「衝撃の問題作」という宣伝文句に騙された人は多いと思うが、清 竜人の4thアルバム『MUSIC』に関しては、誰もが「衝撃の問題作！」と“！マーク付き”で驚くだろう。

　再生ボタンを押して聴こえてくるのは“あなたを愛しています”というセリフと、ざわざわと騒ぐたくさんの声達。いきなりドラマから始まるこのアルバムは、ミュージカル仕立てになっている曲が大半を占めている。キャストには、清 竜人が楽曲提供をし、シンガーとしても活躍中の堀江由衣を筆頭に、佐藤聡美(「けいおん！」田井中律役)、相沢舞(「らき☆すた」峰岸あやの役)といったアニメ界の第一線で活躍中の声優陣、さらに女優の多部未華子といった豪華ゲストに加え、外国人や生後1ヶ月の赤ちゃん、74歳のご老人など、その数、清 竜人史上過去最大。バラエティに富んだ登場人物が活き活きと動き回っている。


　アレンジも衝撃的。アニメソング、アイドルソング、ゲームミュージックの世界で名を馳せるアレンジャーが集結、“バッキバキの電波系ポップス”を炸裂させている。ヲタ芸的な合いの手が繰り広げられる

「Fall♥In♥Loveに恋してるっ♪」、ナニワの無頼者の生き様を描いた「おどれどつきまわしたろか」、8bitサウンドに乗せ、ロールプレイングゲームをモチーフに恋愛を描いた「バカ♥バカ♥バカ」など。こうして並べると、イロモノ的な作品に見えるかもしれないが、そこは清 竜人。琴線をガクガクと揺さぶる最高のメロディーが鳴り響いている。

　おそらく『MUSIC』には賛否両論、様々な見解があると思う。ただ、今の音楽シーンにとって一番必要なことは“音楽を中心に熱い議論が巻き起こる”ということではないだろうか。毒にも薬にもならない平均点を狙ったものではなく、劇薬のように危険で刺激的なエンターテイメントを、リスナーは求めているはずだ。

　0か100か──超問題作を確信犯として作り上げ、不敵な笑みを浮かべている彼の姿が目に浮かんでくる。

【文：山口哲生】