レビュー
山下達郎 | 2011.08.08
オリジナル・フル・アルバムとしては、実に6年ぶりとなる山下達郎のニューアルバム。通算13作目となった今作のタイトルは『Ray Of Hope』。「全てのオリジナル曲が、ひとが生きていくこと、くらして行くことの歌です」と達郎自身もアルバム用の制作ノートで語っているとおり、今作は、愛はもとより、人生のと尊さ、儚さ、が故の謳歌をより強く感じさせ、不変的なもの、風化されない気持ちや思いでいっぱいだ。それは、今作のリリックの中、 <祈り>や<願い>といったワードがよく出てき、重要なキーワードとして響いていることからも、それが伺える。
収録されている曲にしても、スケール観に溢れ、上向き前向き、聴く者を力強い光へと導く「NEVER GROW OLD」。愛という名の絆を改めて気づかせてくれる「希望という名の光」。残された自分はこれからもこの街で生きて行くことを改めて強く誓う「街物語(NEW REMIX)」。男性は伴侶に歌ってあげたい、女性は伴侶から歌ってもらいたい、シンプルながら慈愛に満ちたメッセージ溢れる「プロポーズ」。かと思えば珍しくポリティカルな「俺の空」。ポップで弾みたくなる「ずっと一緒さ」、生命力とキラキラ感に溢れる、歌詞カードからは省かれている、アウトロに広がっていくメッセージのリフレインと、その前にライムの素晴らしさを是非堪能してもらいたい「MY MORNING PRAYER」。
それにしても、このアルバムで凄いなと思ったのは、1曲目の「希望という名の光(Prelude)」?2曲目「NEVER GROW OLD」のライン。彼の原初であるアカペラやドゥーアップを披露した後に、たぶん今作で彼の最新と言えるスタイルであるシンセベースや裏打ちのハイハットの要素のある楽曲を並列しているところだ。だって、「NEVER GROW OLD」なんて私からすると、アプローチ的にはエレクトロやレイヴですからね。
いやー、その柔軟性や振れ幅、キチンと自身をアップトゥデイトされているところが凄い。歌詞でも「時代という名のコスチュームを 脱ぎ捨てた心は 二度と滅びはしない」と歌われているし、そこから、達郎さんが同じことを演っているように見えながらも、キチンと新しいく聴こえるし、色あせない、懐かしいと感じさせないところなんだな。変わっていないのに、キチンと変わっている。今回も脱帽させてもらいました。
リリース情報
Ray Of Hope
発売日: 2011年08月10日
価格: ¥ 3,334(本体)+税
レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン
収録曲
ディスク:1
1. 希望という名の光(Prelude)
2. NEVER GROW OLD
3. 希望という名の光
4. 街物語(NEW REMIX)
5. プロポーズ
6. 僕らの夏の夢
7. 俺の空
8. ずっと一緒さ
9. HAPPY GATHERING DAY
10. いのちの最後のひとしずく
11. MY MORNING PRAYER
12. 愛してるって言えなくたって(NEW REMIX)
13. バラ色の人生~ラヴィアンローズ
14. 希望という名の光(Postlude)
ディスク:2
1. 素敵な午後は [1985/2/24 @神奈川県民ホール]
2. THE THEME FROM BIG WAVE [1985/2/24 @神奈川県民ホール]
3. ONLY WITH YOU [1986/10/9 @郡山市民文化センター]
4. 二人の夏 [1994/5/2 @中野サンプラザ]
5. こぬか雨 [1994/5/2 @中野サンプラザ]
6. 砂の女 [1994/5/2 @中野サンプラザ]
7. アトムの子 [1992/3/15 @中野サンプラザ]