レビュー
androp | 2011.09.22
あまり他で語られていないのが不思議なのだが、私が思うこのandropの凄いところは、1曲に込める密度だ。もちろんキャッチーとメリハリのある、ほのかなドラマティックさを有したメロディ、ボーカルのセンシティブで優しげな歌声、そして、ダイナミズムと繊細さ、緻密さと豪気さを合わせ持ったサウンドも彼らの特性としては、特筆すべきところだ。しかし、この手の音楽性と趣向を持ちながら、1曲を3分以内でキチンと伝え切っているところは、他のバンドには見られない彼らの白眉な部分と言えるだろう。
今のポップミュージックのシングル曲の大体のタイムは5~6分。とは言え、聴いているとその長さをあまり感じさせないものが多い。しかし、このandropは、それらのアーティストがその時間をかけて伝えてきたものを3分以内で伝え、しかも、そこに全くの物足りなさを残さない。その上、聴いていてもアッという間には感じさせず、どの曲もキチンとドラマティックさもメリハリも奥行きもストーリーもフックも有している。
androp初となるフル・アルバム『relight』は、そんな3分間ポップスでいっぱいだ。ガツンとした部分、ダイナミズム、生命力、マスロックや音響的要素、パラレルでキラキラとしたフレーズ、柔らかく優しい面、適度な疾走感やパンキッシュさや時には暴走性や狂暴な面、そして着地点には、文字通りもう一度光に出会えたような安堵感と、様々な要素が、各曲のエッセンスとしてキッチリと表われ、聴く者の耳と心をしっかりグリップするものばかり。
このandropにしても、andymoriにしても、キドリキドリにしても、3分の中でしっかりと人の心に残る歌ものバンドが、パンク以外にも現れ出した。彼らの3分の中に詰めた熱量と情報量と物語性を是非、みなさんにも感じてもらいたい。
【 文:池田スカオ和宏 】