レビュー
COIL | 2013.11.01
新たなCOILスタンダードの誕生だ。
1曲目の冒頭、弾きおろされたギター。そのわずか数秒で早くも胸が高鳴る。デビュー曲として書かれながら長く音源化されることのなかった「ボンテージ・スーパーカー」にみなぎるCOILとしてのプライド。それでもタイトルはシンプルに『15』(fifteen)というのも彼ららしい。そこにはデビュー15周年、8年ぶりのフルアルバム、といった気負いなど感じさせず、ただCOIL自身が自由にCOILをまっとうしたというシンプルな事実だけが刻み込まれていた。
あらゆる音楽要素が、そして彼らを語る上で欠かすことのできないザ・ビートルズからの影響が血肉となり、自然な形でアウトプットされた全15曲は、無心と自信、リアルとファンタジー、甘さとほろ苦さが交錯する、いわば15種類のCOIL・アソートといった様相だ。弾き語り風の「あまのじゃく」といった小品や、遊び心を炸裂させた「僕と彼女とモーツァルト」、驚愕のファンク・ナンバー「チョコレート・シティ」と様々なタイプの楽曲が繰り出され、また曲間にも細心の注意を払ったと思える鮮やかな場面転換も手伝って、聴く者を飽きさせない。
達者な音の技工師として知られる2人ゆえ、作品の根底には、彼らの野心とこだわりが貫かれているものの、あくまでオーソドックスな作品作りに重きが置かれた本作。擦り切れるまで味わい尽くす前に、岡本定義、佐藤洋介、二人揃ったライヴが実現することを期待している。
【文・篠原美江】