レビュー
People In The Box | 2012.01.28
偶然なのだが、この原稿を書いている今、流しっぱなしのラジオでは、People In The Boxのスタジオライヴが行われている。しかもラジオにも関わらず延々とフィードバックノイズを撒き散らしているところだ。いやー、凄い!途中で聴いた方の中には、本気でラジオの調子が悪くなったと思った方もいるんじゃないかな(笑)?
当然、この新作からも何曲かプレイされたのだが、それらをラジオを通し聴く中で、今作の各曲たちが良い意味での聴き易さを有していることに改めて気づいた。今作はきっと新しく彼らに接する人たち、そこからより興味を持ってくれる人たちを増やすことだろう。特に収録されている、軽快さやダイナミズムさ溢れる「二ムロッド」や、彼らからは珍しいコミュニケーション性を感じる「親愛なるニュートン街の」からは、その辺りを確信させる。
とは言え、今作は、けっしてクオリティや完成度、作品度が下がったわけではない。むしろ逆。今まで以上の緻密さと作品性を擁しつつも、それがポップに結実しているのだ。
井上ウニを迎えレコーディングされた作品内容は、歌や聴いた感じの分かり易さはもとより、徹底的に鳴りや響き、音像や手触り、アンビエンス感にこだわっている。抜き差しはもとより、音の前後、奥行き感は、楽器の位置感、一音一音の絡み方まで伝わってくるほど。くっきりと音のディテールを際立たせ、そこからの全体像を聴き易く、馴染みやすくしているのが特徴と言えるだろう。特にラストの「汽笛」の美しさや浄化さといったら…。
是非、いや、絶対にCDパッケージで、しかもヘッドフォンで一人で静かに、じっくりと味わって欲しい一枚だ。
【 文:池田スカオ和宏 】