レビュー

木村カエラ | 2011.10.13

今夏観た幾つかのロックフェスに於いても、一児の母とは思えないアクティブで伸び伸び活き活きとしたステージを展開していた、木村カエラ。それは、出産後初のオリジナル・アルバムとなる、この『8EIGHT8』でも然り。強がりも健気さも奔放さも、開き直りも自己確信も含め、少女?乙女性溢れる楽曲が全13編に渡り収まっている。

結婚/出産を経たアーティストは、2パターンに別れるケースが多い。まるで子供がいることを感じさせない、これまで以上にパワフルさを供給するタイプ。もう一つは楽曲の端々に母性雰囲気や母親目線が見え隠れするタイプだ。前者は、”それはそれ、これはこれ!!”と言わんばかりに、インディビデュアルでプログレスしていき、次々とした斬新さと、”えっ、これで本当にママ!?”と疑わんばかりのバイタリティで周りを魅了し、後者は、自分の今のサイクルや視点がより懐深く、全体的に円みをおびながらも、広く雄大な視点の楽曲が増えていく。

そして、今作を僕は勝手に、後者になるのではないか?との予想していた。しかし、結果は完全に前者。幅広い人を魅了するであろう、今の彼女の齢で歌われるのにピッタリな歌が並んでいた。そして、それを成し得えることが出来たのは、やはり渡邊忍(ASPARAGUS)氏の協力もあってこそ。今作の楽曲は、今までの様々な提供者によるものとは一変。全編、渡邊の提供楽曲より成り立っている。しかもそれらは、1人の作者や自身のバンドの再とは違った形でバラエティに富み、どれも短く歌を伝え切ることに成功している。

今作でも、見事、少女~乙女性を全開にさせた作品を作り出した彼女。今は想像しがたいが、いつかは母親目線や母性溢れる楽曲が歌われる日が来るのだろう。しかし当面は、まだまだ、この奔放な少女像で多くの人に楽しませて欲しい。痛快でいて軽快。やはり今の彼女はまだまだその方が似合うのだから。

【 文:池田スカオ和宏 】

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リリース情報

8EIGHT8

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8EIGHT8

発売日: 2011年10月12日

価格: ¥ 3,500(本体)+税

レーベル: 日本コロムビア

収録曲

ディスク:1
1. Make my day!
2. KEKKO
3. 8EIGHT8
4. Ring a Ding Dong
5. うたうらら
6. lollipop
7. ホシノタネ
8. Moon Light
9. 喜怒哀楽 plus 愛
10. deep beep
11. A winter fairy is melting a snowman
12. orange
13. チョコレート
ディスク:2
1. Ring a Ding Dong (Music Video)
2. A winter fairy is melting a snowman (Music Video)
3. 喜怒哀楽 plus 愛(Music Video)
4. ALBUM「8EIGHT8」recording movie

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