピュラリティが両立した感のある今作は、<セカイイチ>と<ポピュラリティ>という、かつては<セカイイチらしさ>を損なう懸念から回避されていたものが、違った方法論ながら真っ向から向き合い、立ち向かい制作。結果、見事その両立が成された作品となっている。
セカイイチはよくボーカルでソングライターの岩崎の歌声や歌世界ばかりが取り沙汰される。しかし、彼のその個性が活き、その楽曲に生命力を注入しているのは、ベースの泉とドラムの吉澤のグルーヴ。それらがシッカリしているからこそ、中内も表情様々なギターを鳴らし、泳がせ、岩崎もナイーブから豪気まで、幅広い歌表現ができる。そして、今作では岩崎の歌声も今まで以上に幅を持ち、声の出し方や表現の仕方までもキチンと考えられ歌われている印象も受けた。なんというか…強靭性を増しつつ、力強さや生命力も今まで以上、しかも、各曲が自信たっぷりにイキイキノビノビと鳴らされ、放たれ、歌われているのだ。まさにこれぞ、<彼らの第2の1stアルバムだ!!>と僕は思う。ひいては前作アルバムタイトルの『セカイイチ』は、こちらの方に付けても良かったのでは、とも(笑)。
エモーショナルモータウンとでも称したい「Touch My Head」、ダイナミズムと開放感溢れるサウンドの上、挫折と希望、つながりと個、分かりあいたい、分かち合いたい気持ちが力強く歌われる「Step On」、La'sを彷彿させるきらびやかなギターにドリーミングな歌詞や未来に夢を馳せさせる。過去の自分に向けて歌われる「Kids Are Alright」、鍵盤とストリングスもフィーチャー、まどろみから覚め、再び歩き出す為の歌と見受けた「わずか」、高揚感溢れるサウンドの上、アジテートされる言葉たちが聴き手を刺し、鼓舞する「folklore」、オルガンのグルーヴィーなサウンドの上、岩崎のメローな歌とSUIKAのタカツキとATOMのラップも絡ませた、既発曲「あかり」の1フレーズの登場にも二ヤリな「Daylight」、彼ら初の試みとなったoasis「Married With Children」(誰だ?「Step On」の頭がoasisの「Wonderwall」に似てるって言うのは(笑))のカバー、高揚感溢れるニューウェーブ・ディスコな「猿の惑星」、ダウンピッキングによる激走感がたまらない「グレース・ケリー」、ダイナミックなサウンドの上、想いと感情が過去や未来へと広がっていく「ハローグッバイ」、一般公募の女性をディレクター&コーラスに迎え、優しくまどろみを与えてくれるかのように響く、安堵感たっぷりの「眠りにつく、その前に」等が、優しく、温かく、力強く、僕たちを迎えてくれる。
アーティストは気持ち次第で、何枚も<心の1stアルバム>を作る特権を持っている。数年後振り返って、彼らがこのアルバムを誇らしげに、<これが2枚目の1stアルバムだった!>と高々と掲げている姿が、勝手ながら今作を聴き返す度に浮かんでくる。
【 文:池田スカオ和宏 】
リリース情報
folklore
発売日: 2011年01月19日
価格: ¥ 2,858(本体)+税
レーベル: tearbridge
収録曲
1. Touch My Head
2. Step On
3. Kids Are Alright
4. わずか
5. 考えすぎの僕がいる
6. folklore
7. Daylight
8. 真冬の陽炎
9. Married With Children
10. 猿の惑星
11. グレース・ケリー
12. タイムマシーン
13. ハローグッバイ
14. 眠りにつく、その前に (BONUS TRACK)