レビュー
中島みゆき | 2011.12.01
アルバムの前半は、深い喪失感に覆われている。タイトル曲「荒野より」を初め、「鶺鴒(せきれい)」、「彼と私と、もう1人」の歌詞には、“何もない”という言葉が使われている。現代日本を代表する知性のひとり、中島みゆきの感受性は、この国の2011年を そう捉えているのだろう。同時に彼女は“立ち停まるな”とメッセージを発する。
中で僕が惹かれたのは、「ギヴ・アンド・テイク」という歌だった。モノを上げる人間と、モノをもらう人間の心理についてのこの歌は、両方の側からの本音のセリフで成り立っている。これを被災者と支援者に単純に置き換えるのはやや安直で申し訳ないが、今年、この歌を聴く限り、どうしてもそう感じてしまう。そして、そん なことを歌うのは、中島みゆきしかいない。
今年、発表された短歌に「つつましきみちのくの人哀しけれ苦しきときもみづからを責む 長谷川櫂」という一首があった。この短歌と「ギヴ・アンド・テイク」に共通して流れているのは、人間の尊厳に関わることだ。
本年は多くのチャリティー・イベントやチャリティー・ソングがあったが、中島の鎮魂の歌は、あくまで“底の人”に根ざしている。あえてそれを“中島みゆきらしい”と断言したい。
【 文:平山雄一 】
お知らせ
大好評のドラマ、TBS開局60周年記念 日曜劇場『南極大陸』の主題歌で、約2年ぶり42枚目のオリジナルシングルとなる新曲「荒野より」をリリースした中島みゆき。
今月11月16日にはファン待望の38枚目のオリジナルアルバム「荒野より」もリリース。
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