レビュー
布袋寅泰 | 2011.05.18
「布袋寅泰の楽曲の特筆すべきところは?」とたずねられて、あの歌声や楽曲に内包されたメッセージ、楽曲全体を彩るギタープレイの他に、「万華鏡のようなイントロのギターリフ」と答える人も多いことだろう。
彼のギターリフはまことに魅力的だ。鳴らされただけで、一発で彼のものと分かる上に、スッと楽曲の世界観へと惹き込み、そして極めて覚えやすく、口ずさみやすい。歌や歌メロディでもないのに、口づさみやすいというのは、大きなポイントと言える。
そんな布袋が今年アーティスト活動30周年を迎え、その第一弾シングルとして「PROMISE」をリリースした。"今回のイントロはどんなギターリフが飛び込んでくるんだろう?"と、そのシングルのプレイボタンを押し、僕はいささか驚いた。その耳に、まず飛び込んできたのは、流麗なピアノと清々しくてアコギのクリスピーなストロークだったからだ。とは言え、その聴き始めこそ、通例のセオリーを打ち破った展開に面食らったものの、聴き進めていくうちに、やはり布袋にしか歌えない歌、布袋にしか鳴らせない音、布袋ならではの物語性が同曲にも現れてきた。
どっしりとしたミディアムなテンポに、独特のギターカッティングやフレーズ。モチベーション高く鼓舞されるメッセージ性溢れる歌。そして、サビの部分に差しかかると、どこか開けた、先がパーッと広がっていくような光景溢れる世界へと導いてくれる同曲。そのダイナミズムと生命力、躍動感の溢れ具合には、”よし俺も!!”と、自身を強く鼓舞させた。
そして、歌内容も魅力的だ。
「新しい風をおいかけて 両手で未来をたぐり寄せて 何度でもやり直せばいい あの日の誓いと共に」の繰り返し力強く歌われるフレーズには、うなづくことしきり。まさに、あの日の誓い=「PROMISE」をみんなが果たすための新たなる旅立ちへと、聴く者の気持ちを奮い立たせる。
今回の3/11と、そこから復興に向けての一致団結しての力の発揮や各々の内的動機のアップへの促しにも響く同曲。特にラストに向かうに連れ広がっていく「Someday You can change the world」のメッセージと、聴く者を鼓舞し、ブレイブ感を沸き立たせてくれる展開は、多くの人の次の扉を開く力を支えてくれるにちがいない。
カップリングには、BOφWY、COMPLEX、そしてソロと、その発表時系列に関係なく、次々飛び出してくる聴き覚えのあるギターフレーズの数々を、贅沢にも数小節づつ3分28秒に渡りノンストップメドレー式にメガミックスされた、その名も「Greatist Guitar Medley」を収録。音色や表情、楽曲タイプや発表年代もまちまちながら、一つの大きな物語のように聴こえてくる同曲には、終始ゾクゾクワクワクさせられっぱなしだ。
この楽曲を始め、5月20日からは、30周年記念第二弾ライブとなるステージを東京・国立代々木競技場第一体育館と大阪・大阪城ホールにて開催。夏には全キャリアの中から選ばれた楽曲を、ジャンル、キャリア、国境さえも越えた豪華で個性的なゲスト陣を招いてカバーやコラボレーションで再構築する、ベスト・アルバムならぬゲスト・アルバム『ALL TIME SUPER GUEST』を発売。7月30日には東京ドームにて、東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティーライブをCOMPLEXとして行うなど、このアニバーサリーイヤーを後半も一気に駆け抜けていく感のある布袋。その猛チャージから、今後も目を離せそうにない。
【文 池田スカオ和宏】