レビュー
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2012.01.19
詩的でありながら感情のこもった歌を、絶妙な4人のアンサンブルで聴かせるギターロックバンドASIAN KUNG-FU GENERATION。独自の道を歩んで来た彼らが、初のベストアルバム『BEST HIT AKG』をリリースした。フルアルバム6枚、ミニアルバム2枚からチョイスされた楽曲は、発表された順に曲が並んでおり、彼らの歴史、そのときどきの姿がパッケージされている。
「遥か彼方」などの初期の曲は、今とは違う荒々しいパワーのみなぎりがとても新鮮に映る。アジカンの名前を世に知らしめたメロディアスな4つ打ちビートの「君という花」が、こうして年代順で聴くと、いかに彼らにとっての新基軸だったかというのもよく分かる。ポップさとエモーショナルなサウンドを追求していた時代から、「ブラックアウト」などの頃には、ギターやビートなど細かい音作りへと変化。そうした時代を経て「或る街の群青」「アフターダーク」などで、より切れのいいギターバンドサウンドを聴かせる。「新世紀のラブソング」では語りのような歌や逆回転ギターサウンドを披露するなど、広がった音の世界観をしっかりと感じとれる。
アジカンが、いかに自分たちの音楽と正面から向き合い、前を目指し進んで来たが分かる本作は、安易に作られたものとは違う、意味のあるベスト盤といっていい。最後に収録された最新曲「マーチングバンド」から繋がる、新たなアジカンの展開にも期待が高まる作品だ。
【 文:土屋恵介 】