カバー･アルバムのリリースが相次ぐ昨今、いかに突出した作品に出会えるか……これは重要なポイントだと思う。
Acid Black Cherryのボーカリストとして圧倒的な歌唱力をほこるyasuのカバーアルバム第3弾『Recreation 3』は、間違いなくその突出した作品のひとつに数えられるだろう。もともと彼は、シングルのカップリングに思い入れのあるカバーを収録してきた経緯もある。そして、そこに選ばれているのは、yasu自身がリアルに青春時代に慣れ親しんだ曲達だ。いかに当時、その歌を愛していたかは、その歌声を聴けば明らか。しかも、セレクトされた曲の幅広さには、yasuのボーカリストとしての表現力を実証するものがある。

　いかにも！……なSIAM SHADEの「1/3の純情な感情」、WANDSの「愛を語るより口づけをかわそう」などの他、小林明子の「恋に落ちて」やテレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」、さらには井上陽水の「少年時代」、シャ乱Qの「上・京・物・語」……特にyasuと世代の近いファンはニヤリとするような選曲にワクワクするはずだ。一方で、メロディーのよさ、歌い手の素晴らしさをかぎとる嗅覚にも感心すると思う。さらに、彼自身は「みんなが知っている曲のアレンジはなるべく変えたくない」と、以前インタビューで応えてくれたことがある。この配慮からは、彼もいち音楽ファンであり、曲が生まれた時代を大事にしていることがうかがえる。

　こうして仕上がったのが、“素晴らしいJ-POPの名曲”が“素晴らしいボーカリストの歌声”で楽しめるアルバムなのだ。ぜひとも素直に楽しんでいただきたい。

【文：海江敦士】