レビュー
Galileo Galilei | 2012.01.29
「青い栞」「さよならフロンティア」「明日へ」と、昨年リリースしたシングルの発表毎に、この覧にて絶賛を送ってきたGalileo Galileiのニューアルバム『PORTAL』が発表された。
今作を一言で表わすなら「良質」。尾崎兄の歌世界とアンニュイさを有した歌声、従来のギターロック的なサウンドに、徐々に比重を高め、サウンドのスパイス的な重要度を上げてきたエレクトロ的な要素。それらが絡み合った今作は、極上の良質なポップスが14編に渡り展開されている。
上記のシングルの他、アンニュイな、さよポニのみぃなの女性コーラスを迎えた、力強いダイナミズムと心地よい浮遊感の同居もたまらない「Imaginary Friends」から始まる今作。淡白さと適度な躍動感、その中に綴られる淡い家族物語も秀逸な「老人と海」、疾走感たっぷりでありながらも、シュ―ゲイズ的な浮遊感をスパイスに、ラストに向かうに連れ、とてつもなく広がっていくそのサウンドビューも印象的な「Kite」、かと思えば、「Swimming」や「Blue River Side Alone」といった間のインスト曲もただの箸休めや場面転換に終わらせず、しっかりと心象風景や情景感を感じさせてくれたり。センチメンタルさを聴く者の胸にジワジワと広げていく「Good Shoes」、シュ―ゲイズな福音が楽曲の後ろで鳴り続け、ほのかな幸せを手に入れたかのような気持ちにさせてくれる「星を落とす」、アコースティック楽器も含め、音の鳴りやアンサンブルにこだわった「スワン」、勢いと広がりの両極を有し、止まらないグロウン感が聴く者を歌世界へと誘う「花の狼」、そして、前述の「老人と海」との連動性を感じる「くじらの骨」が、我々をそれぞれの歌物語へと誘ってくれる。
今作の特徴は、ソングライティング性や作品の構築感のアップももちろんだが、より前面に出てきた躍動感。これまで以上に実験的でありながらも、それらを全てをポップな作品として結実させているところは凄い。きっと、ある程度の着地点は決めながらも、試行錯誤や挑戦、実験を自らのスタジオ「わんわんスタジオ」にてじっくりと時間をかけ行った賜物だろう。
「入り口」や「始まり」の意味を持つ『PORTAL』とのタイトルを今作につけた彼ら。その意味通り、幅広く、多くの人々にとって今作が、彼らの今後への『PORTAL』になっていくにちがいない。
【 文:池田スカオ和宏 】