レビュー
amazarashi | 2011.11.16
圧倒的な詩世界と、それを聴きやすいロックミュージックに昇華させるミュージシャンとしての才能、さらには魂が宿った歌声で、比類なき存在感を示しているamazarashi。
一方で、メジャーデビューして1年半経った今もメンバーの露出はほとんどなく、未だ多くの謎に包まれたままのバンドでもある。
それだけに、彼らをもっと知りたいという希求は強く、今年6月に行われた1stライヴには、キャパ400人に対して3000人の応募者が殺到。9月に行われた追加公演@恵比寿リキッドルームも、わずか5分でチケット完売というアツイ現象が起きている。
私も9月のリキッドルームを観させてもらったのだが、薄い幕の向こうで秋田ひろむ(Vo&G)をはじめとするバンドのメンバーが迫力ある音を鳴らし、時にお馴染みのてるてる坊主や少女が登場するアニメーションがシンクロしていくライヴは、他のどこにもないスタイルで、そこで味わった現実と非現実を行ったり来たりするような感覚や、ステージと1対1で向き合うような感覚も、他のライヴにはない初めてのものであった。
amazarashiはamazarashiでしか味わえないものを体感させてくれる、と再確認。
さて、そんなamazarashiが待望の1stフルアルバム『千年幸福論』をリリース。
すべて新曲のみで構成されたという本作は、サウンド面、歌詞面で新たな広がりを感じさせつつ、今回も超濃厚だ。
古いSF映画をモチーフにしながら、福島原発やその先にある日本の姿、あるいは世界の姿を想起させる「古いSF映画」。「未来づくり」はこれまでの作品に比べ、肯定感やポジティブ感が増量されていて、そんなところも印象的。またタイトルチューンの「千年幸福論」は、千年続く愛情も幸福も安心もないとわかっていながらそれを求めようとする歌で、そこからはおのずと“幸福とは?”“愛情とは?”“人間とは?”“生きるとは?”といった根源的な問いが伝わってくる。どの曲も本当に深い。なかでも虚しさという言葉にしがたい感情を見事言葉で表現した「空っぽの空に潰される」は素晴らしく、個人的にも大いに共感して泣けた。
そう、最初にも“圧倒的な詩世界”と書いたが、amazarashiは、誰もが心に抱えていながら言葉にできずにいる想いを、見事すくい取り言葉にできる凄さがある。しかも人生を懸けた必死さで。だから聴き手はそこに感動し、カタルシスを覚え、“こんな想いを抱えているのは自分だけじゃなかったんだ”と励まされるのだ。
今作も唯一無二で圧倒的。より研ぎ澄まされ、1歩先に進んだamazarashiが感じられる1枚でもある。必聴! ちなみに今回、初回生産限定盤には秋田ひろむ初となる小説「しらふ」が掲載された本も付属。貴重アイテムなので、CDショップへ急ぐべし。
また、2012年1月28日には渋谷公会堂でのワンマンライヴも決定している。
【 文:赤木まみ 】
リリース情報
千年幸福論
発売日: 2011年11月16日
価格: ¥ 3,143(本体)+税
レーベル: SMAR
収録曲
ディスク:1
1. デスゲーム
2. 空っぽの空に潰される
3. 古いSF映画
4. 渋谷の果てに地平線
5. 夜の歌
6. 逃避行
7. 千年幸福論
8. 遺書
9. 美しき思い出
10. 14歳
11. 冬が来る前に
12. 未来づくり
ディスク:2
1. 夏を待っていました -Music Video
2. クリスマス -Music Video
3. アノミー -Music Video
4. カルマ (2011.6.17@渋谷WWW)