レビュー

EMTG MUSIC “Coming Up Artist 2013” | 2013.01.11

 大震災後、無力感にさいなまれたアーティストは多かったが、2012年にはその影響から抜け出して、力強い音楽を創造する者が現われた。言い換えれば、“音楽の力”を改めて信じようとする意志が、ポジティヴなシーンを生もうとしている。震災直後には“癒しの音楽”があふれていたが、2013年はそれよりさらに一歩踏み込んだムーブメントに注目したい。その動きと表裏一体になって、エンターテイメントとしてきちんとプロデュースされたアイドル・グループやK-POPがチャート上位を占めている。
 原点に戻って“音楽の力”を確かめた吉井和哉、現実をシビアに見つめるamazarashi、ストレートにエネルギーを爆発させる雅-MIYAVI-、反対に“負のエネル ギー”を爆発させるクリープハイプやさめざめなど、今年の活躍に期待したいアーティストは多い。またねごとやPAGEは新世代の感覚で、魅力的なメッセージを送ってくれそうだ。
 一方、THE BAWDIESや[Champagne]など、洋楽テイストを前面に打ち出しながらJ-ROCKの水準を上げようというトライも大きな成功を収めそうだ。女性ボーカルを擁するバンドとしては、メンバーチェンジでパワーアップしたシャカラビッツや、tricotのアーティスティックなパフォーマンスも楽しみだ。
 シンガーソングライター・シーンでは新曲を「暗い歌」と言ってはばからない阿部真央や、いよいよ独自の自己観察の歌を書き始めた長澤知之など、楽しみな才能がいるが、全体としては層が薄い。中で家入レオがどんな存在になるのか、注意したい。
 これらのアーティストは、ライブを元にして“Coming Up Artist 2013”として選ばせていただいた。ますますライブの価値が上がる時代に向けて、EMTG MUSICはこれからも音楽シーンをレポートしていこうと考えている。

EMTG MUSIC編集部 平山雄一

男性ソロアーティスト部門

長澤知之

長澤知之
閉じた内面から世界を打ち抜く歌を作り続けてきた長澤に、変化が起きている。特にライブでは自分の殻を破って、正面からメッセージするようになった。昨年のミニアルバム『SEVEN』も凄かったが、暮に期間限定配信された「お休みハッピーX’mas」での進化が見逃せない。


PAGE

PAGE
1995年生まれの17歳。2012年7月、シングル「You topia」でデビュー。「絶対に嘘は歌いたくない。これからも嘘は歌わない」というマインドで綴る歌詞が強力。スタートはヒップホップながら、ライヴはバンド編成、さらに、様々なバンドのオケにラップを乗せ公開するなど、ジャンルも活動展開も、ニュースタイルなアーティストである。


雅-MIYAVI-

MIYAVI
ギター1本でロックするサムライ・ギタリスト。昨年は様々なジャンルのアーティスト達とコラボレーションした「SAMURAI SESSIONS」で話題となった。観る者全てを圧倒するパーカッシヴなプレイスタイルは、海外での評価も高い。


吉井和哉

吉井和哉
今年、ソロデビュー10周年を迎える吉井和哉。彼は年を追うごとに艶を増す貴重なアーティストだ。1月23日には新曲「血潮」を収録したベストアルバム『18』を発売。表現者として次のステップを踏み出そうとしている彼の、予測不能の動きに注目したい。


女性ソロアーティスト部門

家入レオ

家入レオ
昨春デビュー以来、印象的な目力溢れるルックスとパワフルな歌声で多くの人を捉えた彼女。昨年度の日本レコード大賞最優秀新人賞を始め、数多くの誉れが、その実力を物語っている。高校を卒業する今春以降は、更にその活動は活発になりそうだ。


さめざめ

さめざめ
愛と夢と恋とSEXを並列な愛情表現として、ドメスティックな曲調で歌うさめざめ。2012年1月発売の初音源『スカートの中は宇宙』で、強烈な世界観が、恋模様にもがく女性を中心に口コミで広がり、まさかのメジャーデビューへつながった。個性を音楽シーンでどう展開していくのか、見ものである。


阿部真央

阿部真央
阿部の実力の全貌は、まだ見えない。4thアルバム『戦いは終わらない』で初のセルフプロデュースに挑み、その力量を見せたが、未完の部分も多くあった。だがその未完さが魅力の核にあるだけに、女性シンガーソングライターのトップとしてさらなる爆発が予想される。


男性ボーカルバンド部門

THE BAWDIES

THE BAWDIES
THE BAWDIESの音楽には普遍的な魅力がある。60?70年代のシンプルなR&Rを愛する彼らの作り出すサウンドは、極上のポップスでもあるからだ。ライブ動員も右肩上がりで、今年は最新作『1-2-3』を掲げたロングツアーで、各地を熱く踊らせるだろう。


クリープハイプ

クリープハイプ
00年結成。昨年メジャー・デビューを果たし、一気に上昇気流に乗った4人組ギターロックバンド。尾崎世界観(vo.&Gt.)が描く、優しくも辛辣な言葉達は、2013年、更に多くの支持を獲得していくだろう。3月の新作にも期待が高まる。


[Champagne]

[Champagne]
2012年はシングル2枚、アルバム1枚を発表。数多くの大型ロックフェスにてメインステージに立ち、ライブの規模を拡大させてきた、人気/実力共に大躍進を見せた彼ら。今年もその不敵な活動と類希な作品性で更なる幅広いファンを獲得していくにちがいない。


amazarashi

amazarashi
シリアスで時に情熱的な歌詞&メッセージ性、映像とライティングをリンクさせたライヴスタイルなど、前例のない鮮烈な世界観で、デビュー前から、口コミで知名度を上げる。メディア露出はほとんど無いが、初の渋谷公会堂を即完させる動員力(その後のツアーも各地で完売)で人気は実証済みだ。


女性ボーカルバンド部門

ねごと

ねごと
疾走感、浮遊感、オルタナ感、情景豊かな歌詞の世界で一躍シーンの注目の的になったガールズバンド。ライヴを重ね、着実に成長してきた。2013年3月セカンドアルバム『5』発売。今年、メンバー全員が大学を卒業し、全国23公演のロングツアーを行うなど、更なる飛躍が期待される存在だ。


SHAKALABBITS

SHAKALABBITS
昨年はフルアルバムに加えてミニアルバムを発表、精力的に活動を展開したSHAKALABBITS。ボーカル・UKIのキュートなボーカルを擁したポップロックは、バンド結成15周年の今も色あせない。今年は継続力の真価が証明される年になりそうだ。


tricot

tricot
インディながら、確かな実力に裏打ちされた演奏力とユーモアも交えたライブパフォーマンスにて、体感した多くの人を魅了している女性3人男性1人組ロックバンド。今春には、あの「スペシャ列伝ツアー」にも参戦! 全国的な飛躍に更に期待は高まる。

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