レビュー
KANA-BOON | 2013.09.26
メジャー・デビュー・シングルのタイトルを見て、「平家物語のパロディなのね」と思っていたら、歌詞に《祇園精舎の鐘の声》と、もろに平家物語の一節が出て来るではないか。和風メロディに和風リズム、譜割(リズムに対しての歌詞の割り振り方)も全部、日本的。KANA-BOONは そこに自分たちの思いを乗せて、ロックとして体現する。その素直さは、まぶしいほどだ。
タイトル曲「盛者必衰の理、お断り」は、僕を忘れないでくれよという気持ちを、平家物語の“諸行無常”という言葉に託して歌う。世の中で変わらないものなどないことはみんな知ってはいるが、それをどんなことを通して描くのかがアーティストの個性になる。KANA-BOONは まず“日本の古典”を引用してみせる。カップリングの「かけぬけて」では、映画『フォレスト・ガンプ』が出てくるし、もう1曲の「ハッピーエンド」では自分の読んだ絵本や小説や漫画をモチーフにしている。自分を取り巻く様々な表現物を噛み砕き、呑みこんだ上で、音楽として吐き出す。KANA-BOONはとても旺盛な好奇心と、健康な表現欲を持ったバンドのようだ。
そうしてもう一度、シングル・タイトルを見てみると、平家物語の“無常観”は“お断り”とノーを突きつけているのだ。変わらないものを真っ直ぐに追い求める姿勢は、まさに期待のニューカマー。歌詞に残る幼さが、魅かれる源でもある。何より、このバンドの素直さは、イージーなヒット狙いが横行するロックシーンにフレッシュな空気を送り込んでくれることだろう。
【文:平山雄一】