レビュー
中島美嘉 | 2013.08.28
中島美嘉×amazarashi。そそられる、プロダクツである。
影を憂いとしても表現できるボーカリスト・中島美嘉。そして、独特の歌詞の世界観、映像や照明と完全にリンクしたハイクオリティーのライヴで、音楽シーンの注目を集めるamazarashi。このバンドのキーパーソンであり、作詞&作曲を手掛ける秋田ひろむが、中島美嘉に書き下ろしたのが、本作「僕が死のうと思ったのは」である。
シンプルに言えば、それぞれのアーティストのイメージから、影×影のコラボレーションだが、この作品の中に存在する“影”は、眩い光が描き出した陰影だ。そして、影と隣接する一筋の光が、本作の真髄でもある。
「僕が死のうと思ったのは」は、繊細なアレンジが光るバラード。丁寧に言葉を紡ぐように歌う中島のボーカルスタイルは、いつもの彼女のバラードよりも、ニュアンスはちょっとライトな印象。このライトなニュアンスが、この楽曲のリアリティーに一役かっている。何気ない日常を、平温の尊さを、見事に表現していると思う。最後の♪ あなたのような人が生きてる 世界に少し期待するよ ♪ というワンフレーズには、強い肯定とともに、生命力を感じさせる。
【文:伊藤亜希】