レビュー
MIYAVI | 2011.02.04
雅-MIYAVI-のライブを観たことのある人なら、彼のギター1本から生み出される、その超高速なタップとスラッピングを交えた超技巧なギタープレイに一度は驚いたのではないだろうか?ブルージーでいてファンキー、そのくせアヴァンギャルドながらポップ。しかも、それが目にも止まらぬ高速で、キチンとした音楽として成立せしめてしまう雅-MIYAVI-のギタープレイ。
彼のライブの多くは、ベースレスでシンプルなドラムキット(ハイハット、スネア、バスドラ、シンバル)のみ。しかし、その必要最小限、いや、必要最小限以下の編成ながら、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの4ピースバンドに匹敵するぐらいのサウンドの充実感と、キチンとしたバンドサウンドを成立させている。
そう、彼がV-ROCKシーンに熱狂的なファンを持ちながらも、キチンと硬派なロックバンドやミュージシャン、オルタナ系のミュージシャンたちからもしっかりとシンパシ―を持たれているのも、やはり彼ならではの超絶なギタープレイによるウムを言わせぬ説得力を持っているからに他ならない。
そんな彼が最新アルバム『WHAT'S MY NAME?』より企画シングル「WHAT'S MY NAME? e.p.」を発表した。ベースレスのタイトル曲と、それを基に日本屈指のオルタナ・ベーシストたちがこぞって参加した今回のEP。BOBOのカンカンに張ったスネアと、16分で刻むハイハットによる、黒くうねるファンキーでダンサブルなビートと、雅-MIYAVI-の超絶スラッピング・ファンク・ギターと共に、ストレイテナー/Nothing's Carved In Stone/EORの日向秀和、RIZEのKenKen、クールビューティな女性ベーシストTOKIE、沖縄のミクスチャーバンド385(さんはちご)のMIYA、ZAZEN BOYSの吉田一郎、ティーンネイジ・ピートバンドOKAMOTO'Sのハマ・オカモトというツワモノベーシストたちがガチで参加している。
このフューチャリング・ベーシストという前代未聞のコラボレーションとなった今作は、ガリンガリンで硬質、ジャンクでビポビボいいまくりの吉田のベース、低く、太くグル―ヴィーにうごめくハマ・オカモトのベース、中間的低音を活かし、アヴァンギャルドにガチる日向のベース、チューニングをわざとダルンダルンにし、ブルンブルンにカマすMIYAのベース、チェロのごとき弓を活かしながらも歪んだアップライトベースな鳴りもクールなTOKIEのベース、アナログシンセベースと、ファンキーでチョッパー全開のベースプレイを聴かせるKenKenのベースと、個性溢れるベーシストたちとの融合を見せ、その度に楽曲に違った表情を見せる。
一見、バトルのように見えて、実はどの曲も融合している様は、さすが名うてのベーシストたちだけのことはある。加え、どの曲も楽曲に漂う緊張感がたまらない。
これを聴いて、尚更感じたこと、それは、やはり彼にはそんなにベースは必要無いってこと。もちろん、このEPは素晴らしい。申し分ない。しかし、これからも雅-MIYAVI-はベースレスで是非行って欲しい。逆に今作を聴いてそれを強く思った。
【 文:池田スカオ和宏 】