レビュー
DEEP | 2011.02.17
「深い愛」をテーマにして13編のラブストーリーを綴ってみせたのが、DEEPのニューアルバム『LOVE STORY』だ。
もちろん一言でラブストーリーといっても、片思いもあれば、失恋だってあるし、人生への愛、家族愛など、いろいろな愛のカタチが存在している。そんな様々なバリエーションのドラマをTAKA、YUICHIRO、KEISEI、RYOという4人のボーカリストの個性ある歌声で彩っているのだから、そこに広がる可能性は本当に果てしないものがあるのだ。
ときにやさしく、ときに温かく、ときにクールに、ときにパワフルに。それぞれのラブストーリーに潜んでいる人間の感情を歌い分けられるだけのポテンシャルがDEEPにはあるからこそ、「愛」という、恐らく音楽のなかで最もポピュラーでオーソドックスで普遍的なテーマを、堂々と看板にすることができるのだろう。よく考えるとこれって、相当の自信や確信をもっていなければ決してできない、すごいことだと思う。
2009年にDEEPと改名するまでにもCOLORとしてアルバム3枚のリリースを積み重ねてきたキャリアは、確実に彼らのポテンシャルをより有効に具現化している。でも、単純に完全無欠なボーカルグループとして完成されたわけではなく、まだまだ伸びしろを残した期待感をたたえていることも、このアルバムの面白さ、素晴らしさのもうひとつの要素だ。
例えば、Skoop On SomebodyのTAKEの参加(「SILVER SNOW」で作詞を担当。作曲はSOSの楽曲も手がけるJiN)。SOSはCHEMISTRYに名曲「My Gift to You」を提供したことが思い浮かぶように、R&B系とされるアーティストにとっては偉大な先駆者のひとり。そんな兄貴のような存在であるTAKEを楽曲制作に招いていることでも、DEEPがまだまだ自分たちの足元をしっかりと見据えて真摯に音楽に向き合っていること、決して自信に胡座をかいていないことがうかがえる。
4月1日にはいよいよ日本武道館でのライブも控える彼らは、まだまだディープな進化を遂げていきそうだ。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】