レビュー
仲井戸麗市 | 2011.02.24
このアルバムは、RCサクセションの雄、CHABOの還暦を祝って参集した超人気&実力派アーティストたちが織り成す、ジャパニーズ・ロケンロールのルツボだ。
ギタリスト&ボーカリストのCHABOは、故・忌野清志郎とともに、日本のロック・ミュージシャンに大きな影響を与え続けてきた。CHABOはバンドでの活動はもちろん、ソロ活動もずっと行なっていて、ソングライターとしても数々の名曲を発表。その中から各アーティストがどの曲を選び、どんな演奏と歌が繰り広げられるのか。興味しんしん、楽しみに聴いてみた。
まず最初は、奥田民生の「チャンスは今夜」。バンドマンのヤンチャな日常を歌ったナンバーだ。民生は初めて聴いたRCサクセションのCDで、この歌をメインボーカルの清志郎ではなく、CHABOが歌うのを聴いて「ミュージシャンって楽しそうだなと思いました。で、僕もなりました」と語っている。奥田は歌はもちろん、演奏もエンジニアリングも自分ひとりで行ない、かっこいいロケンロールを聴かせてくれる。特にベースのプレイが素晴らしい。もしかしてこのCDを聴いて、「自分でベース弾いちゃってもいいの?楽しそう。僕もやろう!」というヤングが現われたら、奥田もCHABOも本望だろう。
ひとりで全部楽器をやっている参加者は、なんと13曲中、6人。その中で奥田とともにひときわ凄いのが、「別人」を取り上げた吉井和哉だ。ロッカーとしてステージに立つ気持ちを“別人”と表現するこの佳曲を、吉井はたったひとりでハードなブギーに仕立て上げた。ブギーとは数ある黒人リズムの中でも、飛び切りセクシーでエネルギッシュなスタイルだ。ロックの持つポジティブさだけではなく、不気味さも魔術的な面も感じさせるこの吉井のカバーは、出色。
そして僕のナンバーワンは、トライセラトップスだ。CHABOがRCサクセションの前に在籍したフォーク・グループ“古井戸”のヒットナンバー「ポスターカラー」を、淡々とカバーする。歌い方は、オリジナルそっくり。「それじゃあ、なんの工夫もないじゃん」と突っ込む方もいるかもしれないが、歌っているのが和田唱なので当然、声がまったく違う。自信がなければできないやり方だ。和田は付録の“コメント”で、こんなことを書いている。「随分前、福岡のラジオ局でのすれ違い際、『あ!チャボさんだ!』と、会釈した僕のところにスーっと来てくれて『オレ、キミの作る曲、好きだよ。』と言って頂いた事が、どれだけ僕の自信に繋がっているか。チャートや賞なんてもう必要ないのです」。和田はCHABOからもらった自信を、こうした形で感謝を込めて返礼したのだ。
全曲、オリジナルに描かれた70年代的な気持ちと風景を尊重しながら、21世紀に絶対必要なかの時代の夢や明るさを届けてくれる。近年最高のリスペクト・アルバムと言える快作。
【 文:平山雄一 】
リリース情報
仲井戸麗市リスペクトアルバム「OK!!!C'MON CHABO!!!」
発売日: 2011年02月23日
価格: ¥ 2,858(本体)+税
レーベル: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
収録曲
1. チャンスは今夜/奥田民生
2. ギブソン(CHABO'S BLUES)/ザ・クロマニヨンズ
3. うぐいす/斉藤和義
4. ポスターカラー/TRICERATOPS
5. ティーンエイジャー/寺岡呼人
6. 月夜のハイウェイドライブ/桜井和寿 (Mr.Children)
7. ホームタウン/さだまさよし (岡本定義 from COIL + 山崎まさよし)
8. 唄/宮沢和史
9. 魔法を信じるかい?-Do You Believe In Magic?-/Leyona
10. ガルシアの風/浜崎貴司 (FLYING KIDS)
11. 別人/吉井和哉
12. さなえちゃん/曽我部恵一
13. 慕情/YO-KING