レビュー
カサリンチュ | 2013.02.27
タツヒロ(ボーカル&アコースティックギター)と、コウスケ(ボーカル&ヒューマンビートボックス)という、独特のスタイルで良質な音楽を紡ぎ出す2人組、カサリンチュ。彼らが、サウンドプロデューサーの河野伸とタッグを組み“カサリンチュ+河野伸”名義で、1枚のアルバムをリリースする。それが『すーちゃん まいちゃん さわ子さん イメージアルバム&オリジナルサウンドトラック』。3月2日から全国公開となる映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(主演・柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ)を元に制作されたものだ。
本アルバムは、タイトルにもあるように“イメージ”と“サントラ”という2つのテーマで作られている。ひとつは、映画サントラとして。本映画の主題歌になったカサリンチュの新曲「あるがままに」を筆頭に、劇中で使用されているインスト曲がズラリ。そしてもうひとつが、今作のオリジナル&素晴らしいアイデア。主人公の30代女性3人のCD棚を“イメージ”してセレクトしたという、カバー曲が並んでいる。森高千里、フリッパーズギター、今井美樹、猿岩石、忌野清志郎、荒井由実と、カサリンチュがフラットな視点を忘れない優れた音楽リスナーであることがわかるチョイスと言えるだろう。
特に、一発録音だというフリッパーズギターの「恋とマシンガン」は、前述した“独特のスタイル”がばっちりはまった逸品。映画の主人公じゃないけど、ボーダーTにベレー帽で、ネオアコ&ワールドミュージック聴きたくなっちゃったりして。猿岩石「白い雲のように」は、は原曲同様のデュエットで披露。2人の声質の差が楽曲に複数の表情を加えている。アーシーでストレートなメロディーを、爽やかに聴かせるさり気なさも絶妙で、最後の最後まで一定の心地良さがキープされている。
これらのカバー曲から見えてくるのが、主人公たちのキャラクター&ライフスタイル。森高千里をカラオケでリピートしご満悦、今井美樹を口ずさみながらで泣いて、次の日にはフリッパーズギターを聴きながら雑貨屋めぐり。荒井由実で自分の未来に思いを馳せ、猿岩石を素直に応援し、彼氏に影響され忌野清志郎(RCサクセションではなく)を聴き、自分のブルースを考える……ってな感じで、全部 “1人で聴いていたんじゃないか?”って思わせるチョイスが、本当に面白い。
あの日あの時、私も1人であの曲聴いてたけど、誰か見てた? 否、1人でいても世の中とつながっていたんだなぁと、本作で今更ながら気がついた次第。テヘ。
今の世の中、普通に生活しててもバイオリズムのアップダウンが激しい昨今ですが、そのバイオリズムを正常に戻してくれるような、素敵な1枚です。
【文・伊藤亜希】
リリース情報
すーちゃん まいちゃん さわ子さん
発売日: 2013年02月27日
価格: ¥ 2,381(本体)+税
レーベル: アリオラジャパン
収録曲
1. あるがままに
2. 渡良瀬橋
3. 恋とマシンガン
4. PRIDE
5. 白い雲のように
6. パパの歌
7. やさしさに包まれたなら
8. メインテーマ:ある日、森で
9. 心のつぶやき
10. 恋をはじめて
11. がんばりすぎちゃってるのかな
12. メインテーマ:ふたり乗り
13. ひとりぼっちじゃない
14. 彷徨う
15. ご縁のない世界
16. 変わるもの 変わらないもの
17. メインテーマ:追伸
18. PRAYER ~すーちゃんバージョン~
19. 毎日
20. 明日への道しるべ