レビュー

氷室京介 | 2013.08.19

 ソロデビュー25周年を迎えた氷室京介から、オールタイムベストアルバム『GREATEST ANTHOLOGY』が届けられた。「魂を抱いてくれ」「DEAR ALGERNON」、この作品のためにボーカルを録り直した「ALISON」「LOVER’S DAY」(この2曲は、氷室自身も気に入っているという)といったバラードを中心にした「PiECE OF LOVERS」(DISC-1)、「VIRGIN BEAT」「KISS ME」などのアップチューン、さらに未発表曲「The Sun Also Rises」を収めた「INVARIANT SOULS」(DISC-2)からなる本作は、栄光と神秘に彩られた彼のキャリアが生々しく刻み込まれている。

 このベスト盤を聴いて強く感じるのは、ひとつひとつの楽曲の驚異的なクオリティの高さだ。’88年の1stシングル「ANGEL」から最新シングル「NORTH OF EDEN」に至るまで、氷室の音楽スタイルはほぼ一貫している。日本的な叙情性を排除した、ドラマティックかつパワフルなメロディライン。強靭なビートと印象的なギターフレーズを軸にしたバウンドサウンド。耽美的なムードと快楽的なダイナミズムを共存させたボーカリゼーション。それらの要素がバランスよく配された楽曲はすべて、一瞬で“氷室京介だ!”とわかってしまうほどの強い個性を放っている。そのスタイルをしっかりとキープつつ、すべてのフレーズ、すべての音を精査し、より質の高い作品を追求し続ける――それは“美学を守る”みたいなロマンティックな話ではなく(そんなことでクオリティの高い音楽が作れるのなら、誰も苦労はしない)、徹底的に理論的、科学的な作業の積み重ねなのだろう。

 自分の心情をリアルに描くとかリスナーの心に寄り添うみたいなことを慎重に避けた、独自の美意識と価値観をきちんと貫いた歌詞の世界も、“孤高”“ベールに包まれた”という言葉を使いたくなるような彼の存在感をしっかりと際立たせている。“氷室京介は、こうあるべき”という明確なビジョンを持ち、それを徹底して磨き上げる。氷室京介は日本ではきわめて稀な、“プロフェッショナル・ロックシンガー”だと思う。

【文:森 朋之】

リリース情報

25th Anniversary BEST ALBUM “GREATEST ANTHOLOGY”(初回限定盤) [CD+DVD]

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25th Anniversary BEST ALBUM “GREATEST ANTHOLOGY”(初回限定盤) [CD+DVD]

発売日: 2013年08月21日

価格: ¥ 4,400(本体)+税

レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲

DISC-1:PiECE OF LOVERS
01. 魂を抱いてくれ
02. DEAR ALGERNON
03. STORMY NIGHT
04. RAINY BLUE
05. MOON
06. ALISON(vocal retake & remix)
07. LOVER’S DAY(vocal retake & remix)
08. JULIA
09. ダイヤモンド・ダスト
10. LOVE SONG
11. 堕天使
12. 炎の化石
13. WALTZ
14. ARROWS
15. TRUE BELIEVER

DISC-2:INVARIANT SOULS
01. ANGEL
02. CALLING
03. VIRGIN BEAT
04. KISS ME
05. MISSING PIECE
06. STRANGER
07. JEALOUSYを眠らせて
08. SUMMER GAME
09. EASY LOVE
10. BANG THE BEAT
11. NORTH OF EDEN
12. Bloody Moon
13. WARRIORS
14. IF YOU WANT
15. The Sun Also Rises

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