2009年の20周年記念アルバム『四重奏』は、そのキャリアにふさわしい王道のロックアルバムだった。が、新作では一転、日本の歌謡曲を独自の解釈で21世紀に再構築する試みがあちこちに仕掛けられている。代表曲「島唄」と同様、ジャンルを越えようとする強靭な意志とアイデアは、ある意味、THE BOOMの強烈な個性そのものと言える。それは音楽ジャンルも時代もクロスオーバーする壮大な冒険であり、結果、『よっちゃばれ』は、日本初の歌謡曲を軸としたミクスチャー・アルバムとなった。

　昨年出した「蒼い太陽」はGO!GO!7188のユウをフィーチャーしたシングルで、その作品を聴く限り、THE BOOMはエッジーなJ-POPの方向に進むものと予想していたから、歌謡曲への大転換は予想外。たとえば石川さゆりをフィーチャーした「暁月夜」は、レゲエのニュアンスを含んだ新しい演歌と言っていい。この痛快な“裏切り”こそ、このバンドの今の音楽的欲求の高さと、問題意識の深さ、制作に対する自信の強さを表わしている。

　アルバム・タイトルの“よっちゃばれ”は、メンバーの故郷・甲州の方言で「集まろう」、「よっといで」という意味。震災のため、本作は発売が延期されたのだが、今だからこそ“よっちゃばれ”という呼びかけが、リスナーの心に深く響く。

【 文：平山雄一 】