レビュー
Chara | 2011.11.04
つい1ヵ月前にCharaのライヴを観る機会があった。それまで観てきた彼女のライヴのスタイルと違い、ツインドラムを有し、ギターにCozyこと車谷浩司を擁した総勢10人の大所帯バンドは、生命力や力強さ、そしてとてつもない包容力を終始会場に放っていた。
その際にも何曲か披露されたのが、彼女のこのニューアルバム『うたかた』からの曲たちであった。そして、あの時のライヴで感じたそのままの感覚や手触りや肌触りが、伝達方法は違えど、今作には漂っていた。伝達方法が違うと前述したが、それはいわゆる今作がバンドではなく、Charaが1人で多重録音しながら作られたところ。なんと今作では、アコギ、ベース、シンセや鍵盤はもとより、時にはドラムも自分でプレイされていたりする。
音響やポストロック、時にはシュ―ゲイズなんて音楽性も見え隠れする今作。ギターのアンサンブルや爪弾き、鳴りや響きといった構築具合も長けているのも特徴だ。ジワジワと上がっていくような心地よい上昇感を持つ前半面。そして、ピアノを中心とした、天上性溢れるそこはかとない至福感がたまらない後半面。その二律背反がどことなく、人間の表裏や奥深さのように感じたのは、私だけではないだろう。
ものの辞書によると、「うたかた」とは、「水に浮かぶ泡」「はかないものの例え」らしい。この東北の震災以降生まれた今作は、Charaがそれを経、何を感じ、何を想い、何を伝えたくなったかが、彼女なりの伝達手段で伝えられている。聴く者によって、その感想や感受が別れそうな今作。あなたなら、このアルバムを聴き、どのような感想を持ったのだろうか。是非、聞いてみたいものだ。
【 文 : 池田スカオ和宏 】