レビュー

奥田民生 | 2012.03.29

奥田民生がライブバンドを4人編成にした最大の意図は、“ギタリストは自分一人”という点だろう。ソロになって当分の間は、もう一人ギタリストがいる5人編成だった。歌いながら弾くことを考えれば、当然のことだったのかもしれない。が、いつしか民生は“一人ギタリスト・バンド”を構想するようになった。
バンドの基本は“フォーリズム”と呼ばれる、ギター、キーボード、ベース、ドラムの編成。「シンプル・イズ・ベスト」を身上とする奥田は、歌いながら弾くという負荷を自らに掛けて、さらなる進化を目指した。ドラムス湊雅史は、奔放なプレイで自由に暴れ回る。キーボード斎藤有太は奥田のギターと共にサウンド全体の輪郭を作る。そしてベースの小原礼は世界的実力者として奥田を厳しく見守る。今、歌いながら弾くギタリストを3人を選べと言われたら、迷わず布袋寅泰、くるりの岸田繁と奥田民生の名前を挙げる。だから奥田をここまでに押し上げたバンド、中でも重鎮・小原の還暦を祝う今回のツアーは、奥田にとって思い入れはひとしおだったろう。そして奥田はこのアルバムで、見事にその力を証明してみせた。1曲目「ギブミークッキー」から、ライブならではのスピード感あふれる歌とギターが楽しめる。

 また、そうしたミュージシャンとしての成果を掲げる一方で、実際のライブのセットリストとほぼ同じに組まれたこのアルバムの選曲に注目してほしい。昨年の大震災に対する深い思いやりと決意を、押しつけがましさを避けて、あくまで裏に潜ませているのが奥田らしい。2000年代最高のライブアルバムだ。

【文:平山雄一】




EMTG MUSICではこのツアーの初日とファイナルをレポートしているので、要チェック!
「TOUR 2011?12 ?おとしのレイら?」初日 2011.11.30 浦安市文化会館
「TOUR 2011?12 ?おとしのレイら?」ツアーファイナル 2012.1.31 渋谷公会堂

tag一覧 DVD 男性ボーカル 奥田民生

リリース情報

Gray Ray & The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012

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Gray Ray & The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012

発売日: 2012年03月28日

価格: ¥ 2,914(本体)+税

レーベル: KRE

収録曲

1. ギブミークッキー (2012.1.31 渋谷公会堂)
2. ルート2 (2012.1.31 渋谷公会堂)
3. わかります (2012.1.31 渋谷公会堂)
4. 何という (2012.1.7府中の森芸術劇場)
5. フロンティアのパイオニア (2012.1.7府中の森芸術劇場)
6. ロボッチ (2012.1.31 渋谷公会堂)
7. かたちごっこ (2012.1.11 NHKホール)
8. ダンス・ハ・スンダ (2012.1.12 NHKホール)
9. 手紙 (2012.1.31 渋谷公会堂)
10. MANY (2012.1.12 NHKホール)
11. 最後のニュース (2012.1.31 渋谷公会堂)
12. 解体ショー (2012.1.7府中の森芸術劇場)
13. 明日はどうだ (2012.1.12 NHKホール)
14. 拳を天につき上げろ (2012.1.12 NHKホール)
15. 近未来 (2012.1.12 NHKホール)
16. さすらい (2012.1.31 渋谷公会堂)

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