レビュー
FLiP | 2011.05.24
最近はそうでもない印象を受けるが、「カメリアダイアモンド」「じゅあいよ・くちゅーるマキ」といった宝石のCMに起用されていた曲から、数多くのヒット曲が生まれていた時期があった。80年代~90年代の話だ。
そして、僕は今回のFLiPの1stアルバムを聴いて、そのCM類の絵が頭に浮かんだ。その中でも、例えるなら、アンルイスや久宝瑠璃子、相川七瀬等の類。女豹(めひょう=メスの豹)ロックとでも称そうか。ハードエッジで広がりのあるギターリフやカッテイングを武器に、ダイナミズム溢れるロックサウンドの上、一聴で覚えるキャッチーなメロディーとパワフルなボーカル。そこに載せられた主張のハッキリした強烈なサビのフレーズと、肝なのは、きっちりと擁した歌謡性。しかも、歌詞も女性ならではの一途さを有していたりして・・・。
しかし、彼女たちが先達たちと決定的に違うところは、トランスロックやディスコパンク、メロコアやギターロックを経過しているところ。それらがあるが故、このFLiPは、これまで凡百とあったガールズロックバンドの中でも、傑れた現代の女豹ロックを体現せしめたバンドと言える。
2005年、当時まだ高校2年だったボーカル&ギターのサチコを中心に、中学/高校の同級生が集まり活動を開始したFLiP。地元・沖縄・那覇を中心にライヴ活動を続け、現在までに2枚のアルバムを発表。2009年には、あのサウスバイサウスにも参戦。アメリカ8都市9公演のアメリカライブツアーも敢行された。
2010年2月にミニアルバム『DEAR GIRLS』でメジャーデビュー。その後、2ndミニアルバム『mulu mole』を経て、2011年2月に発売された1stシングル「カートニアゴ」は、TVアニメーション「よりぬき銀魂さん」のオープニングテーマとしても起用され、一般的な層にまで人気を広げていく。それを裏付けるように、今春行われたワンマンライブは、東名阪どこも大盛況であった。
そんな彼女たちがメジャー1stアルバム『未知 evolution』をリリースした。デビュー以降、プロデュースを手掛けてきた、いしわたり淳治と共に制作された今作は、彼女たちの持ち味である、スケールたっぷりでハードでダイナミズム溢れるエッジの効いたサウンドと、往年の歌謡曲を思わせるメロディラインに乗せて、ホットで張りのある、パワフルな歌声といった、彼女たちの魅力が大全開だ。
また、それら以外のテイストとしても、ミディアムでワイドな世界観が印象的な「Butterfly」、ファンキーでエスぺランザな「叱って」、「Oh Darling!」「平成ジュラシック」は、ハードロックのみに帰着させず、サウンドにトランスロックやディスコパンクを交え、サウンドに上昇感覚や高揚をもたらせ、「茜」に至ってはレゲエの裏打ち&ファットなベースラインが特徴的。そう、手札もかなり持っていたりする。
また、歌やリリックにしても、「Oh Darling!」は、これから一緒に歩んでいくであろう、彼女たちとそのファンとの関係性のように響くし、「平成ジュラシック」では、彼女たちのライブにおける、フロアとの掛け合いも想起させ、「茜」は彼女たちの出身地沖縄を思い浮かばせたりする。
今作のタイトルは、『未知 evolution』。未知の発展や進化を含ませた、いかにも今作や彼女たちの前途に期待を持たせてくれるタイトルだ。今後もガールズバンドの進化、発展をしっかりとその過程も含め、見せてくれそうな彼女たち。そのハードでいながらも、歌謡性を持つその音楽性を大切に、いずれは宝石のCMに起用されてくれ。ホント、絶対に合うと思うよ。
【文:池田スカオ和宏】
リリース情報
未知 evolution【初回生産限定盤】
発売日: 2011年05月25日
価格: ¥ 3,048(本体)+税
レーベル: DefSTAR RECORDS
収録曲
[CD]
1. Oh Darling!
2. カートニアゴ
3. 雨の女
4. ナガイキス
5. ユレウタ
6. す・て・きReaction
7. 革命前夜
8. ライラ
9. Butterfly
10. 叱って
11. カザーナ
12. 平成ジュラシック
13. 茜
[DVD]
1. カザーナ
2. Hey Hey Hey Hey
3. ライラ
4. Butterfly
@ SHIBUYA BOXX