レビュー

サカナクション | 2013.11.12

 サカナクション渾身のライブBlu-ray & DVDを、ドルビー・ジャパン視聴室で観た。というか、体験した。「クラブ・サウンドの再現」をテーマに行なわれたツアー“SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction”もある意味”体験型ライブ“だったが、今年5月19日 に幕張メッセで行なわれたライブを基に作られたこのBlu-ray & DVDも未知領域の体験だった。

 クラブで音楽を聴く楽しさは、耳だけでなく、体でも音を聴くことにある。クラブでは正面からだけでなく、“箱を鳴らす”ためにあちこちにスピーカーがセットされている。サカナクションはそうした音を、クラブの何倍もある広さの会場で再現しようとした。そして、それが成功したとき、未知の世界が現われた。大きな会場のライブでは、どうしても後方エリアには音が遅れて届く。するとオーディエンスたちの発するハンドクラップの音が前方と後方ではズレてしまったりして、 気持ちの悪さが残る。また後方のオーディエンスは、目で見るバンド演奏より遅れて聴こえてくる音に、終始違和感を覚える。しかし今回のツアーでは、サラウンド・システムのお陰で、そんな気持ちの悪さや違和感がまったくなかった。それ以上に、2万人が同時に身体を揺らし、クラップするという前代未聞の状況が生まれた。視覚と聴覚の一致は、会場に未体験の一体感を生んだ。それはまったく新しい感動だったのだ。

 クラブではせいぜい1000人の一体感だが、その20倍の一体感、しかもそこに生演奏の視覚が加わって、人と人とを隔てる壁のいつかが消滅していった。僕はその凄まじく“いい音”に、びっくりした。

 僕の言ういい音とは、サウンドが言葉やビートとは別次元のコミュニケーション・ツールになっているという意味だ。あの日、サカナクションが発した音を媒介にして、メッセを埋めたファンとバンドが どんなコミュニケーションを取ることができたのか、このBlu-ray & DVDはそれを見事に再現している。

 これまでのBlu-ray & DVDが、ライブを間近で見ることを中心に作られていたとしたら、この作品は会場のどこにいても会場すべてと一体になれる“体験”を描いている。再生することで、あのライブを追体験できるツールになっている。それは「音楽を聴くだけでなく、体感する」というサカナクションが掲げるテーマに直結している。ライブに集った全員が作り出した、“クラブ・テイストのシンフォニー”と言うべき画期的な作品なのだ。

 こうなればいっそ、3Dといえる音に合わせて、3D映像のライブ作品があってもいいのかもしれない。

 そして最後に、このライブでのメンバーの演奏力と集中力に敬意を表したい。彼らの音楽家としてのハイクオリティなパフォーマンスがあったからこそ、このBlu-ray & DVDは大きな感動を呼び起こすのだ。

【文:平山雄一】

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リリース情報

SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE 2013.5.19-(Blu-ray Disc)(初回限定盤)

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SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE 2013.5.19-(Blu-ray Disc)(初回限定盤)

発売日: 2013年11月13日

価格: ¥ 5,524(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

1. INORI
2. ミュージック
3. M
4. アイデンティティ
5. ルーキー
6. multiple exposure
7. mellow
8. ボイル
9. アルデバラン
10. なんてったって春
11. ホーリーダンス
12. 僕と花 - SAKANAQUARIUM 2013 VERSION
13. バッハの旋律を夜に聴いたせいです。 - SAKANAQUARIUM 2013 VERSION
14. ネイティブダンサー - SAKANAQUARIUM 2013 VERSION
15. アルクアラウンド
16. アドベンチャー
17. Aoi
18. 夜の踊り子
19. ストラクチャー
20. ナイトフィッシングイズグッド
21. 朝の歌
22. 映画

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