レビュー
くるり | 2011.07.01
<そこはかとない寂寥感を帯び、ゆったりとしながらも大らか。そして、聴く者に安堵感や多大な包容感を与える曲ばかりだなぁ...>
これは今年結成15周年を迎える、くるりのベスト盤第2弾を聴き終えた時の私の感想だ。
今回のベストは、2007年以降に発表された映画主題歌やCMタイアップ曲等に未発表曲3曲を含んだ全14曲入り。この5年も、海外交響楽団によるストリングスアレンジ、ルーツロックやジャズ、ブルースにエレクトロニカ等々、多岐に渡るサウンド・アプローチを施してきた彼らだったが、実際こう聴き返してみると、どの曲も岸田の歌を中心に、サウンドや雰囲気といった演出面に頼ることなく、キチンと歌世界に浸らせ、惹き込む楽曲を数多く生み出してきたことに気づく。
全13曲中5曲ものチオビタ・ドリンクCMソングの中(笑)、土岐麻子を交え歌われた「さよならリグレット」、松任谷由実を交えた爽快感や快晴性溢れる「シャツを洗えば」、「三日月」や「ジュビリー」等の寂寥感と抒情感溢れる楽曲の数々は、きっとみなさんも聴き覚えのあることだろう。加え、嬉しいのは、現在この盤でしか聴けない初CD化の楽曲の数々。先日の武道館公演でも披露され好評だった、ア―シ―に生まれ変わった民謡「鹿児島おはら節」、牧歌的な「最終列車」や「旅の途中」も、この盤ならではのプレミアム感を醸し出している。
聴く者に安堵を与え、そこはかとない寂寥感に浸らせてくれる今作。のんびりとはまた違ったマイペース感を、この盤と共に是非取り戻そう。
【池田スカオ和宏】