レビュー

平原綾香 | 2012.03.02

その鮮烈なデビューは、今なお、誰もが記憶しているのではなかろうか。平原綾香がシングル「Jupiter」でデビューしたのが、2003年。当時、彼女は19歳だった。しかしながら、その淡麗で大人っぽいルックス、ゆったりしていて微笑ましい話し方、そして圧倒的な歌唱力から、実年齢よりも上に見られる事も多かったのでなかろうか。そして、このイメージは、そのまま平原綾香というアーティストのひとつの個性になると同時に、結果として、普遍性にもつながった。“My Classics!”という、クラシック原曲をメインとしたカバーアルバムを3枚続けてリリースし、改めてその個性を世間に印象付けることができたのも、この声があったからこそだろう。


 平原綾香が持っている普遍性。それは、歌声だ。決してエキセントリックでもないのに、1度聴くと耳が覚えてしまう。細胞が知っている声、とでも言ったらいいだろうか。独特の声と、個性ある歌い回し。中低音を響かせながら、時折ちょっとだけ、ためるように歌う彼女のスタイルは、どこか唱歌を思わせる。だから誰の耳にも、安心感と温かみを携えながら、響いていくのではなかろうか。
 この普遍性=声を使い、自身がいろんな音楽とともに、飛び回っている。そう感じさせるのが、ニューアルバム『ドキッ!』だ。「おひさま~大切なあなたへ」などの王道バラードはもちろん、モータウン調のリズムが軽快な「HUSH HUSH」、子守唄を思わせる「いつも いつも」、ストリングスと打ちこみのバランス、さらには楽曲の展開に遊び心を感じるポップ・チューン「あと少し あと少し」など、収録曲の表情も多彩。中でも異色なのは、本人の声とベースだけで聴かせる「Night in Tunisia」。ヴォイス・パーカッションとフェイクが入り乱れる、まるで1人インプロヴィゼーション(ベース入ってるけど)。これマジで、クールでカッコいいっす。
普遍性を武器に、可能性を広げる。そんな彼女のリアルが感じられる1枚だ。

【 文:伊藤亜希 】

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リリース情報

ドキッ!

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ドキッ!

発売日: 2012年02月29日

価格: ¥ 3,048(本体)+税

レーベル: Dreamusic

収録曲

【ディスク:1】
1. ナミダオト
2. HUSH HUSH
3. NOT A LOVE SONG
4. My Road
5. あいたくて
6. Where Magic Goes~愛のゆくえ~
7. Night in Tunisia
8. あと少し あと少し
9. この想い届け
10. 結晶
11. いつも いつも
12. ヴォカリーズ
13. おひさま~大切なあなたへ
【ディスク:2】
1. Jupiter
2. 私と言う名の孤独
3. 明日
4. I will be with you
5. Music
6. Someone to watch over me
7. くまんばちの飛行
8. 星つむぎの歌
9. JOYFUL, JOYFUL
10. ノクターン
11. Danny Boy
12. LOVE STORY 交響曲第9番 第3楽章

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