レビュー
HaKU | 2012.10.10
強力なニューカマーの登場だ。
HaKUは、辻村有記(Vo&Gt)、藤木寛茂(Gt)、三好春奈(Ba&Vo)、長谷川真也(Dr)の4ピースロックバンド。2007年、大阪にて結成し、シングル1枚とミニアルバム3枚をリリース。出演するイベントの先々で、その音楽性とパフォーマンスで注目を集めてきた。その後も着実に支持を集め続け、今年4月にメジャーデビューを、またデビューアルバムを既に完成させていることを発表し、7月にPre debut Single「Simulated reality“decoy”」を発売。「decoy=囮(おとり)」と名付けられたこの作品では、アルバムに収録される10曲をマッシュアップさせるという驚愕の手法をとり、来るべきアルバムの世界観を提示した。そして10月10日、いよいよ待望のメジャーデビューアルバム『Simulated reality』をリリースする。
HaKUのサウンドは、エレクトロテイストを導入したロックミュージック。昨今のシーンにおいてのトレンドとも言えるだろう。しかし、彼らは音源制作もライヴも、シンセやコンピューターを一切使わない。サウンドの全てを「人力」で産み出しているのだ。とにかく一度聴いてみてほしい。一聴するとデジタルな質感を感じるのだが、しっかり耳を傾けてみると、ちゃんとギターの音として鳴っていることに驚くだろう。そして、本作の1曲目「1秒間で君を連れ去りたい」というタイトル通り、プレイボタンを押した瞬間から、幾重にも重ねられた圧倒的な音達と、それに絡みつく熱量が全身を貫いて行き、あっと言う間にその世界に引き込まれるはずだ。
他にも、大胆な曲構成で正義と悪の境界線をなぞる「unknown justice」や、“その日を摘め”という名の通り、音達が踊り狂うインストナンバー「carpe diem」、イントロから三好のベースが獰猛に暴れ倒し、やりきれない<キミ>への想いをギターのリフで爆発させる「astray」など、実に刺激的な全10曲を収録。これから彼らがシーンをどう引っ掻きましてくれるのか、期待を抱かずにはいられない1枚だ。
【文:山口哲生】