レビュー
真空ホロウ | 2012.10.24
松本明人(vo/gt)、村田智史(ba)、大貫朋也(dr)の3ピースロックバンド・真空ホロウが、10月24日にメジャーデビューミニアルバム「小さな世界」をリリースした。
真空ホロウは、松本の冷静な視点で切り取った日常の違和感や鬱々とした感情を、ときに繊細に、ときに爆発的にかき鳴らす内省的なギターロックバンドというイメージを持っていた。しかし、本作の1曲目「Highway My way」は、真夜中のハイウェイを疾駆する絵が浮かんでくる骨太なロックンロールで、かなり開けた印象。ちなみに、歌詞の世界観から膨らませたというこの曲のPVは、深夜帯にやっていそうなB級テイストあふれるホラームービー風に仕上がっていて、かなりユニーク。是非一度見ていただきたい。
この作品から一貫して感じ取れたものは「決意」だ。「Highway My way」はそれが端的に表わされたものだが、「週末スクランブル」のように、<ウジのように湧いて群れるヒト もしかして1,2人なら ===してもバレないような気がして>と、内に秘めた狂気や虚無感を全解放したような混沌の中でも、そこに綴られた言葉の狭間に、わずかの光を感じ取ることができる。人間のささくれ立った負の感情に、すっと歩み寄ってくれるような優しさを感じるのだ。そして、いつか消えてしまうかもしれないこの感情も、この“声”で全てを思い出せると歌う、ラストの「The Small world」。儚さを帯びたこのミディアムチューンこそ、まさに真空ホロウらしい決意表明の1曲だと思う。彼らの“小さな世界”はここから確実に広がって行くはずだ。
【文:山口哲生】