レビュー

YUKI | 2012.02.01

やっぱり変わっていないんだな……これがYUKIのソロデビュー10周年を記念した2枚組アルバム『POWERS OF TEN』を聴き終えた私の感想だ。勘違いしないで欲しい。この場合の<変わらない>は、決して<成長していない>とは違った類。しっかりと成長し、作品毎に大きく強靭になっていきつつも、不変的な部分をしっかり保ち続けているという意味だ。それは、本質であったり、何時聴き返しても色褪せないところ、拭っても拭いれない彼女らしさとも言える。

全作品とは言わず、そのほぼを追ってはいたが、こうしてまとめて彼女のシングル曲を聴き返してみると、当時は気づかなかった色々な発見があるものだ。作品毎に驚かされていたものの、実は前作をキチンと踏襲していたり、プロダクツチームも作品毎に変化していた記憶があったのが、実はブロックブロックだったり、サウンド面も飛び出す毎にその変化を感じた印象があったのに、牧歌的な時期、躍動的な時期、ゴージャスな音の時期、構築感を重視していた時期と、各2?3作毎に、その都度のモードが存在していたりと、この盤ならではの楽しみ方が出来る。
しかし、私がその中でも特筆的に挙げたいのが、新曲「世界はただ、輝いて」と、未発表曲「大人になって」だ。
聴いていただければ気づくと思うが、「世界はただ、輝いて」は、彼女のこの10年を総括するように、これまでの楽曲のタイトルや歌詞フレーズから成り立っているナンバー。サウンドのブライトさやグロウンさはもとより、その歌詞の流れがキチンと全て上向き、前向きになっている。1曲で全てを走馬灯のように蘇らせ、その全てを昇華させるように、次や未来へと夢を馳せさせる楽曲だ。

そして、ラストの「大人になって」は、制作された頃から今への思いや、気持ち、Wishを繋ぐ楽曲。少女がいつしか大人になっていく、その不安や未知が、時間の流れや繋がりと共に美しい言葉たちによって綴られている。真ん中に一瞬現れる「私はやっと今日を歌い生きている」。そこに彼女の歌ってきた変わらない真理が漠然と横たわっている気がした。あの時、問われた答えは、きっと聴き手ひとりひとりの中で違って現れていることだろう。そして、この曲まで聴き終えて、多くの人は、上述の私のように思うにちがいない。「やっぱりYUKIは変わっていない」と。


【文:池田スカオ和宏】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル YUKI

リリース情報

POWERS OF TEN(初回生産限定盤)

このアルバムを購入

POWERS OF TEN(初回生産限定盤)

発売日: 2012年02月01日

価格: ¥ 4,000(本体)+税

レーベル: ERJ

収録曲

ディスク:1
1. MY HAND
2. the end of shite
3. プリズム
4. 66db
5. スタンドアップ!シスター
6. センチメンタルジャーニー
7. ハミングバード
8. Home Sweet Home
9. ハローグッバイ
10. JOY
11. 長い夢
12. ドラマチック
13. 歓びの種
14. Rainbow st.(super session)
ディスク:2
1. メランコリニスタ
2. ふがいないや
3. 星屑サンセット
4. ワンダーライン
5. 汽車に乗って
6. ランデヴー
7. COSMIC BOX
8. うれしくって抱きあうよ
9. 2人のストーリー
10. ひみつ
11. Hello !
12. 世界はただ、輝いて
13. 大人になって

スペシャル RSS

もっと見る

トップに戻る