レビュー
倖田來未 | 2011.03.03
倖田來未という人は、つくづくブレないアーティストなんだな。これが、1年ぶり9枚目となるニューアルバム『Dejavu』を聴き終えてまっ先に感じたことだった。
「キューティーハニー」 や「Butterfly」のリリースタイミングだから、もう6、7年も前。彼女がシーンの頂に向かってグングンと加速度をあげていた時期に何度か話をする機会があったが、あのころに語っていた自分のスタイルやポリシー、ヴィジョンにまったくのブレがない。ブレがないどころか、今作『Dejavu』では、それをより明確に具現化するような作りになっているのだ。
そのスタイルとは、本格的なR&BやHIP HOPで魅せる倖田來未と、J-POPアーティストとしてのポピュラリティを大切にした倖田來未との二面性を常に持ち続けること。簡潔に言い表すなら、彼女自身のなかで、“DIVA”と“歌姫”を共存させるということだろう。
荘厳なプロローグから始まるこのアルバム。前半はまさにコンテンポラリーなR&BやHIP HOPのスタイルを威風堂々と展開し、倖田來未というDIVAの圧倒的かつ孤高ですらある存在感を見せつけている。めまぐるしいほどのきらびやかなサウンドと変幻自在なボーカル、くらくらさせるほどのアップダウンには陶酔させられるほどだ。そしてインタールードを挟んでからの後半は、J-POPの歌姫としての倖田來未を存分に楽しめるセクション。人懐っこいくぅちゃんが、キャッチーな歌とメロディーで聴く者をどんどん巻き込んでいくようなポップス、バラードが並んでいる。
“DIVA”と“歌姫”の二面性については昔から彼女が提示してきたことだけど、ここまではっきりとアルバムのなかで確立してみせたことは、10年を越えて11周年目を迎えた倖田來未の、キャリアへの確信であり、改めての決意。変わらぬスタイルをより高いクオリティで明確な形にしてくれたことは、僕にとっての心地よいデジャヴであるけれど、彼女にとってのデジャヴは「前にも同じような辛いことがあったけど、今までも乗り越えてきたでしょ」という意味。つまり、間違っても懐古趣味なんかじゃなく、あくまでもハードルを乗り越えての進化なのだ。
最近はアリーナやスタジアムなどでのライブを続けてきた彼女が、この後に控える約4年ぶりのホールツアーを意識しながら作ったというアルバムでもある。きっとそのステージでは、さらに進化をとげた倖田來未のリアルな姿を体感させてもらえそうだ。
【 文:小野瀬正人(memory motel)】
リリース情報
Dejavu
発売日: 2011年03月02日
価格: ¥ 2,914(本体)+税
レーベル: avex trax
収録曲
1. Prologue to Dejavu
2. POP DIVA
3. Lollipop
4. Okay
5. 逢いたくて
6. Passing By
7. AT THE WEEK END
8. Interlude to Dejavu
9. Melting
10. Hey baby!
11. ちょい足しLife
12. あなただけが
13. 好きで、好きで、好きで。
14. Bambi
15. I Don't Love You !??