レビュー
スキマスイッチ | 2011.01.28
奇しくもM-1.2.共に「灯」を彷彿させるワードが出てくるスキマスイッチのニューシングル「さいごのひ」。タイトル曲を聴き、意味を手繰るに、自分的にこれを漢字を交え表わすと「最後の日」でも「最後の火」でもなく、やはり「最後の灯」となる。
この灯とはもちろん人間の命、そして魂。その灯は、自信なげに、頼りなげに、ぼんやりゆらゆらと揺れている。しかし、その光は確か。閃光ほどのインパクトはないが、その分、いつまでも温かく心に灯ったまま、なかなか離れてくれない。そして、それが時には例えようのないほど愛おしく想い返させるのだ。
まずは、タイトル曲の「さいごのひ」から。ピアノの音色から大橋の優しげな歌声と、シンプルに始まりながらも、ストリングスやバンドサウンドも絡まり、とてつもなく壮大に広がっていく同曲。いや、それはサウンドに限ったことではない。歌われるテーマも、歌が進むに連れ、グングンと広がり、ズンズンと深部まで深まっていく。出会えたことの奇跡やディスティニーを歌いながらも、その謳歌性の高さから、失くした、失った際には、その残像も強く、その光をいつまでも心の支えに歩いていくような、何とも言えない愛しさが最後には身体全体を包むナンバーだ。
傍らに在る時よりも、失った後の方が、その存在の尊さや愛しさを感じることを思い起させる同曲。自身の今までの皮を脱ぎ、あえて回りや従来のイメージをはばからず、赤裸々に思っていることを思ったとおり伝えたかのようなダイレクト性がこれまでとは違い、なんだか鬼気迫るものを生み、ひいてはそれが従来の彼らの作品には無かった「壮絶さ」を加えている。
対照的に、M-2にはウチコミと生楽器の融合で、あえてシンプル、あえて淡々とした歌表情で伝えられる「電話キ」を収録。資料によると、インディーズ時代の楽曲のリメイクだという。また、M-3には、新機軸とも言える、常田のピアノに乗せ、大橋の親友との想い出を振り返る、出せなかった手紙や伝えられなかった想いを綴った作文のような、ストーリーテリング性溢れるポエトリーリーディングタッチの「Human relations」を収録。幼馴染との一緒にいたり、離れたりのこれまでを振り返りながらも、「要は人間として成長する時に、俺たちは離れているんだ」との結びには、多くの人が自分の場合を投影することだろう。
3編共々違ったタイプながら、それぞれに今まで以上の人と人、命と命の繋がりや結びつきを感じてならない今作。さりげないものや日常回りにある色々なものに支えられ、自分がここにいると、このシングルは3編を通して我々に気づかせてくれる。
【 文:池田スカオ和宏 】