レビュー
大橋トリオ | 2011.03.16
大橋トリオは、作曲はするが、作詞は自身では行わず、他の方に提供してもらっている。もう、このことは多くの人が知っていることなのかもしれない。
その理由は「自分が歌詞を書くよりも、優れた人が歌詞を書いた方が、より自分のメロディや歌が活きるから」。その言葉をデビューの頃、どこかのインタビューで読んだことがあるのだが、その時に、"なんて柔軟で聴き手を意識した作品づくりをするミュージシャンなんだ!"と、いささか感激したものだ。
デリケートに伝えるべきか?甘く伝えるべきか?感情移入はどれぐらいが良いのか?等、確かに彼の歌表現は、伝え方を非常に大切にしている感がある。それが彼の作品や歌が、ホット過ぎず、クール過ぎず、一肌程度の優しさや温もり、ほのかな日常程度のドラマティックさを有し、聴きやすくともしっかり残る、そんなところに帰着しているところなのだろう。
そんな彼のこと。このカバーアルバム第二弾『FAKE BOOK 2』でも、かなり彼らしいアプローチで、<各曲大橋トリオらしいカバーのされかた>がなされている。前作が邦楽/洋楽を織り交ぜてのカバーだったのに対し、今回のパート2は、全編洋楽ナンバーのカバー。基本的にいつものアプローチ、スイングしない適度なジャジーさで、ウォーミーで、スイート、だけどしっかりとしたクールさを有した、しっとりとした作品となっている。
原曲のパワフルで歌い上げる系の壮大なバラードとは対象的なウォームさと身近さを持ったエアロスミスの「ANGEL」。原曲のスタイリッシュさを、ウィスパーを交え彼独自に解釈。かつ、原曲のアンニュイさはそのままなシャ―デ―の「Kiss Of Life」。原曲の切なさや甘酸っぱさを活かし、コーラス部は楽器に担当させるところも興味をひいたママス&パパスの「CALFORNIA DREAMIN’」。 原曲の女性ならではのストロング性とは対象的に、どこかストーリーテラー的に響くデズリーの「You Gotta Be」。オリジナルよりもソウルフル度は押さえ目ながら、逆にソフィストケイトされたスティービー・ワンダーの「MY CHERIE AMOUR」。オリジナルのグラマラスでグリッターな部分よりは、そこはかとなく漂ってくるエロティックさや艶めかしさを際立たせているデビッド・ボウイの「The Man Who Sold The World」等、全8曲を収録している。
聴くところによると、今作は全て自宅で録音し、ミックスまでほどこされたというこだわりよう。なるほど!!やはり彼は、聴こえ方、伝え方を非常に大事にしている。そんなことを改めて確信した1枚であった。
【 文:池田スカオ和宏 】
リリース情報
FAKE BOOK 2
発売日: 2011年03月16日
価格: ¥ 2,000(本体)+税
レーベル: rhythm zone
収録曲
1. ANGEL(オリジナル:エアロスミス)
2. Kiss Of Life(オリジナル:シャーデー)
3. CALFORNIA DREAMIN’(オリジナル:ママス&パパス)
4. You Gotta Be(オリジナル:デズリー)
5. Heartbeat(オリジナル:タヒチ80)
6. MY CHERIE AMOUR(オリジナル:スティービーワンダー)
7. The Man Who Sold The World(オリジナル:デビットボウイ)
8. If I Ain’t Got You(オリジナル:アリシアキーズ)