レビュー
清 竜人 | 2013.10.23
清 竜人が新しい作品を出すという話を聞くたびにワクワクしてしまうのは、自分だけではないはずだ。ここ昨今の“前作とは作風をガラリと切り替え、リスナーを裏切り続けるスタイル(ヴィジュアル含めて!)”は、全く予測がつかなくて完全に未知数。期待に胸を躍らせて、果たして次はどうなることやら?と……あれこれいろいろ想像している時点ですでに、彼の術中にハマってしまっているのだろう。
前作から1年も経たず、6thアルバムが到着した。タイトルは『WORK』。本作はそのタイトル通り、これまでの彼を凝縮したような、実に美しくて、楽しくて、破壊的な作品だ。
『WORK』は、ドリーミーなイントロをくぐり抜け、キラキラと輝く世界に心が弾ける「Zipangu」から幕を開ける。歌詞は日本語と英語が絡み合い、どこか意味があるようで、それでいてないような……その行間を読みたくなってしまう単文的なもの。しかし、言葉を音として捉えてみると、発音のひとつひとつが楽器としての役割を果たしていて、とても心地よい。このアプローチは、全編弾き語りで自身の性癖から欲望から、何から何まで赤裸々に曝け出した5thアルバム『KIYOSHI RYUJIN』とは真逆とも言えるだろう。また、「The Movement」のコーラスなど、どこかシアトリカルな印象を受けるのは、アニソン、アイドルポップスを大々的にフィーチャーした4thアルバム『MUSIC』の趣きを感じさせる。
曲を聴き進めていくに連れて、ぐんぐんと高まって行くポップ感の中、「Microphone is…」から、いきなりロックな方向へ舵を切る。シンプルかつ中毒性の高いリフが頭をぐるぐる巡る「Championship」では三味線が飛び出し、暴れまくるドラムをストリングスが盛り立てる「Disclosure」は、美しくも狂気じみていて、実にカオス。ラストを飾る「I Don’t Understand」はパンクナンバーで、ラストへ向けて行くにつれ、一気に混沌としていく様が面白い。この辺りのアプローチが次回作からどう活きてくるのかも気になるところだ。
自身の幅広い音楽性をサラリと提示してみせる彼の手腕が、今回も炸裂。本作を掲げた12月の東名阪ツアーでどう披露されるのか。そちらも楽しみだ。
【文:山口哲生】