レビュー

平原綾香 | 2011.03.01

 今や「平原綾香のライフワーク」とも言える人気クラシックカバーアルバムシリーズ『my Classics』。簡単に説明するとクラシックの名曲たちを平原が独自の解釈を持ってカバーするという企画だ。しかし、それらは単なるクラシックのカバーに留まっていないのが、この企画の特徴。と言うのも、この企画は、クラシックの本来、主旋律や演奏だけで成り立っていたものに対し、平原自身の各楽曲に対する独自の解釈とインスパイアにより、歌詞と歌を乗せたもの。そして、その第3弾がこの『my Classics3』だ。

 

 今回も、前シリーズに負けず劣らず、それぞれが斬新さと愛着を伴ってアレンジされたサウンドと共に、彼女の想いのこもった歌詞や歌たちが、作品全編に渡り展開されている。

 生きていく力強さを歌った「エルガ―チェロ協奏曲第一楽章」。イタリア語で「春」、またイタリアのサッカーチームのユースの名でもある「La Primavera!」を副題に、新しいことを始める方々への応援歌のように響いた「ヴィヴァルディ四季より春」。「バッハ アリオ―ソ」を、タイトル通り「なるようになるさ」「終わりよければ全て良し」の意味や気持ちを込めて歌った「What will be will be」。そして、子供を戦場に送る我が子を想う親心を思い浮かべ歌ったという、アイルランド民謡の「Danny Boy」。

昨年末に大阪で行われた、佐渡裕指揮による「1万人の第九」に参加の際にも歌われた「ベートーベン交響曲第9番第三楽章」「熊蜂の飛行」を平原のスキャットと口ベースによる楽器的な音を中心に作られた「くまんばちの飛行」。「ブラームス 交響曲第3番第3楽章」を、情熱的なスパニッシュギターを基調に歌われた「ブラームスの恋」。そして、サックス をイメージして歌ったという、ジャジーでアダルティな「G.ガーシュイン Someone to watch over me」。

雄大に、広大に、平原の歌が会場いっぱいに伸びやかに広がった「パガニーニの主題による狂詩曲」の独自解釈「ラヴ・ラプソディー」、エリック・サティの「あなたが欲しい」を独自解釈した「大きな木の下」。そして、最新シングルであり、今回最も"歌って欲しい"とのリクエストが多かった「ショパン 別れの曲」等。

 なんでも、彼女はこの作品化に際し、各曲原曲をキチンと何度も聴き、クラシックを愛する人たちにけっして失礼のないように、そして、それぞれの曲の作曲者についてを深く調べながら、ある時は、作っている際の作曲家の心境に、ある時は作家のバックボーンに迫り、また楽曲にインスパイアされて歌詞が導き出されたり、楽曲に共感し、イマジネーションを膨らませ、それを歌詞や歌へと繋げていったと言う。そして、聴けばそれも納得だ。どの曲も、非常に愛情/愛着のある歌や歌詞が乗せられている。

 この各曲のオリジナルの作曲家たちが生きており、今作のそれぞれの楽曲を聴く機会があったとしたら、みんな何と言うのだろう。きっと、「おおっ!私が曲に乗せたかった/伝えたかったのは歌は、こんな内容でした!!」なんて、言ってくれるにちがいない。

【 文:池田スカオ和宏 】

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リリース情報

my Classics3

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my Classics3

発売日: 2011年03月02日

価格: ¥ 2,900(本体)+税

レーベル: Dreamusic

収録曲

1. 私と言う名の孤独 <チェロ協奏曲 第1楽章>
2. 春~La Primavera!~ <『四季』より「春」>
3. What will be will be <アリオーソ>
4. 大きな木の下 <あなたが欲しい>
5. Danny Boy <アイルランド民謡>
6. LOVE STORY 交響曲第9番 第3楽章 <交響曲第9番 第3楽章>
7. 別れの曲 <別れの曲>
8. くまんばちの飛行 <熊蜂の飛行>
9. Someone to watch over me
10. ブラームスの恋 <交響曲第3番 第3楽章>
11. Greensleeves <イングランド民謡>
12. ラヴ・ラプソディー <パガニーニの主題による狂詩曲>
13. アランフェス協奏曲~Spain (Live Version) <アランフェス協奏曲 第2楽章> [Bonus Track]
14. Danny Boy (English Version) <アイルランド民謡> [Bonus Track]

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